『ケルンの大聖堂』はあまりに大きすぎて、全景をカメラに収めるのが不可能なほど

秋ですね。筆者は何年も前のこの時期に、ヨーロッパでキャリーバックひとつの長旅をしていました。旅の第一歩となるドイツのデュッセルドルフ空港を降り立ち、市内に向かう電車から外を眺めると、黄葉が柔らかい陽射しを受けて、キラキラとした光がこぼれていたことを、今でもはっきりと思い出せます。初めて訪れた秋のヨーロッパに、一目ぼれしてしまったのです。

あまり細かくルートを決めていなかった旅ですが、結果的に多くの世界遺産を巡ることになりました。これから何回かにわけて、筆者の印象に残ったドイツ・中欧の世界遺産を紹介しようと思います。

世界最大級のゴシック建築

その旅は、なにがなんでも9月末にドイツに滑り込む必要がありました。というのも、10月の第1日曜日までミュンヘンで行われる「オクトーバーフェスト」に参加するために旅を始めたからです。デュッセルドルフ~ケルン~フランクフルト~ミュンヘン、と高速鉄道ICEを乗り継いで会場へと乗り込みました。

高い天井をもつ内部。やはり感想は「高!!!」

途中で立ち寄ったケルンには、世界最大級のゴシック建築である『ケルンの大聖堂』があります。電車がケルン駅に近づくと、とんでもなく大きな塊のような建造物が視界に入ってきます。

先に言っておくと、当時筆者はこの仕事に就いておりませんでした。この仕事、というのは世界遺産アカデミーの研究員のことです。学生のころから旅好きで方々を巡ってはいたものの、「世界遺産といえば世界的にお墨付きのつけられた観光地」という大勘違いをしていました。ですから、今の筆者からするとずいぶんとピントのずれた観光をしており、「なぜそこをスルーした! もっとよく見なさいよ!!」と、そのころの自分を一喝したくもなるのですが、そのあたりも今回は包み隠さずお話したいと思います。



世界遺産めぐりの前に、できれば情報収集を

ゴシック建築が何たるかもよく分かっておらず(12世紀中ごろから北フランスで花開いた、高さを追求した建築です)、大聖堂の歴史的な経緯などまったく知る由もなく、そうした予備知識がないために「でか!!!」という感想しかでてきませんでした。

ここで筆者は自分の反省を踏まえて、読者のみなさんにひとつお願いがあります。世界遺産に限らず、遺跡や遺産、歴史的建造物の観光にいく時には、多少の予習をしていってほしいのです。事前に時間が取れなければ、現地のツーリストインフォメーションのパンフを見るとか、ガイドさんに教えてもらうとか、カバーする方法はいろいろあるかと思います。せっかく歴史ある遺産を訪問したのに、感想が「でか!!!」だけではもったいなさすぎますから……。

正門を下から見上げてみました。どうですかこの迫力!

完成までに600年以上も!

ちなみに筆者は、大聖堂の外観を一通りカメラに収め内部もチラ見だけしたあと、あっさりとその場を離れてしまいました。建築好きなので、レンゾ・ピアノが設計したショッピングセンターや、ピーター・ズントーによる「聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館」を見たかったのです。

その旅から帰国した後のことですが、世界遺産に興味がわいて世界遺産検定のテキストなどを読むうちに分かったことがあります。2つの尖塔の高さは157mもあり、いかに優れた建築が施されているのか、完成までに600年以上というどれほど膨大な時間を要しているのかということです。

その高みを目指した執念や時間の積み重ねが、大聖堂の迫力をさらに増し、もしかすると視覚だけではなく第六感のようなものにも訴えかけているのかもしれません。自分が思わず発した「でか!!!」にそんな意味があったとは(ちょっと違いますか……)。

ピーター・ズントーによる「聖コロンバ教会ケルン大司教区美術館」。これが見たかったんです

筆者はその後ミュンヘンに行き、念願のオクトーバーフェストに参加しました。いろんなビールメーカーが設営した巨大なテントがいくつもあって、容量1Lものビールジョッキを片手に、世界各国から集まってきた人々と飲んだり踊ったり。最高でした! あ、世界遺産とはまったく関係ありません……。

そこからさらにオーストリアへと向かい、ザルツブルクやウィーンなどの世界遺産を目指したのですが、それは次回に。

■世界遺産データ: ケルンの大聖堂(文化遺産)
ドイツ。1996年登録、2008年範囲拡大。1248年にフランスのアミアン聖堂を手本として建築が開始されたが、資金不足のため1560年に工事が中断されてしまう。その後1842年に建築が再開され、完成したのは1880年である。天井の高さと光を追求したゴシック建築の典型とされる。ドイツの芸術家ゲルハルト・リヒターの格子柄のステンドグラスも必見。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて