大人になってくると、子どもの頃にはわからなかった、両親の関係性や、両親と祖父母の関係性などがわかってくるものです。母親が子どもを虐待する毒親になるには、それなりの理由がある……。虐待されていた子どもも、大人になって理解できるようになります。

岡山容子医師は、子どもの頃に母親から虐待され、父親のことも大嫌いでした。しかし、そんな母を看取り、現在は父親の介護を行ない、その経験や知見を書籍『毒親を在宅で見送った緩和ケア医が伝える 関係のよくない親を看取るということ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)で紹介しています。本記事では、この書籍を一部抜粋してご紹介します。

「誰の金で養のうてもろてるんや」が口癖の父

  • ※画像はイメージです

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父は、鮮魚卸業を営む商売人なのですが、何かというと「俺の稼ぎは……」と自慢します。

「誰の金で養のうてもろてると思とるんや!」が口癖でした。

私はこれがいやでいやで……。「誰も好きこのんであなたのお金のお世話になってるわけではない!」と常々思っていました。

そんな反発心から、自分で学費を出したのです。

ところが、今となっては笑える話ですが、両親ともに私が自分で予備校の学費を出しているとは知らなかったのです。

浪人をしていた秋ごろ、また例のごとく父が「誰の金で浪人なんかさせてもろてる思とるんや!」と言い出します。

当然、私は、「自分のお年玉とバイトで出してるけど」と言います。そのときに、初めて親の知るところになったわけです。

私は四姉妹の次女です。4人も子どもがいて意識が散漫になるのはわからないでもないですが、もう少し子ども一人ひとりに関心をもってほしいとは思いますが……。

そんな親でした。

後日、母親に「予備校のお金のこと、何かおかしいなと思わなかったの?」とたずねると「特待生にでもなったのかなと思っていた」とのことでした。

ちなみに、母だけでなく、父のこともかなりいやでしたが、2人を比べると違いがあります。

かなりの毒母ではあるものの、私にとっては、母のほうが父よりも面白い人で、「まだ話ができる」という認識でした。

社交的で好奇心旺盛な母は、ただ話をするだけなら、強い魅力と強い魔性の同居する人で、楽しい部分はあったのです。

一方の父は、自分のことが大好きな自己愛の強い男性(父のような自営業者に多いタイプ)で、話が通じません。

父は先ほども書きましたが、すぐに「誰の金で~」という発言をするような男性です。そういう家父長制の塊のような父が、私は大嫌いでした。

そんな父のもとに、20歳で見合いをして田舎から大阪の都会の忙しい商家に嫁いできたのが母です。しかも「商売を継ぐ跡取り」としての男児を産むことを強烈に求められます。

母は2年ごとに子どもを産むものの、4人続いて女児ばかり。そのために義理の父から激しくののしられ、責め立てられる生活だったのです。

商売の手伝いをしながら、4人の子どもを産み、育て、それを褒められることなく男児を産まないとののしられるという状況……。今の私から見れば、非常に気の毒な話だなと思います。

そんな状況に追い込まれて幼児虐待になったのは、それはそれで理解できる話かもしれません……のように思えたのは、大人になってからです。

子ども時代、虐待を受ける側の私としてはたまったものではありませんでした。

岡山 容子(おかやま ようこ):おかやま在宅クリニック院長。医師。
1971年、大阪府堺市生まれ。四人姉妹の次女として育つ。1996年、京都府立医科大学卒業後、麻酔科医として京都府立医科大学病院や西陣病院にて勤務、その後在宅医療分野へ転向。2015年、京都市内に在宅療養支援診療所おかやま在宅クリニックを開設し、訪問診療、緩和医療、認知症治療などに携わる。2018年より産経新聞大阪本社地方版でコラム「在宅善哉」を連載開始(筆名:尾崎容子)。2020年、真宗大谷派にて得度を受け僧侶となる。現在は終末期をみる医師として、地域密着医療を実践するほか、看取りの勉強会を主宰する。 著書に『老後を心おだやかに生きる いのちと向き合う医師の僧侶が伝えたいこと』(明日香出版社)など。

『毒親を在宅で見送った緩和ケア医が伝える 関係のよくない親を看取るということ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

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