今年最後のコラムである。1年間の記事を読み直してみたが、暗い話題が多い。インド・中国という新興国両巨頭を話題にして、気持ちが高まる記事がない。インドは好きだが批判ばかりである。それでも飽きもせずに読んでいただき、ただただ、お礼を申し上げる次第である。
今年最後ということで、気持ちが高まる話題にしたいところだが、何も思い浮かばない。こういう時は酔うに限る。お酒をいただいて来年は良くなるように祈るべく、今回は、中国の「お酒事情」をお届けしたい。
構えて呑めば中国の宴席も怖くない
ご存じの方もいるだろうが、中国の宴では「乾杯の嵐」が常である。それも、アルコール分の薄いビールではなく、55度の白酒での乾杯である。乾杯のたびに呑み干しはしないが、呑む量はどうしても多くなる。
初めて北京を訪問した時は大変だった。1日で北京大学と精華大学を周ったのだが、どちらでも歓迎の宴である。2人連れだったのだが、相棒が裏切って「禁酒しています」と言い出したおかげで、1人で乾杯の相手をする羽目に陥ってしまった。多勢に無勢だが、ここは日本人代表として開き直るしかない。立食形式だったのをいいことに、両足を少し開き気味に立ち、下腹に力を入れて呑む。昼も夜もこれで凌いだ。
2年前に結婚式で寧夏回族自治区北端の石嘴市に行った時も同様だ。外国人、それも日本人など見たこともない街だ。物珍しさもあってか、乾杯攻撃である。花嫁さんからは止められたが、背中を見せるわけには行かない。やはり両足を少し開いて力を入れる。これで乗り切った。
今、話題の北朝鮮国境の街・丹東に行った時は、お世話になったガイドさんの親父さんとのタイマンとなった。白酒を2人で2本、親父さんが先に潰れてしまった。
中国のビールはいまひとつ
油断した時は駄目だ。一度、大連で負けてしまった。それもビールでである。
贔屓にしていた居酒屋の料理人やスタッフ達、中国人若者7人とカラオケボックスへ行ったところ、イッキ、イッキの連続だ。最初は良かったのだが、敵は交代制で来る。最後の1人と勝負していたところまでは憶えているのだが、気が付いたらホテルのベッドの上にいた。多分、勘定は連中が払ってくれたのだろう。
しかし、中国のビールはあまり美味しいと思わない。日本でもビールを飲まない筆者が言うのもなんだが、そもそも好きになれない。青島ビールも大連ビールもだ。美味しいと思ったのは、大連・星海広場の料理屋産の地ビールをいただいた時だけである。あの黒ビールは美味しかった。
中国のワインがボルドーワインに勝った!?
中国で不思議に思うのは、ご飯、コーヒー、麺料理、ワインのまずさである。締めにご飯を食べようものなら最悪である。せっかくの料理が台なしだ。だから、最後はいつも水餃子をいただく。これは大連・星海広場の高級レストラン街でも同じである。
スターバックスのコーヒーも値段は日本より高いが、なぜか味は落ちる。大きな声では言えないが、実は麺料理もまずい。最初はその店がまずいのかと思っていたが、どの店もまずい。日本のラーメン屋が中国で流行るのも当然である。ただ、寧夏出身の当社社員の前でこれを言うと「寧夏とか西安の麺料理を食べてから言え」と怒り出す。確かに西の方は少し違う。しかし不思議である。これほど食文化が豊かな国であるにもかかわらずにだ。極めつけの中国産ワインは腐り気味の葡萄ジュースと思うほどだ。
と思っていたのだが、先日驚くニュースを見た。北京で14日に行われたワインのテイスティングで、フランス人5人と中国人5人のソムリエが選んだベスト・ワインは、寧夏回族自治区産の怡園酒庄ブランドのカベルネ・ソービニヨンだったというのだ。審査では、ラベルを隠した状態でボルドー産と寧夏回族自治区産の2008~09年物ワインを5本ずつ試飲した。結果、第1位~第4位を寧夏産ワインが占めたそうだ。
偉そうなことを言っているが、実はボルドー産のワインが美味しいかどうかよくわからない。知り合いのインド系オーストラリア人はいつのまにかワインの貿易を始めていたが、勝沼で樽詰ワインを売り歩いていた。どうやら勝沼ワインにはオーストラリアワインがブレンドされているらしい。しかし、不思議とボルドー産ワインというのは飲む機会がない。ボルドーワインは、筆者にとっては高尚すぎるのか。
とはいえ、「世界一」と言われているボルドー産ワインより寧夏のワインが美味しいのだそうだ。にわかには信じられないが、AFPの報道だからいい加減なニュースではないだろう。さらに、仏モエ・ヘネシー社は今年、同社としては初めて中国でスパークリングワイン生産用のブドウの植え付けを始めたと書かれていた。
では、寧夏のどこがよいのだろうか? 「寧夏が世界的なハラル料理の出荷基地になる可能性がある」という別なニュースを見たが、それは理解できる。回族料理は美味い。そのうえにワインだ。あの乾燥した気候が適しているのだろうか? 寧夏は風が強いため、低い木でないと風に飛ばされてしまう。ともあれ、まずは「寧夏回族自治区産の怡園酒庄ブランドのカベルネ・ソービニヨン」とやらをいただきたいものである。
中国の話はここまでとして、次回は意外と美味しいインドのお酒で新年の宴についてお届けしたい。今年も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。良いお年をお迎えください。
著者紹介
竹田孝治 (Koji Takeda)
エターナル・テクノロジーズ(ET)社社長。日本システムウエア(NSW)にてソフトウェア開発業務に従事。1996年にインドオフショア開発と日本で初となる自社社員に対するインド研修を立ち上げる。2004年、ET社設立。グローバル人材育成のためのインド研修をメイン事業とする。2006年、インドに子会社を設立。日本、インド、中国の技術者を結び付けることを目指す。独自コラム「(続)インド・中国IT見聞録」も掲載中。
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