「家事も育児も家計も全部ワリカン! 」バツイチ同士の事実再婚を選んだマンガ家・水谷さるころが、共働き家庭で家事・育児・仕事を円満にまわすためのさまざまな独自ルールを紹介します。第133回のテーマは「『手作りお菓子』は誰のために作るのか」です。

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我が家では、パートナーが炊事、私がその他の家事を担当しています。ですが、私は最近クッキーやパンなど、「小麦粉をこねて焼く」ものをよく作るようになりました。そのきっかけは、私が好きな古墳のクッキー型を手に入れたこと。

クッキー型があるということは、クッキーを焼いたら古墳のクッキーが手に入るってことじゃないですか!? 「欲しい……古墳のクッキーが欲しい! 」と、完全に自分の欲望と趣味で始めたのがクッキー作りです。

そこから発展して、小麦粉をこねるのが楽しくなり、いろいろ作るようになりました。私は料理そのものは嫌いではなく、ただ料理に対するモチベーションが著しく低いのです。「美味しい家庭料理が食べたい」というモチベーションがないので、食べたいものがあるパートナーが炊事を担当しています。しかし、クッキーなどが作れるようになると、それはそれで使い勝手がよくなりました。

持ち寄りの会などにクッキーを焼いて持っていくことができるようになったからです。今年はコロナ禍で開催されていませんが、私の両親、きょうだい達との新年会ではいつも料理を持ち寄ります。

この私の実家の会に持って行く料理も、パートナーに作ってもらっています。まあ普段通りに炊事担当がやる、ということで、母と姉達が作った持ち寄り手料理のところに、パートナーの料理を持って行っています。一方、私は義実家で料理したことはほとんどありません。手伝ったことくらいは……あるけど! それなのに、毎年私の実家の会のためにパートナーは料理を作ってくれるのです。いやー、ほんと毎回ありがたいな~と思っています。

そんな感じで毎回パートナーに完全にお任せしていたので、私がクッキーを焼いて持っていたところ、私の母が「え、あなたがクッキー焼いたの……? 」と私の手作りの品の珍しさに驚いていました。というくらい、私の「クッキー作り」は特殊なケースで、一般的な「お母さんが焼いてくれるクッキー」みたいなイメージからはだいぶ遠いのです。どちらかというと、「普段料理しないお父さんの休日の料理」に近いものです。

しかし、ママ友の会でクッキーを焼いて持っていくと「ママの手作りクッキー」みたいになっちゃうんですよね。元々あるイメージって強いな……と思います。なので、ママ友に「ちゃんと手作りお菓子作っててえらい」みたいに言われると、すごく申し訳なくなります。「子どもと一緒にクッキーとか作ってあげられたらいいんだけど、できてないんだよね」とか言われてしまうこともあり、「ああ、そんなこと思わないで……私は毎日ご飯作ってないんです! 」と思ってしまいます。

たしかに、子どもと一緒にクッキーを作るのは楽しいです。元々私が古墳のクッキー型を集めていて、それがきっかけでクッキーを焼いているという流れがあるので、同じく古墳が好きな息子と一緒に古墳クッキーを焼いたりしました。しかし……子どもの集中力は短く、大体いつも数回型抜きしたら「もうやらない」と言われ、後は親が全部やる、という感じです。しかも数回やったら「もういい」となってしまい、どこかに持って行くクッキーを焼くときは子どもが寝てる間とかにやっています。

完全にただの趣味。しかも、我が息子はあんまり甘いものを食べません。自分で型抜きした古墳クッキーなら多少食べたのですが、何回も作ってるうちにすっかり飽きてしまいました。

去年の緊急事態宣言中、外出自粛の間に「楽しいことがしたい」とこまめに何かを焼いたりしていました。私が何度も作ったのは「アマビエクッキー」です。鬱屈した気持ちをクッキーだねにぶつけて、アマビエを錬成しまくっていました。食べられる「粘度細工」みたいな感じです。こうなってくるとますます子どもは置いてけぼりです。アマビエの形をしたクッキーは「なんかやだ」と、絶対に食べてくれませんでした。

ここ最近は、「作りたい」という気持ちはあっても、コロナ禍で持ち寄りの会は減りました。人にお菓子をあげる前提のときは自分はマスク、消毒を徹底したうえ完全に個別梱包をしています。パッケージまでできあがったお菓子を見たパートナーからは、「どこ目指してるの……業者? 」と言われました。

私はパートナーがいない日の子どもとの夕飯は、冷凍食品を使ったりコンビニで買い物して済ませたりします。これは私が「正しい母親はこうあるべき」という考えに囚われないようにしよう、と意識してやっていることでもあります。ちなみに子どもが「○○作って」とオーダーしたものは作ります。

でも、子どもも自分も望んでいないのに「こうあるべき」とか「これが正しい」という思い込みで無理してやるのは、誰も楽しくないのでやめようと思っているのです。いや、もちろん楽だからでもありますが、楽で子どもも楽しいならそれでいいと思うことにしています。

なので、逆にお菓子作りは子どものためでも「クッキーを焼いてあげられるお母さんのほうがいい」という評価のためでもなく、ただ純粋に「私が楽しくてやりたいから」やっています。やりたいからやることって、本当に楽しいんですよね。

「必要かつやるべきこと」は行いつつ、「本当にやりたくてやってること」を優先したいなあ……とクッキーを焼く度に思っています。

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著者プロフィール:水谷さるころ

女子美術短期大学卒業。イラストレーター・マンガ家・グラフィックデザイナー。
1999年「コミック・キュー」にてマンガ家デビュー。2008年に旅チャンネルの番組『行くぞ! 30日間世界一周』に出演、のちにその道中の顛末が『30日間世界一周! (イースト・プレス)』としてマンガ化(全3巻)される。2006年初婚・2009年離婚・2012年再婚(事実婚)。アラサーの10年を描いた『結婚さえできればいいと思っていたけど』(幻冬舎)を出版。その後2014年に出産し、現在は一児の母。産前産後の夫婦関係を描いた『目指せ! ツーオペ育児 ふたりで親になるわけで』(新潮社)、『どんどん仲良くなる夫婦は、家事をうまく分担している。』(幻冬舎)が近著にある。趣味の空手は弐段の腕前。