山頂のご来光。筆者が見る日は訪れるのだろうか……(撮影: 広田麻季)

筆者の周囲には、「今年は富士山に登ろうと思う」という人がすでに4、5人います。明らかに昨年の『富士山─信仰の対象と芸術の源泉』の世界遺産登録の影響だと思います。日本では世界遺産に登録された後、徐々にブームは落ち着いていくものですが、富士山に限っては今年も変わらず注目エリアとなりそうです。

本日より一部のルートが山開きとなりますが、昨年といろいろルールが変更となっています。そうしたことを踏まえて安全に登山を行い、富士山の魅力もしっかりと見てきてもらえればと思います。

今年から山開きの日程が変更に

富士山の山開きはこれまで7月1日~8月末日までの2カ月間が一般的でしたが、今年より一部変更になりました。山梨県と静岡県では日程が異なります。山梨県側の吉田ルートは7月1日~9月14日の予定です。昨年9月以降も登山客が後を絶たなかったという実情に合わせる形にしたようです。

昨年の富士登山の様子。人・人・人です(撮影: 広田麻季)

一方、静岡県側の富士宮ルート、御殿場ルート、須走ルートは山開きを10日遅らせて、7月10日~9月10日までとなっています。例年残雪の影響で開山が遅れることが多いため、今年は開山日を後ろにずらすことで調整しており、また、富士宮市のバイオトイレの開設準備などが間に合わないなどの理由もありました。

トイレの話題が出たので大事なお話を。富士山山頂のトイレは静岡県の管理となっています。御殿場ルートに近い環境省の公衆トイレが7月5日、須走ルートに近い山小屋のトイレが7月9日まで閉鎖中で、利用できるトイレがありません。7月に入ってすぐに登山の計画を立てている方は、そうしたトイレ情報をつかんでいくことをお忘れなく! ちなみに山梨県は、吉田ルートのみ開通する7月1日~9日、9月11日~14日は登山客に簡易トイレを無料配布する方針を固めたようです。

富士山山頂の鳥居。山頂には浅間大社の奥宮があります

富士山に課された「宿題」

こうした事情からも、山梨県と静岡県で足並みがそろっていない様子が見え隠れしています。富士山は世界遺産登録を果たしたことで、かえって課題や問題点が浮き彫りとなりました。こうした課題には、行政や自治体、関係者がそれぞれの利害を越えてしっかりと歩み寄り、解決策を模索していくことが問われます。

しかし、山開きの状況を見ると、それぞれの県がおそらくベターな判断をしているとは思いますが、来訪者にとっては少なからず混乱を生じる恐れもあるように感じられました。十分な情報発信は足りていたのでしょうか。

実は、昨年の世界遺産委員会では、富士山は2016年2月1日までに「保全状況報告書」という環境保全策を提出するように要請されました。つまり、3年以内に宿題を提出するように言われたのです。文化的景観の手法を反映した資産の総合的な構想(ビジョン)、来訪者戦略、登山道の保全手法、情報提供戦略、危機管理戦略などの提出です。

河口湖からの富士山。この美しい景観を長期的に維持していくことが大切です

世界遺産としての価値を明確にするという点の指摘は、一般の方には分かりづらい点もあるかと思います。ですがそれを除くと、登山客の適正な人数を把握してそれに沿った受け入れ態勢をつくること、環境保全と観光振興の両立の計画をきちんと立てていくこと、などが含まれていると読み替えれば分かりやすいかと思います。この報告書を実のあるしっかりとしたものにしていくには、やはり山梨県と静岡県がしっかりとタッグを組んで、総合的な内容にしていくことが不可欠だと思います。

なんて上から目線で語っている筆者ですが、富士山山頂に登ったことはありません。登山、疲れるからキライなんです……。しかし、もし世界遺産検定を山頂で実施することになれば、試験監督として参ります! 世界遺産検定には「富士山会場」があるのですが、そちらは「富士山本宮浅間大社」での実施となっております。筆者と一緒に「富士山山頂会場」を目指したい受検生の方、いらっしゃいますか? 今年の夏の検定はもう締め切っているので、次は来年の夏になります。来年もしこのコラムのことを思い出したら、検定事務所までご一報くださいね!

9月の検定は、ここ富士山本宮浅間大社でも開催されます

世界遺産データ:富士山─信仰の対象と芸術の源泉(文化遺産)
日本(山梨県・静岡県)、2013年登録。日本の国家的象徴であり、かつ日本における山岳信仰の象徴。山そのものが神聖視され、遥拝だけでなく「登拝」が行われてきた点が特徴。絵画や和歌など、芸術・文学活動の源となり世界に影響を与えた点も重要とされている。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて