関東在住の美術館・博物館巡り好きにとって聖地といえば「上野」ではないでしょうか。東京国立博物館(トーハク)、国立科学博物館、国立西洋美術館、東京都美術館、東京藝術大学大学美術館……挙げればキリがありません。

東京国立博物館、略して東博(トーハク)。こちらは本館

2年前には国立西洋美術館で「ベルリン国立美術館展」があり、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」が登場! かたや東京都美術館の「マウリッツハイス美術館展」では、「真珠の耳飾りの少女」がやって来て、フェルメール祭りの様相でした。名称が似ていて紛らわしいんですが(笑)。

こちらは「真珠の耳飾りの少女」。展示からもう2年も経ちましたっけ?

そんな上野でいま、現在の有形文化財の国宝(1,092件)の1割強にあたる119件が集結する「日本国宝展」が12月7日まで、東京国立博物館平成館 特別展示室で開催されています。ところで、国宝と世界遺産の違いって分かります?

国宝であり世界遺産でもあるものも

そもそも国宝とは何でしょう。文字通り「たぐいない国民の宝」ということなのですが、1950年制定の文化財保護法に基づいて指定されたものです。建造物、美術工芸品等の有形文化財のうち、重要なものを重要文化財に指定し、さらにその中でも世界文化の見地から特に価値の高いものを国宝に指定しています。

じゃあ日本において国宝と世界遺産ってどう違うの、と疑問は広がっていきます。世界遺産は保有国の法律で保護されていることが登録の条件ですので、世界文化遺産においては文化財保護法による国の文化財指定を受けていなければなりません。そこは国宝と同様です。うーん、分かりにくいでしょうか。

実は文化財保護法で守られている文化財は非常に幅広く、中には動植物や無形文化も含まれます。国宝は建造物と美術工芸品に限定した中から誕生するのであり、世界遺産は史跡(古墳やお城など)や名勝(庭園や山岳など)から誕生することもあります。もちろん、国宝となっている建造物が世界遺産に登録されているという事例もあり、『法隆寺地域の仏教建造物群』や『日光の社寺』などは敷地内の複数の建造物が国宝指定されています。

今回トーハクで行われる「日本国宝展」で展示されているのは美術工芸品ですし、世界遺産は不動産であることが条件なので、世界遺産が陳列されているわけではありません。ただ、世界遺産に登録されている遺産内に安置されている仏像や絵画などが、たくさん集まっています。

おなじみの世界遺産からあのお宝が!

たとえば、法隆寺の「玉虫厨子(たまむしのずし)」。こちらはかなりの迫力です。四方からじっくりと観察することができます。世界遺産である『古都奈良の文化財』に含まれる「元興寺」の五重小塔も、よくぞここまで運んだなあ、とびっくりしました。

「玉虫厨子」です。会場内は撮影できないので、昔の写真をお借りしました

京都の平等院鳳凰堂の「雲中供養菩薩像(うんちゅうくようぼさつぞう)」は筆者がとても好きな像です。ほかのお宝がスゴすぎて、かなりさらっと陳列されています。琉球王朝の紅型(びんがた)衣装は、王族のみ使用が許されたという黄色がとても鮮やかでした。それから、来年の世界記憶遺産登録を目指している、京都の東寺(教王護国寺)の「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」をみれば、ちょっと話題を先取りできそう。

「雲中供養菩薩像」。これも古い写真です。家に一体ほしいんです(笑)

ほかにも平泉の中尊寺、奈良の薬師寺(同展では最初に登場する展示)、高野山の金剛峯寺、暫定リストに入っている宗像の沖ノ島……などなど、世界遺産からさまざまな逸品が集められています。これらは世界遺産の知識がある人が見れば、歴史的背景や価値がより深く理解できると思います。

もちろん、国宝も世界遺産も詳しくないし、日ごろ博物館に行かないし、という人も、いやそういう人にこそ、この機会に日本の宝に触れてみてほしいと思います。中にはきっと、「うっわー、こんなのどうやって作ったの!?」とか、「この絵、なんか好きだな」とか「これめっちゃきれい!」と心に入り込んでくる作品がいくつかあるはずです。

関東以外の人ももし上京する機会があれば、ちょっと無理をしてでも時間を作って訪問することをお勧めします。11月21日からは、国宝の土偶5体すべてが会場に勢ぞろいします。いわば土偶の「神ファイブ」ですよ! 筆者もまたトーハクに行くことになりそうです。では、会場で。

※展示期間中に作品の入れ替えがあります。詳しくはHPをご覧ください

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて