現在、海や湖などの水上を移動する手段は主に船舶だろう。そして水中は、潜水船だ。これらには、スクリュープロペラ(以下、スクリュー)がついていてそれにより推力を発生させて移動している。

しかしながら、このスクリューは、推進効率が約40~50%前後、推進効率に特化した特殊なスクリューで70%前後と言われており、エネルギー効率の観点ではまだ完璧ではない。

また、スクリューでは、急加減速、急旋回を行うのが難しく、藻などが生えている川や湖では絡まるリスクがあり進むことが難しい。そのような点を解決すべく開発が進められているのが「Swimming Robot」だ。

ほかにも魚型ロボットなど様々な表現があるようだが、このSwimming Robotとは、どのようなものだろうか。どのようなことが期待できるのだろうか。今回は、そのようなことについて紹介したいと思う。

魚型ロボットとも呼ばれるSwimming Robotとは?

魚型ロボットとも呼ばれるSwimming Robotは、魚などの生物の形状、動きを模擬した水上、水中を移動することができるロボットだ。

読者の皆さんが水上、水中を移動する際に乗る船や潜水船のスクリューの課題は冒頭で述べたとおりだが、水棲生物は、とても効率的な遊泳方法で移動している。これを模擬できれば、最適な水中、水上の移動手段が得られるかもしれないのだ。

まず、Festoの「BionicFinWave」を紹介したい。左右に波打つようなブルーのフィンを連続して動かしながら推力を得るロボット。ブルーのフィンはシリコンでできている。左右のフィンは、それぞれ9つの小さなレバーアームが付いている。

このレバーアームは、ロボット本体にある2つのサーボモーターによって駆動していて、2つのクランクシャフトによって2つのフィンが個別に動くことができるという。ちなみに、このロボットは、海洋プラナリア、イカ、ナイルパーチなどの生物をヒントにしたという。

  • FestoのBionicFinWave

    FestoのBionicFinWave(出典:Festo)

実際に、FestoのBionicFinWaveがアクリルガラス製の水槽内を泳ぐ映像もあるので、ぜひご覧いただきたい。

FestoのBionicFinWaveの動画(出典:Festo)

マサチューセッツ工科大学(MIT)のCSAIL(コンピュータ科学・人工知能研究所)では、「Sofi」という魚型ロボットを開発している。Sofiは、魚型ロボットの前方部に制御装置、浮力装置、ギアポンプ、胸ビレフィン、カメラが、後方部はシリコン系のソフトボディで作られている。操縦は任天堂のゲーム機のコントローラを活用している。Sofiが実際に海中の珊瑚礁を泳ぐ映像もあるので、ぜひご覧いただきたい。

MITのSofiの動画(出典:MITCSAIL)

蛇型ロボットも?

魚型ロボットについて、前半では紹介した。ほかにも蛇型のロボットを開発している研究機関もある。スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)。日本の東北大学も研究に参画しているようだ。このロボットの名は「AgnathaX」。とても滑らかな脊椎の動きに驚く。本物の蛇のようだ。このロボットでは、脊椎動物の神経系の研究を目的としているようだが、このロボットの動きは、冒頭で揚げた従来からの船舶の課題を解決することが可能だろう。

  • EPFLの蛇型ロボットAgnathaX

    EPFLの蛇型ロボットAgnathaX(出典:EPFL)

EPFLの蛇型ロボットAgnathaXの動画(出典:EPFL)

いかがだっただろうか。今回紹介したものは、小型のロボットで、まだ人が乗れるほどの大きさではない。

ちなみに、よくこの種の論文には、必ずと言っていいほどニジマスが挙げられている。ニジマスは、高速魚に分類されていて、推進効率が60~70%前後で、急加減速、急旋回も可能な旋回性、加減速性に優れた魚で人類が目指すもののようだが、まだニジマスに関するロボットはまだみたことがない。

いずれにせよ、理想的な移動手段の実現を第1目的に研究開発しているもの以外にも、水中の撮影を目的としたもの、生物の複雑な動きや神経系など生体を理解することを目的にしているものもある。魚型のみならず、効率的な動きをする生物を模擬した乗り物は、未来では省エネで高速移動、高い安全性などを兼ね備えて必ずや実現することだろう。