IoE(Internet of Everything)という言葉をご存知でしょうか?

IoT(Internet of Things)とも呼ばれていますが、これまで、ただの"モノ"でしかなかった家や車、そして歯ブラシまでもがネットへ直接繋がる時代になることを指しています。

この連載では、全てが"ネット"に繋がる時代だからこそ、思わぬところで漏れてしまう自分の情報をどのように意識して取り扱っていくか、トレンドマイクロの方に解説していただきます。

SNSの思わぬ罠

「今晩は仕事だったんじゃないの?」

学生時代の友人と楽しいひとときを過ごした私の同僚が、帰宅と同時に奥様から放たれた凍りつく一言。

実は彼、奥様に接待と嘘をついて学生時代の友人と久しぶりに楽しくお酒を飲んでいたのです。懐かしさのあまり大騒ぎをしてみんなと写真も撮りました。もちろん、やましい気持ちのある彼は飲み会の様子をSNSに投稿したりはしていません。奥様と彼の友人も面識は一切ありません。それなのに、どうして瞬く間にばれてしまったのでしょうか?

答えは、SNSにある写真のタグ付け機能です。

写真のタグ付け機能は、投稿する際にSNS上の友人に"タグ"を設定することで、写真に関連付ける機能のことです。タグ付けされた友人のSNSページに、自動的にその投稿が掲載されることになります。

SNSのタグ付けイメージ

今回のケースでは、友人が彼のSNSアカウントをタグ付けして勝手に投稿した結果、彼のSNSページにも写真が投稿され、帰宅を待つ奥様に見られてしまったというわけです。

より多くの人とつながり、情報を共有することで活性化していくSNSは、新たな繋がりを促すための機能が実装されており、写真のタグ付けもその一つと言えるでしょう。新たな出会いを手助けしてくれるという嬉しい効果がある反面、自分の知らない所で顔と名前がネット上に広がってしまう側面もあります。

前回の連載でもお伝えしましたが、やはり道具は"使いよう"。FacebookなどのSNSでは自分が投稿した内容の閲覧範囲を設定したり、タグ付けされた写真を投稿前にチェックしたりできる機能がきちんと備わっています。

彼はそもそも、奥様に嘘をつくことなく、堂々と飲み会に行けば良かったわけです。ただ、ごまかしながら飲み会に行ったとしても、こういったチェック機能を事前に設定していれば、気まずい思いをせずに済んだのかも知れません。

守るべき情報とは?

今年発売が予定されているApple Watchをはじめ、最近浸透してきたウェアラブル端末では、自分の身長や体重、歩数、ジョギングの様子、睡眠時間といった活動情報を記録して、健康を管理できるものがあります。ウェアラブル端末と連動するアプリは、活動を集計するだけのものから、これらの情報をSNSに自動公開する機能を持つものまであります。

メタボも気になる年頃で購入したのはいいけれど、設定を誤ってしまい、うっかり自分の体重をネットに公開しないように注意しましょう。自分はまだしも、奥様の情報に繋がる端末で設定をミスしてしまったら、取り返しがつきません。

奥様の体重を公開してしまうことだけでも充分脅威を感じるかも知れませんが、こういったアプリを利用することで、ネット上にどのような情報を保存することになるのか、一歩踏み込んで考えてみましょう。

例えば、アプリに「メールアドレス」や「名前」を登録するケースがあります。これに加えて毎日登録する「身長と体重」のデータ、ジョギングの経路を分析すれば「自宅のありか」すら見えてきます。これらの情報は、アプリを提供する事業者によってネット上に集約保存されます。

これらの情報を個別に提供することに、それほど抵抗はないかもしれません。しかし、情報がまとまって一つになった時、あなたという存在がネット上で可視化されてしまうわけです。

事実、サイバー犯罪者はその価値をよく理解しており、集約されたネット上の情報を狙う攻撃は後を絶ちません。自分では防ぎようのないことですが、プライバシーに関する情報が奪われて実際に悪用されるこの時代、私たちは「ネットで情報を保存することの意味」をもう一度よく考える必要があります。

  • SNSで投稿する情報の公開範囲は適切ですか?

  • 利用するアプリは信頼できる事業者によって提供されていますか?

  • 公開する情報と引き換えにあなたが失うものはないですか?

本来、生活をより豊かにするための道具の一つであるネットに踊らされるのは、スマートな大人とは言えません。IoE時代を迎えつつある今、少し物足りなさを感じるくらいの情報公開が、ネットとの関わり方として程良いバランスかもしれません。

筆者:森本 純(もりもと じゅん)

トレンドマイクロ株式会社 マーケティング戦略部

コアテク・スレットマーケティング課 シニアスペシャリスト

インターネットを安全に楽しむためのセキュリティ情報サイト「is702」の企画・運営をはじめ、セキュリティエンジニアとしての実務経験を元に大学生から企業ユーザまで広く様々な立場の人への脅威啓発活動を担当している。