藤井健太郎氏

――次の令和時代に向けて、最近注目しているテレビのつくり手はいますか?

土屋:僕は会ったこともないんだけど、懲りずに問題を起こしているという意味で、ガンバレ、藤井健太郎(TBS『水曜日のダウンタウン』演出)って(笑)

小松:そうですね。僕も激しく共感します(笑)。土屋さんに準じる激しさを感じますよね。

土屋:TBSの偉い人たちに、あんまりキツく当たらないでほしいというのを伝えたいなって。

小松:アハハハハ(笑)。でも実際、守られてますよね。TBSっていい会社だなって。土屋さんも日本テレビさんに相当守ってもらったんですよね?

土屋:そうそうそう。だから片一方で怒られながら、片一方では守ってもらえた。じゃないと生きていけないですよ。それはやっぱりテレビの中の何を守るかってこと。間口として広くいてほしいってこと。

古立善之氏

小松:あと僕は、日テレの古立(善之)さんがこの先、テリー(伊藤)さん、土屋さんから始まった物語をどうこの先つなげていくのかは見ていたいと思いますね。編集とか見せ方の感覚が新しい世代だなって思いますね。

土屋:古立は『イッテQ』もあるけど『月曜から夜ふかし』を両輪としてやれている幸せがあると思いますね。

小松:そうですよねえ。この間、“やらせ問題”もありましたけど、ウソがよくないのは大前提として、それで傷つく人がどれくらいいたのかなって思うんですよ。今はもちろんいけないんだけど、テレビって元々、そのへんあやふやにしてきたと思うんですよ。「本当」って言わなきゃ良かったのにって思うんだけど(笑)、逆に言うと本当だって言わないと許されない空気を作っちゃったのも今の時代だし、僕らバラエティをつくっている人間がどんどん現実の方にすり寄っていったからだと思うんです。「これは本当なんですよ」っていうベースでつくっていってしまった。タレントさんのギャラまで番組の中でしゃべっている時代ですから。それが本当だから「えー!」ってなるっていうのを利用しながらつくっている。現実に擦り寄りすぎたからこういうふうになってしまったっていう反省をしなきゃいけないと思う。見る側もやる側もつくる側も、お互いにもういっぺん信頼関係を再構築して、向き合えるようになると、もう1回面白いものがたくさんつくれるんじゃないかと思いますね。そういう文脈の中で、古立さんとかはエンタテイメントのギリギリの一線を作っていける人だと思う。そこの先にどういったものがあるのか切り拓いていってほしいですね。

■令和時代の小松純也&土屋敏男は…

――小松さんご自身も4月からフリーとなって、ますますご活躍されますよね。

小松:はい。さまざまな方々と仕事をさせていただくく機会が増えて、そういう流れになりました。こんなお話をしていると自分も最早ベテランになってしまったかとも思いますが、自分の持ち味は素人っぽさだと思っていますので、今後もできるだけやったことのないことをやり続けられればと思います。

――土屋さんは、今後どんな活動をされていくんですか?

土屋:4月15日に発表するんですけど、7月から大阪で2カ月月半、ライブエンタテインメントの企画・演出をやります。最新のテクノロジーを使って「本当に見たことのない舞台」を作ります。今後もとにかく「見たことないもの」を作り続けたい。それはもちろんテレビとかに限らず。そして日本のエンタテインメントを世界に出す突破口を作って若い人につなげたいです。

●土屋敏男
1956年生まれ、静岡県出身。一橋大学卒業後、79年日本テレビ放送網に入社し、『酒井広のうわさのスタジオ』『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』『進め!電波少年』『ウンナン世界征服宣言』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』などを制作。編成部長、第2日本テレビ事業本部ED、編成局専門局長、ゼネラルプロデューサーなどを歴任し、日テレラボ シニアクリエイター(現任)。

●小松純也
1967年生まれ、兵庫県出身。京都大学卒業後、90年フジテレビジョンに入社し、『ダウンタウンのごっつええ感じ』『笑う犬の生活』『SMAP×SMAP』『平成日本の夜ふけ』『FNS27時間テレビ「さんま・中居の今夜も眠れない」』などを制作。編成部、バラエティ制作センター部長などを歴任した後、15年から共同テレビジョンに出向。プロデューサーとして『チコちゃんに叱られる!』『人生最高レストラン』『HITOSHI MATSUMOTO presents ドキュメンタル』『JIMMY~アホみたいな本当の話~』などを担当する。19年3月末で出向元のフジテレビを退社し、フリーのプロデューサーに。

■著者プロフィール
戸部田誠(てれびのスキマ)
ライター。著書に『タモリ学』『1989年のテレビっ子』『笑福亭鶴瓶論』『全部やれ。』などがある。最新刊は『売れるには理由がある』。