みなさん、GWはいかがお過ごしでしたか? 筆者は九州に旅に出ましたが、その時にダン・ブラウンの『インフェルノ』の電子書籍版を携えていきました。ハードカバーの上下巻であれば、とても持ち歩く気にはなれませんが、そのハードルを下げた電子書籍ってすごいとしみじみと感じてしまいました。

『ダ・ヴィンチ・コード』で衝撃的な登場をしたパリ(フランス)のルーヴル美術館

ところで、ダン・ブラウンって誰? とお思いの方、『ダ・ヴィンチ・コード』の作者です、といえばすぐにピンとくるかと思います。ロバート・ラングドンというハーバード大学の宗教象徴学教授が活躍するシリーズで、トム・ハンクスにより映画化もされていますね。『インフェルノ』はシリーズ4作目となるのですが、読み進めるうちに「もしかしてダン・ブラウンは世界遺産が好きなのかしら」と思い至りました。

ラングドンシリーズの舞台の共通点って?

『インフェルノ』の舞台はフィレンツェです。『フィレンツェの歴史地区』として世界遺産に登録されています。筆者はまだ出だしまでしか読んでいませんが、後々ヴェネツィアに舞台が移るようで、もちろんこちらも『ヴェネツィアとその潟』として登録されています。

『インフェルノ』はフィレンツェとヴェネツィアが舞台。フィレンツェといえばドゥオーモかと。ここからルネサンスが始まりました

このシリーズで一貫している設定は、ラングドン教授が国家レベルの陰謀やら事件やらに巻き込まれて、舞台となる都市を美女と一緒に縦横無尽に駆け巡る、というものです。彼は大学の一教員にすぎないのに、なぜか毎回国家機密を知る羽目になり、敵らしき人物に追い詰められることになるのですが、専門とする宗教象徴学の深い知識によって謎を解き明かしていきます。

その舞台の多くが世界遺産なのです。ではこれまでの3作品の舞台を挙げてみましょう。カッコ()内は世界遺産の登録名です。

『天使と悪魔』─ヴァティカン(『ヴァティカン市国』)、ローマ(『ローマの歴史地区』)
『ダ・ヴィンチ・コード』─パリ(『パリのセーヌ河岸』)
『ロスト・シンボル』─ワシントンD.C.

ワシントンD.C.は世界遺産ではありません。とはいえ、4作目がフィレンツェ・ヴェネツィアであり、また世界遺産に戻ったことを考えると、世界遺産率が非常に高いといえるかと思います。それは、ラングドン教授が専門としている宗教象徴学が、主にキリスト教にまつわる建造物や絵画、彫刻などの芸術作品に隠された象徴・シンボルを読み解くものであることから考えると、自然な流れといえるかもしれません。

というのも世界遺産には、ヨーロッパのキリスト教関連の遺産がかなり多く含まれるからです。キリスト教世界をゆるがす問題が勃発するところには、教授が登場する必然性があるということであり、カトリック世界の中心であるヴァティカンやローマは、まさに教授にとってふさわしい舞台といえるでしょう。

『インフェルノ』のもうひとつの舞台。ヴェネツィアと言えば、やっぱり運河ですよね

次回作の舞台はやっぱり世界遺産の地?

筆者も世界遺産の講義で教壇に立つことがありますが、教授のように専門的な知識があれば、どれだけヨーロッパ世界やキリスト教関連の世界遺産への理解が深まることだろう、と思うことがあります。

そしてレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ボッティチェルリなどの絵画も、今よりも何倍も豊かに味わうことができるだろうに、と少々ひがんでみたりもするのです。さらに筆者は「フリーメイソン」「イルミナティ」といった都市伝説話に目がないので(もちろん「やりすぎ都市伝説」は欠かせません)、すっかりラングドンシリーズの中毒になってしまいました。

『天使と悪魔』に登場したローマ(イタリア)のパンテオン。古代ローマの素晴らしい建築技術が見られます

『インフェルノ』は読み始めたばかりなので、まだこれから幾晩かは楽しめそうです。そして大胆にも次回作の舞台の予想をしてみたいと思います! バルセロナ、なんてどうでしょう。というのも、サグラダ・ファミリアの設計者ガウディは、フリーメイソンだという説があるのです。この聖堂も『アントニ・ガウディの作品群』として世界遺産に登録されています。

あるいは、エジプトや中南米の古代遺跡は? 一見キリスト教とは関係なさそうですが、ダン・ブラウンの手にかかれば、ピラミッドだってマチュ・ピチュだって、舞台として成立しそうな気がします。そして、自分の知識が役立たないといって嘆くラングドン教授もちょっと見てみたい気がするのです。──とはいえ、舞台はどうあれ美女と謎を解決してしまうんでしょうけど。

筆者プロフィール : 本田 陽子(ほんだ ようこ)

「世界遺産検定」を主催する世界遺産アカデミーの研究員。大学卒業後、大手広告代理店、情報通信社の大連(中国)事務所等を経て現職。全国各地の大学や企業、生涯学習センターなどで世界遺産の講義を行っている。

世界遺産検定とは?

世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催:世界遺産アカデミー
開催月:3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地:全国主要都市
受検料:4級2,670円、3級3,900円、2級5,040円、1級9,250円、マイスター1万8,510円、3・4級併願6,060円、2・3級併願8,220円
解答形式:マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法:インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて