米国空軍は、Twelveと連携して、空気中のCO2からジェット燃料を作り出すことに成功した、そんなニュースが流れた。

米国空軍のプレスのタイトルでは、「The Air Force partners with Twelve, prove it’s possible to make jet fuel out of thin air」となっており、“薄い空気からジェット燃料を作り出すことが可能であることを証明した”というものになっている。この燃料は、「E-Jet」という。

ではこの燃料はどのようなものなのか、開発の狙いはどこにあるのか、今回はそんな話題について紹介したいと思う。

Twelveとは?

Twelveとは、米国のサンフランシスコに拠点を置く企業。自らを「Carbon Transformation company」と称している。つまり、直訳すると炭素変換会社。

CO2由来のさまざまなプロダクトを製造する技術を有する企業だ。炭素(C)の原子量は12。この12がTwelveの社名の由来なのだろうか。

E-Jetについては後述することにして、Twelveは他にどのような技術を有しているのか紹介したい。

まず、「CO2Made」という技術が挙げられる。空気中のCO2を水とともに電気分解して、COを生成する。そして、COとH2を合成することで、有機材料を製造する技術だ。

例えば、「CO2Made lenses」はアパレルブランド「PANGAIA」と連携することで、CO2からポリカーボネートのレンズを開発し、スタイリッシュなメガネを販売している。

他にもメルセデスと世界初となるCO2由来の自動車部品も開発したという。

  • ポリカーボネートレンズ

    TwelveとPANGAIAが開発したCO2由来のポリカーボネートレンズ(出典:Twelve)

他にも、アメリカ航空宇宙局(NASA)と共に、火星でのCO2の燃料化や空気の生成についての取り組みも実施しているようだ。

  • 火星での取り組み

    Twelveの火星での二酸化炭素燃料化の取り組み(出典:Twelve)

空気中のCO2からジェット燃料「E-Jet」とは?

E-Jetとは、空気中のCO2からジェット燃料を作る技術。CO2Madeと原理は同じであり、空気中のCO2を取り込み、触媒を使って水とともにCOに電気分解。そして、COとH2を合成させてジェット燃料を生成するというものだ。

  • リアクター

    E-Jetを作り出すリアクター(出典:Twelve)

実はこのような技術は、日本でも例えば東芝エネルギーシステムズらがCO2をCOに転換するCO2電解技術を用い、COと水素から液体燃料を合成するFT(フィッシャー・トロプシュ)合成技術と組み合わせて、ジェット燃料を製造する技術を有している。

これらのものとの技術面での詳細な相違点までは不明だが、では今回の米国空軍とTwelveの狙いはなんだろうか。

実は、世界の航空機は、年間12億トンのCO2を排出しているという。脱炭素を目指すため、飛行機を電化することがパッと思いつく代替策ではあるが、電力密度の観点から飛行機が大型化する方向に進むため、技術的に不可能もしくは最善策とはいえないという。

そこでCO2を由来とする燃料を開発し、石油などの化石燃料由来ではない燃料でCO2のリサイクル化を目指すというものだ。

もうひとつの狙いは、有事の面だ。有事において、水や燃料の輸送は、敵からの攻撃対象の1つとなっている点が挙げられるという。もし、遠隔地での物資調達において、これらの技術が可能となれば、メリットとなるだろう。

しかし、課題もあるという。それは、遠隔地でのジェット燃料の生成に必要となる電力についてどのように供給するのか、必要な水素をどうするのかなどだ。

いかがだっただろうか。本連載において、他にもAir CompanyのCO2からお酒を作る技術、空気からプロテインを作るAir Protein、火星でのロケット燃料を作るジョージア工科大学など、CO2からなんらかのプロダクトを製造したり、火星での取り組みに活かす事例が増えている。

【関連記事】
■宇宙飛行士のために発案した世界初となる空気で作るプロテイン!
■CO2と水からお酒を作るAir Company! この技術で目指すのは火星!?
■火星への片道キップ問題を解決? 火星でロケット燃料を生成する方法を開発

カーボンニュートラルという地球の温暖化対策から、さまざまな技術や発想が生み出されることに人間の頭の良さを感じるのは私だけだろうか。