いよいよワールドカップの開幕が迫ってきました! 実は、世界遺産ギョーカイ人(というものがあるのかどうか分かりませんが)にとっても、とても大事なイベントが迫っています。それは「世界遺産委員会」という、世界遺産の新規登録物件などを決定する会議です。1年に1回行われるのですが、今年は『富岡製糸場と絹産業遺産群』が登録決定を待ち構えていることはみなさんご存知のとおりです。こちらは6月15日~25日にかけて、カタールのドーハで行われます。

ブラジルW杯決勝会場のマラカナンスタジアム。ここの改修は間に合いました!

……ドーハといえば!! このコラムをご覧になっている方は、1993年の「ドーハの悲劇」をリアルタイムで見ていた方も多いかと思いますが、そのドーハです。今回の会議では、絶対にそんな悲劇は起こらないと思いますが。

リオ・デ・ジャネイロも世界遺産!

世界遺産委員会の話はこれくらいにして、ワールドカップですよ! ブラジルの世界遺産に目を向けてみると、ポルトガルの植民地であった歴史的経緯から、ポルトガルによって開発された都市や鉱山などが数多く登録されていることが分かります。南米においては、宗主国であったポルトガルやスペインの文化が色濃く残っており、世界遺産にもそれが反映されているのはブラジルに限らず他の国でも言えることです。

リオといえばこれでしょ! キリスト像は高さ約40mあります

決勝が行われるリオ・デ・ジャネイロは、実は2012年に世界遺産に登録されています。ブラジル第2の都市として知名度は十分メジャーですが、世界遺産のタイトルまで持っているというのは少し意外かもしれません。2016年のオリンピックの開催も決定していますし、いま世界が大注目している旬の都市といえるでしょう。

ところで、「リオ・デ・ジャネイロ」の名前の由来はご存知ですか? この地は1501年1月1日に、この近くの湾を発見したポルトガル人探険家によって"発見"されました。南米にはもちろん先住民がいるわけで、発見というのは完全にヨーロッパの征服者による発想です。ただここではその議論はおいておいて、ひとまず"発見"としましょう。

探検家はその湾を川と間違えてしまったことから、ポルトガル語で「1月の川」を意味する「リオ・デ・ジャネイロ」と名づけました。お正月というめでたい時に発見したんですから、もう少し気のきいた名称にしてほしかった気もしますが、南米にはこうした単純な由来の名称が多い気がします。モアイ像で有名なイースター島も、発見されたのはイースターの日でした。

リオの街はこんなに大都会です

リオは「世界三大美港」ってご存知?

リオは、なぜ世界遺産に登録されたのでしょうか。この地は発見された当初は小さな港町にすぎなかったのですが、リオから内陸に入った地域で金鉱が発見されたことから、大きく運命が変わっていくのです。リオは金の積出港として繁栄していきます。そして18世紀後半には、ポルトガル・ブラジル連合王国の首都となったのです。

リオは、急峻(きゅうしゅん)な山とコパカバーナに代表される海岸に挟まれた独特の地形をもっていますが、この繁栄下で独特の都市景観が築かれていくことになります。世界三大美港に数えられ、奇岩が連なる紺碧の海、そして白砂の海岸線が織り成す大都市へと成長していきました。

1950年代にはイパネマなどの海岸地区に住む中産階級の学生やミュージシャンたちによって、ボサノヴァという新しいスタイルの音楽が登場します。独特の景観が音楽家や芸術家たちにインスピレーションを与え、様々な都市文化を生み出したのです。こうしたと人と自然の営みが共存・融合した景観が評価されて、ついに2012年、世界遺産に登録されました。

高台から望んだ湾。狭い平地にビルがひしめきあっています

日本は1次リーグではリオでの試合はありませんが、C組1位通過となれば日本時間で29日にリオでの試合となります。各試合の日本でのテレビ放送時間から深夜から早朝にかけてとなり、当分寝不足の日々が続くことになりそうです。

筆者の場合、世界遺産委員会の審議結果も当然押さえなければならないので(それが仕事ですから)、開催国・カタールと日本の時差を調べたところ、日本の方が6時間進んでいることが分かりました。……ということは、日本時間では夕方から深夜になるのかな? いったいいつ寝たらいいんでしょう。なんだかよく分からなくなってきましたが、ともかく、どちらもいい結果が出ることを祈りましょう!

世界遺産データ:リオ・デ・ジャネイロ:山と海に囲まれたカリオカの景観(文化遺産)
ブラジル連邦共和国 2012年登録。ポルトガル・ブラジル連合王国以降、1960年にブラジリアに遷都されるまで首都であった。リオを代表するキリスト像は、ブラジル独立100周年を記念して建設されたもので、コルコバードの丘の上にたつ。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて