1月31日、幼児教育の「こぐま会」とアニメーション制作会社「P.A.WORKS(ピーエーワークス)」および系列会社が制作した幼児教育パッケージ「ひとりでがんばりマスター!」がリリースされた。

ドコモの生涯教育プラットフォーム「ドコモgacco」の「L3(エル・キューブ)プロジェクト」第一弾としても展開されるこのパッケージだが、そのコンテンツはこぐま会とP.A.WORKSが共同で取り組む「こぐまなびプロジェクト」によるものだ。

なぜこぐま会とP.A.WORKSはタッグを組み、P.A.WORKS側からみれば異分野の教育コンテンツの制作に乗り出したのだろうか。

前回は「ひとりでがんばりマスター!」のコンテンツ制作における挑戦について聞いた。引き続き、同社の専務取締役の菊池宣広氏、および教育事業を手がける系列会社・PALABO取締役副社長の星川正幸氏に、ドコモgaccoとの協業の狙いと、こぐま会の教材をアプリコンテンツにするにあたっての工夫について聞いていく。

――これからドコモgaccoさんのエル・キューブプロジェクトで配信を始めるという所にあたって、ドコモgaccoをプラットフォームとして選択したのはなぜですか?

「ひとりでがんばりマスター!」教材パートのスクリーンショット

星川氏: 第一弾をここで出そうという流れになったのは、2016年3月から4月にかけてこぐま会・久野先生の幼児教育講座をgaccoで開講したことがきっかけなんです。学びについての意識の高いgaccoの会員の中でも非常に多くの方に集まっていただけて好評だったということで、「ひとりでがんばりマスター!」についても期待しています。

ほかに色々な経緯もあってのことでしたが、学びのプラットフォームということで映像コンテンツやオンラインのワークショップなど、親子で複合的に学ぶことが出来る点がアプリを有効に活用していただく面でも非常に良いパッケージになっていると思います。

元々単体でリリースされるものをgacco版のパッケージとしても提供するという形なので、もちろん単体でストアで買うこともできるし、gacco版のパッケージのほうが魅力的であればそちらを買っていただくこともできます。

――御社が作成されたリーフレットに、2017年秋には「おやこでがんばりマスター!」のリリースもご予定されているとあります。生涯教育の場で、親御さんと2人で学ぶことも想定されているんですね。

PALABO取締役副社長の星川正幸氏

星川氏: そうですね。gaccoの生涯教育というテーマから見ても、単に子ども1人に教材をやらせておけばいい、というものではなくて、やはり親御さんとの関わりの中でどう育てていくか、というところが非常に重要になってきます。

毎月、新しい教材が来るたびにタブレット端末を子どもに渡して終わり、にするのではなくて、親と一緒にどうやっていくかということは非常に意識しています。

――親子の学び、というコンセプトがgaccoと結びついているとすると、AppStoreなどで配信されるものとは構成が違うということでしょうか?

星川氏: App Storeなどで配信されるアプリも内容自体は同じものです。こぐま会の「ひとりでとっくん」シリーズをご存知の方でしたら、チェック用やトレーニング用としてすぐに使っていただけます。

逆に初めてこうした問題に触れた方は、アプリだけだとどのように教えれば良いか少し戸惑われる部分もあるかもしれません。

課題を解く意味だとか、それをどのように繋げていったらいいかということに対しては、実は「おやこでがんばりマスター!」とセットで使っていただくと一番わかりやすいです。しかし、順番として「ひとりでがんばりマスター!」が先に出るので、アプリ単体で使っていただく方に向けた説明はもう少し増やしていこうと思っています。

ドコモgacco版に関しては、久野先生ご自身がKUNOメソッドを紹介する映像もありますし、コミュニケーション機能を使って補完をしてもらうこともできます。子どもさんに使ってもらえて、親御さんにも新しい気づきがあって……というサイクルが作れればと思っています。

――こぐま会の教材をタブレット向けに落とし込むにあたり、インタフェースデザインなどを新規に作る必要があると思いますが、そこは3DCGのほかアプリ開発も手がけるPAXが行ったのでしょうか?

星川氏: そうです。僕も一緒に取り組んだのですが、紙というインタフェースで展開していた教材をアプリに持ってきたときに、どうすれば有効に機能するかという所はかなり詰めていきましたね。仮に誤って記入した箇所があったとして、紙なら消しゴムで消しますが、タッチして選んで答えるというタブレットでの操作とはまったく違うので、そこはかなり試行錯誤しました。

――こぐま会の教室の対象年齢は「2歳~小3ぐらい」となっていますが、「ひとりでがんばりマスター!」の対象年齢は同等くらいでしょうか?

星川氏: はい、およそそれくらいの年齢の子どもたちに使ってもらえるように想定して開発していました。ただ、もしかしたら、もうちょっと上の年齢までカバーできるんじゃないかなと思っています。少し手を加えれば、幼児のみならず大人や年配の方のトレーニングみたいなものにも、使えるんじゃないかと。

菊池氏: 「わしらもがんばりマスター!」とか?(笑)

星川氏: いいですね(笑)もう少し正確に言えば、このアプリ教材の対象年齢は今のところ「3歳~5歳」という言い方をさせていただいています。こぐま会の教材をベースに取り入れていて、同メソッドは幼児期の基礎教育として必要な内容で構成されていますので。

ここで「ひとりでがんばりマスター!」を見ていただきたいのですが、画面上では文字や数字を極力使わないんですね。課題の内容を音声で読み上げる形で作っています。色んな問題形式を用意していますが、案内自体は音声がベースです。

「ひとりでがんばりマスター!」教材パートのスクリーンショット

実は、問題を解く以前に、問題文の意味がわからない子どもは結構いるということなんです。パターン問題でハッキリした答えが出る数式などが得意な子どもでも、少し長文の問題になると「何を言われているのかがわからなくて答えられない」というケースが結構あるんですね。

今までのような暗記中心の一方的な学習方法から、これからはアクティブラーニングで学び合ったり自分の意見を言い合ったりすることが主流になると、日本語の聞き取り能力、自分の考えを伝える能力などが一層必要となってくるんです。

次回は最終回。「ひとりでがんばりマスター!」リリース後の今後の展開を聞いていく。