駆け込みはこれから

8%の消費税の計算は、価格から2割ひいて1桁ずらせば…ってこっちのほうが面倒でしょうか。いっそ「約1割」と高めに見積もっておけば、次の「10%」になっても精神的ダメージは少ないのではないか。などと考えているうちに増税がやってきます。そこで「駆け込み需要」を狙い、各社がセールを打ち出しています。オフィス用品通販のカウネットはオフィス用品約3千品目を平均7%値下げし、家具チェーンの「ニトリ」は営業時間を延長し、百貨店の高島屋は3月23日まで、全国の16店舗で買いだめ商品のイベントを開催します。

しかし「駆け込み」は果たしてお得なのか。また、同じタイミングでサポートが終了する「Windows XP」の買い換えもしなければならないのか。という疑問に答える今回は0.2特別号。駆け込みは0.2な社長を大量に生み出します。そんな社長を見つけたとき、ニタニタと笑って過ごすか、進言してポイントを稼ぐかはあなた次第です。

買いだめで発生する費用増

まとめ買いとは、駆け込み需要の代表的な消費行動と言って良いでしょう。まとめ買いには向き不向きがあり、保存ができ、品質や機能が変わらない商品が推奨されます。家庭用品では洗剤やボックスティッシュ、トイレットペーパー、食品ならパスタなどの乾麺や缶詰などです。そしてオフィス用品の筆頭格は「コピー用紙」です。

かつて消費税が3%から5%に上がるとき、「コピー用紙」を駆け込み購入したA社長。A社長は社内の簡易印刷機で自社の販促チラシを印刷し、店内で配布していました。

「紙はいくらあっても使う」

と増税前に大量購入しました。ところが紙は重くかさばります。大量に納品されたコピー用紙に事務所は占拠されます。また「印刷」してもカサは減らず、配布が完了するまで状態は変わりません。

「紙の分まで家賃を払っている」

と苦笑したA社長の目尻をわたしはいまでも覚えています。

品薄という囁き

わたしも同じことをしたので、記憶が強化されたのでしょう。増税ではありませんが「特価」のコピー用紙を見つけ大量購入したところ、面積比計算でコピー用紙の家賃として、毎月2000円相当を1年近く支払っていたことがあるからです。人の振り見て我が振り直せなかった0.2です。ちなみに大量購入では「乾電池」でもやらかしたことがあります。乾電池は使用しなくても年間5%ほど自然放電していくことを忘れ、「箱買い」して文字通り「死蔵」させました。

こんな「駆け込み」もあります。20世紀も終わりに近づいたDTPの普及期、多くの企業が参入を試みました。DTPとはコンピュータのなかで、印刷用のデザインを完成させる方法です。いまではワープロソフト「ワード」でもできることですが、当時は画期的だったのです。ちなみにA社長はアルバイトのなかから「同人誌」を描いていたスタッフを取り立て、手描きでチラシ作りをさせていました。

広告代理店のB社が参入を試みます。出入りのリース業者にDTPパソコンの見積もりをさせると、

「このタイプは品薄です」

と、パンフレットを差し出します。B社は即決し、納入した翌月、革新的な新機種が登場したのでした。

XPの買い換え時は

当時のDTP用パソコンの代名詞は、アップル社のMacintosh、通称「マック」です。いまや「iPhone」の会社となりましたが、20世紀のアップル社はパソコンメーカーでした。B社が購入した当時、マックの新機種において「iPod」と「iPad」ほどの、革新的な世代交代が行われることは、すでに発表されており、多少詳しいものは買い控えしていました。つまり需要がないことからの「品薄」で、嘘は言っていませんが誠実ではありません。そしてリース会社の餌食となった「0.2」です。

さてパソコンの代名詞にまでなった「XP」。このまま使い続けるのは危険といわれていますが本当でしょうか。パソコンは機械であり、いつかは壊れてしまいます。壊れる前に「乗り換える」のは不可欠です。しかし、それはこの3月中でなければならないかというと、条件のひとつではありますが、絶対条件ではありません。なぜならサポートが終了したら「ネットにつなげなければ良い」だけのことだからです。

いまも現役選手のXPには「専用ソフト」がインストールされていることが少なくありません。あるいは、バージョンアップに取り残され、最新版にキャッチアップできないこともあります。ウィンドウズ社のサポート終了で懸念されるのは、ネットを介したウィルスなどの攻撃です。ならば、これらのパソコンの「ネット回線ケーブル」を外せば、故障するまでは問題なく使用することができます。ネット閲覧、メールの送受信が必要なら、それ専用のパソコン、あるいはタブレットを用意すれば良く、それこそ「スマホ」でも代用できます。

エンタープライズ1.0への箴言


「一つ、保管場所・管理費を考える」
「一つ、前のめりになると足元を見られる」
「一つ、XPはネットから離脱すれば故障するまでは使える」

宮脇 睦(みやわき あつし)
プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」