筆者は2014年末に吉野山を訪ねました。吉野山は『紀伊山地の霊場と参詣道』に含まれるかたちで世界遺産に登録されており、見事な桜が有名です。もちろん冬は違う風景であることは想像していたのですが、ピューピュー風が吹く中で気力体力は奪われ、枯れた木々も寒々しく、「なにしにここに来たんだっけ? 」と自分を見失いそうになりました。そう、観光地にも世界遺産にも、訪問するのに適した季節があります。

『白川郷・五箇山の合掌造り集落』の灯りは、とても寒いはずなのに温かみが感じられます

冬ならではの幻想的な風景を見に行こう

では、冬にオススメの世界遺産はどこか? といえば、筆者はまっさきに『白川郷・五箇山の合掌造り集落』を挙げたいと思います。降り積もった雪の中に大きな屋根の民家が立ち並ぶ様子は、まさに日本の原風景という感じがしませんか?

そして白川郷では冬季の週末にライトアップを行うのですが、これがホントに本当にオススメめなのです。デートもよし、家族みんなで行くもよし、外国人を案内するもよし、誰もがハートをわしづかみにされること間違いなしのイベントです。カメラが趣味の人にとっても、どこをとっても絵になる風景なので腕試しに最適です。

夏は一変して緑に包まれます(撮影: 宮澤光)

手と手を合わせると……合掌に

ところで、家屋の建築様式をなぜ「合掌造り」というかご存知ですか? 大きな屋根の形が、手を合わせて合掌している形に見えることがその名の由来です。この遺産は岐阜県(白川郷)と富山県(五箇山)にまたがる豪雪地帯に位置するのですが、昭和30年代までは交通が極めて不便であったことから、雪が降ると陸の孤島となっていました。この一帯の家屋は、豪雪に耐えるための工夫がこらされています。急な傾斜は雪下ろしを楽にするためですし、釘を1本もつかわずに雪の重みを分散させる構造となっています。

五箇山の相倉集落も訪ねました。ものすごい埋まり方です!

また、農地が限られていたことから、広い屋根裏で養蚕や紙すき、塩硝(火薬の原料)の生産などを行い、生計をたてていました。屋根裏が工場のような機能を果たしていたと言えます。ですから、合掌造りは吹き抜けの空間がありません。内部を見学できる施設もあるので、ぜひ屋根裏を見てみてください。

ライトアップを見に行くには公共の交通機関もありますが、マイカーかツアーの参加が便利だと思います。マイカーであれば、昼に五箇山を見てそのあと白川郷に向かえば、違った印象を楽しむことができます。ただ、ライトアップ時は駐車場が大変込み合って停められないこともあるようなので、事前にしっかり情報収集してお出掛けください。

少ない日照時間を有効に生かすため、家屋が同じ向きを向いています

神田家ではかつての養蚕の様子を展示しています

このあとの日程は、1月31日、2月1日、7日、14日のわずか4日間! この機会を逃すと来年まで待たなくてはなりません。ライトアップの詳細はホームページにて。早速プランを立ててみてはいかがでしょうか。

世界遺産データ: 白川郷・五箇山の合掌造り集落(文化遺産)
日本。1995年登録。岐阜県の荻町集落59棟(白川郷)、富山県の相倉集落20棟、菅沼集落9棟(五箇山)の合掌造りの家屋が登録されている。茅葺きの屋根は30~40年に一度葺き替えられるが、その作業は古くから続く「結(ゆい)」という互助組織によって行われる。

筆者プロフィール: 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて