前回から、筆者のヨーロッパ紀行をお届けしております。時期は、北京オリンピック・パラリンピックが終わった直後ですから、2008年秋のことです。当時筆者は北京で生活しており、オリパラが終わった後は軽い燃え尽き症候群のようになったのですが、気持ちを切り替えるべくヨーロッパへと向かいました。前回は『ケルンの大聖堂』を中心にドイツでの出来事をお話ししましたが、次にむかったのはオーストリアです。

丘の上にあるのは、ザルツブルクのシンボル、ホーエンザルツブルク城

在りし日のモーツァルトに触れる

モーツァルト生誕の地、『ザルツブルクの歴史地区』は世界遺産に登録されています。ザルツブルクとはドイツ語で"塩の街"の意味であり、紀元前から岩塩の交易により栄えた……そうです。街の建築物はバロック様式で建てられていた……そうです。当時の筆者はというと、「うっわー、きれいな街だなー。モーツァルトの生家行ったからまぁいっか」と1泊で移動してしまいました……。

ウィーンは目の保養に最適

チョコレートケーキの王様、ザッハトルテ。濃厚です

次なる地は、街全体が世界遺産のウィーンです。筆者はアートや建築に興味があるので、数々の名品を収めた美術館やアール・ヌーヴォー建築をぐるぐると回って堪能しました。フンデルトヴァッサーが設計した市営住宅を見上げては、「童話に出てきそうなおもちゃ箱みたい!」などと思いながら。そうそう、ウィーンといえばオーストリアきっての名物スイーツ・ザッハトルテを食べないと、ということでホテル・ザッハーという有名カフェにも行きました。

ウィーンにはさまざまな美術館がありますが、特に有名なのはウィーン美術史美術館かと思います。中世からルネサンス期、バロック期を中心としたすばらしいヨーロッパの名品を収蔵しています。ピーテル・ブリューゲル、デューラー、ラファエロ、ティントレット、とまあ出るわ出るわの絵画の大洪水です。

そして、日本でもおなじみのフェルメール。「絵画芸術」という作品があります。日本でフェルメールの展覧会があれば間違いなく行列となりますが、ここでは誰にも邪魔されることなく10分以上立ち尽くしていたかと思います。

ユニークな設計で知られているウィーン分離派会館。中心の球形はキャベツに例えられます

美術館ではカフェにもご注目

ウィーン美術史美術館内のカフェ。クラシックでステキです

そろそろ次の絵に移ろうか、という時に日本人の年配のご婦人が隣へとやって来て、なんとなく立ち話になりました。彼女とはこの広い美術館の中で何回も遭遇していたのです。一人旅をしている、というさっそうとした方で、「美術館内のカフェでお茶でもいかが」と誘ってくださったので、カフェでご一緒させてもらいました。

ここのカフェが、中央のドーム天井の真下にあり吹き抜けとなっているのですが、本当にステキなのです! 「世界で最も美しいカフェ」といわれることもあるとか。 ここで筆者はご婦人から驚愕の告白を聞くことになります。その内容はなんと! お・し・え・な~い!!

いまあなた、イラッとしましたね。筆者も軽い殺気を感じました。ただ、内容が内容なので、ここでは明かせないのです。今度一緒に飲みに行くことがあれば、教えてあげましょう。ご婦人は一気に語りつくすと「じゃああなたもいい旅を」といって、あっさりと去っていきました。衝撃だけ残して。

アートも見た、近現代建築もいっぱい見た、クラシックなカフェもいった、よしよしウィーンはこれでよかろう、と筆者はお隣のチェコへと北上したのでした。

ウィーンの歴史を知ればもっと楽しめる

そして旅行後、世界遺産検定を受検する時に知ったのです。ウィーンは13世紀以降にハプスブルクの王都として発展した城塞都市であったことを。そもそもウィーン美術史美術館は、美術品の収集に熱心だったハプスブルク家の400年の宮廷コレクションを中心とするものだったのです。道理であれだけゴージャスな内容になるわけだ。

そして19世紀末には、ウィーンの発展の妨げとなっていた城塞をとっぱらって「リンクシュトラーセ」といわれる環状道路が作られています。この通り沿いには様々な歴史的建造物が立ち並び、建築様式のショーウインドーと言われているそうです。

街の中心にあるシュテファン大聖堂も、「高い聖堂だなー、屋根の模様がかわいいなー」と見上げて写真を撮って終わり、でした。ケルン大聖堂の塔の高さは157mだったのですが、シュテファン大聖堂も137mとかなりのものです。ヨーロッパの代表的なゴシック建築のひとつで、北塔に登れば南塔の屋根に描かれたハプスブルク家の紋章「双頭の鷲」の模様を見ることができます。また出たよハプスブルク。

屋根のモザイクがかわいいシュテファン大聖堂

筆者は筆者なりにウィーンを満喫しました。だけど、また行けばきっと新たなウィーンの魅力に出会えると思います! 待ってろよ~ウィーン!! (そんな調子で、プラハもブダペストもドゥブロヴニクもワルシャワも、全部次回リベンジということに……)。

■世界遺産データ: ウィーンの歴史地区(文化遺産)
オーストリア。2001年登録。古代ローマ軍が築いた駐屯地を起源とし、13世紀以降ハプスブルク家の王都として繁栄した。都市機能拡大の妨げとなっていた城塞を19世紀に取り除き、リンクシュトラーセと呼ばれる環状道路を引いて近代都市への大改造を行った。郊外の『シェーンブルン宮殿と庭園』も必見。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて