「記憶」は、コンピュータが最も得意とする能力です。ネットを使えば、膨大な「記憶」にアクセスすることができます。それでは、人間の「記憶」をネットで有効に使うためにはどうすればよいのでしょうか。今回は、「記憶」と「検索」についてのライフハックスを紹介します。

よくある問題:固有名詞が分からない!

このコラムでも、似たようなことを何度か述べてきましたが、Googleのようなサービスが無料で提供される時代にあって、とりあえず覚えておきたい情報とは「固有名詞」です。 固有名詞さえ分かれば、それを検索窓に打ち込むだけです。その固有名詞が分からないから、固有名詞を含むであろうページを探すべく、「ひっかかりそうなキーワード」を考案する羽目になっているのです。

この連載での、「 ぼんやりした記憶を頼りに検索する」でのテーマは、まさにこれでした。このときには、「固有名詞が分からなくても、リファレンスサイトから探り当てることができる」という内容で書きましたが、そもそも「ミ・ファミリア」という映画のタイトルさえ覚えておけば、何も問題はない話なのです。  にもかかわらず、

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などというキーワードを考案して、ああでもないこうでもないと試行錯誤した結果タイトルに行き着くというのは、それはそれで必要な試みだとは思いますが、無駄が多いといえば無駄の多いやり方です。もちろん、将来には「概念検索」という検索方式が実現するかもしれません。しかし現段階では、固有名詞を検索する方がはるかに話が早いのです。

いうまでもなく、これは昔も同じでした。百科事典というものが存在した以後の時代は、固有名詞が分かれば、何とか調べのつくことが多くなっていたでしょう。それでも、インターネットとGoogleがある今とは、比べものにもなりません。そもそも百科事典ですら、ポケットサイズの電子辞書におさまってしまっているのです。

ライフハックス:日本語の単語帳を作る

つまり、覚えておくべきは固有名詞なのです。ところが私は、この固有名詞というものを覚えておくのがとても苦手です。おそらくはちゃんと読めていない。あるいは、いいかげんに読んでしまうのです。日本語にもかかわらず、あるいは日本語だからかもしれません。

 最近になって、テレビを見ていても芸能人の名前が覚えられないため、会話がうまく弾まない原因になっていることが分かりました。また、地図を見ても建物や地名が記憶に残らないために、道に迷いやすいことも分かりました。空間記憶のテストをアメリカで受けたとき、平均点を下回っていましたから、風景を頼りにしても迷子になりやすくはあるのですが、何にせよ都合が悪いことは確かです。

心理学には各種「記憶術」が用意されているので、あれこれ試みたりもしているのですが、今ひとつ効果が上がりません。一定の効果が上がるのは、「位置法」という道順にかこつけていろいろな物事を記憶に残すやり方ですが、けっこう時間がかかるし、疲れるのです。しかし、自分の記憶力のなさは、インターネットで調べ物ができる時代であっても不便だし、日常生活でも不便なので、最近一念発起して、奇怪な試みを開始しています。日本語の単語帳を作るのです。

これは、ベストセラー『村上式シンプル英語勉強法』(村上憲郎著、ダイヤモンド社)の英単語を覚えるやり方に触発されて実行中なのですが、要するに、ただひたすら単語の意味を毎日大量に確認する、というものです。ただそれだけです。

私は日本語の単語帳を、マイクロソフトのデータベースソフト、アクセスで自作しました。ここにどんどん単語を増やしていって、毎朝上から順にざーっと読んでいくのです。ただそれだけです。入力は、覚えたい固有名詞に出くわしたら、その都度です。外出中であれば、携帯からメールを送り、後ほどアクセスに加えます。やる前は馬鹿げた方法だと思っていたのですが、やってみると意外に頭に残るので、便利で楽しいです。つい先日も、渋谷駅の「宮益坂」という固有名詞を覚えていたため、道に迷わずに済みました。

アクセスで作成した日本語の単語帳

まとめ

このデータベースで管理しようと思っているのは、固有名詞であれば、何でもです。本のタイトル、著者名、地名、製品名、人名、会社名、曲のタイトル等々。それを毎朝眺めて、ちょっと意味が不明だったら、すかさずGoogleで調べて「あ、そうだった!」と確認します。まさに単語帳の使い方です。

これは自作なので、ちょっとした仕掛けが施してあります。超整理法方式で、並べ変わるのです。チェックボックスにチェックを入れると、自動的に日時が現在日時に更新され、最上位に上がってきます。つまり、記憶があやふやであったり、そのときに確実に覚えておきたいものを、抽出できる仕組みになっています。

また、読みのふりがなも自動入力です。私自身の経験で、英語でもそうですが、覚えられない単語というものは、多くが読めない単語なのです。先ほどあげた宮益坂ですが、私は長いこと、いいかげんに読んでいました。「みやえきさか」などです。そういう勝手な読み方を頭の中で繰り返していると、友人や駅員さんが「みやますさか」と口にしたとき、頭がスルーしていたのでしょう。そのため、単語に脳が反応する回数が、自然と減っていたのだと思います。そういうことが私の場合、たぶん多い方なので、それを矯正する意味でも、こうした単語帳を自作して、「固有名詞で検索」を試みている次第です。