筆者が勤務している場所は皇居のすぐ隣です。オフィスがあるビルはというと、そんなに一般の方の出入りは多くないのですが、12月の頭ごろ、ビル内の飲食店街が人でごった返したことがあります。理由は「皇居乾通りの一般公開」です。というのも、退出口である乾門からおそらく一番近い飲食店がこのビル内で、かつ、ビルが地下鉄の駅と直結していたからです。多くはご年配の方でしたが、皇居の集客力はスゴイとあらためて思った次第です。

皇居のお堀の紅葉はきれいに色づいています

王宮は「顕著な普遍的価値」の宝庫

普段は立ち入ることのできないところに入れる、というのはちょっとワクワクしますよね。皇居は世界遺産ではありませんが、実はかなりの数の王宮やお城が世界遺産に登録されています。王宮はその国で最高の技術を用い、贅(ぜい)をこらして築かれることがほとんどです。ですから、世界遺産登録に必要とされる「顕著な普遍的価値」を有するのは当然といえば当然ですね。

筆者は王宮にいくとかなりテンションがあがります。平民の立ち入りが禁じられていた、ある種無菌状態の空間の中で王や為政者がどのような生活を送っていたのか、それぞれの部屋で何をしていたのか、彼らが使用した家具類はどんなものなのか、当時のことに思いをはせながらゆっくりと見て回ります。映画「ラスト・エンペラー」で描かれた、北京の紫禁城(今の「故宮」)で繰り広げられる皇帝の生活は、まさに庶民の立ち入りが禁じられた世界でした。

王宮の世界遺産は日本にもある!

日本にも、かつて王の居城だったところが世界遺産に登録されているんですよ。どこだか分かりますか? そう、那覇にある「首里城跡」です。『琉球王国のグスク及び関連遺産群』のひとつとして登録されています。15世紀初頭に誕生した琉球王国は、中国(当時は「明」)の冊封(さくほう=君臣関係)を受けていたので、王の居城であった首里城にも中国の影響がはしばしに見られます。

首里城の正殿です。沖縄戦で焼失し、1992年に復元されました

中国では龍が皇帝のシンボルとされたので、北京の故宮などには龍をモチーフとした彫刻や飾りをたくさん見つけることができます。そして、首里城跡にも龍の装飾があるのですが、実は中国とは違うところがあるのです! それは、爪の数。中国では龍の爪は5本で表されていますが、琉球王国では明に配慮して4本にしたそうです。

ちょっと分かりにくいんですが、額縁の下の龍は爪が4本しかありません

ルイ14世は変わり者!?

では、海外に目を移してみましょう。誰もがその名を知っている宮殿といえば「ヴェルサイユ宮殿」ではないでしょうか。この宮殿を築いたのはルイ14世ですが、この王様、相当の変わり者でした。

なんと民衆の誰もが宮殿に入るのを許したのです。1日のスケジュールを規則正しくこなし、その生活全てを公開して、王の絶対的な権力を国内外に知らしめようとしました。大のお気に入りだった庭園については、民衆に庭園の見方を教えるガイドブックを自ら執筆しています。時代は変わりまして、ルイ16世の王妃であったマリー・アントワネットにいたっては、なんと出産も公開されたとか。

太陽王と呼ばれたルイ14世。要は自己中ってことですね

マリー・アントワネットの寝室。ここで出産も公開されました

現役の王宮が世界遺産となっているところもあります。北のヴェルサイユとも称される、スウェーデンの「ドロットニングホルムの王宮」です。現在も王族が住んでおり、2・3階の一角が見学者に開放されています。

ところで、日本の皇居が世界遺産になる可能性はまずないと思います。皇室財産は宮内庁が管轄しており、世界遺産登録に必要な法体制とは異なるということもありますし、筆者の個人的見解としては、いまの皇居の保護のあり方がもっとも適切であるように思います。

それにしても今回の一般公開で不思議だったのは、公開初日からすごい人出だったわけですが、ご年配の方々はどうやって情報をキャッチしたのか? ということです。「ツイッターとかSNSで連れ立ってやってきた」ということでもないでしょうし。そして、見学を終えた皆さんの元気なことといったら! いつもは割と静かなビル内のカフェに響き渡る弾んだ声に、筆者も元気をもらったのでした。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて