今年もお盆が近づいてきました。祖先の霊を祀る行事ということで、こむぎこ寺にもたくさんのおばけたちが遊びに来るようです。おばけたちもいることですし、今週は仏教と関わりが深いイメージのある世界観、「輪廻」について学んでいきます。

「輪廻」というのはブッダが作り出した考え方ではなく、インドで仏教ができる前から信じられていたものでした。

ある人が亡くなり、その肉体が滅びても魂は永遠に消えることなく生まれ変わりを繰り返すという世界観ですが、ブッダは「無常(第14回)」「無我(第53回)」の考えによって「絶対に変わることのない・消えないもの」の存在を否定していますし、死後の世界はあるのかという問いに対しては「確かめようがないから考えても仕方がない(第55回)」という立場を取っています。仏教の哲学は「今を生きている人のための教え」という意味合いが強いのです。

しかし、ブッダは輪廻という仕組み自体を否定したわけではありません。さまざまな解釈がありますが、仏教でいう輪廻とは、前回解説した「業」を伴って起こる現象(因果関係)が続いていくことを意味していると考えられます。

原因が何らかの結果と後に作用する影響を生み、またそれにより何らかの結果と影響が生じ…という因果の中で常にたくさんの現象が変化、つまり一瞬一瞬の間に生じては消滅することを繰り返すという意味での輪廻を続けており、その現象の一部をあるひとまとまりとして切り取ると「人間」であったり「心(意識)」であったりするというわけです。

ですので、ある人の生前の行いから発生した影響が、残された人や新たに生まれた存在に作用するということも起こります。

われわれは、途方もない昔から続く因果関係の中で、大量に蓄積された「業」の影響力に縛られつつも、その結果として存在しています。

まさに「祖先から受け継がれた」、人間としての存在に染み付いた行動や思考の傾向・癖などにも目を向けてみると、新たな視点を得られたり、問題解決の糸口を発見できたりするかもしれませんよ。

■こむぎこをこねたもの、とは?

■著者紹介

Jecy
イラストレーター。LINE Creators Marketにてオリジナルキャラクター「こむぎこをこねたもの」のLINEスタンプを発売し、人気を博す。その後、「こむぎこをこねたもの その2」、「こむぎこをこねたもの その3」、「こむぎこをこねたもの その4」をリリース。そのほか、メルヘン・ファンタジーから科学・哲学まで様々な題材を描き、個人サイトにて発表中。

「週刊こむぎ」は毎週水曜更新予定です。