新型コロナウイルスの影響で、GIGAスクール構想が前倒しで進められる様相だ。子供の学習環境において、1人1端末で高速なネットワークをストレスなく使えるようになることには賛成だし、進めるべきと思う。

しかし、GIGAスクールを進めるにあたって課題は山積だ。何事も始める時はいろいろなことが起こるので仕方ないが、GIGAスクール構想に関して言えば、先生が教室で生徒を教えるという基本的な構造がなくなるので、大きな改革になる可能性もある。

例えば、スタジオで優秀な先生1人が全国の子供たちを教え、クラスごとに教科担任がいて、中央の優秀な先生の指導を支援するような教育スタイルになるなど、教育が大きく進化するかもしれないし、結局、教室でパソコンを持った生徒に対して先生が教えるという、パソコンとネットを提供しただけになるかもしれない。後者はとてもつまらない結果だと思う。

はたまた、新型コロナに起因する前倒しによって、想定以上にバタついてしまい、ネットワークやパソコンすら、快適に使えないことになるような気もする。そして、GIGAスクール構想の前倒しにより、教育格差や子供たちの生涯賃金の格差がますます広がるように感じている。

  • GIGA = Global and Innovation Gateway for All。文部科学省のホームページより

    GIGA = Global and Innovation Gateway for All。文部科学省のホームページより

高学歴は教育投資額に比例する

さて、前置きが長くなってしまったが、本題に入る。筆者はトンビが鷹を生んだ典型的な親である。子供2人とも日本一を経験し、娘は国内トップクラスの美大に進学し、息子は日本屈指の偏差値の高校に進学している。その理由は、筆者や妻の遺伝子が良かったというわけではなく、日本トップクラスの学校に進学する王道的な学習を幼少時から行ったが上の結果と言える(もちろん、妻の驚異的な指導があったのは言うまでもない)。

有名な学校に進学を志望し、受験の2年前ごろから勉強する場合、かなり詰め込まなければいけない。しかし、小さな頃から有名な先生の下で勉強をしていれば、それほど無理しなくても、かなりいい成績が取れるのだ。事実、子供たちの学友は、全国模試で1桁台が多かった。

一言で言えば、早くからお金をかけて、いい先生に学ばせたことによって、子供がいい成績を取れるようになったということだ。人より早く良い学習環境で学んだから成績が良い、それゆえ、勉強が好きになり、勉強するという好循環が生まれた。子供の成長においては環境が重要だと思う。このロジックが正しい場合、ある程度の確率で「高学歴は教育投資額に比例する」と言える。

高学歴神話は崩壊したとはいえ、やはり有利

良い大学を卒業すれば、将来が約束されるという学歴神話は既に崩壊している。高学歴でなくても成功しやすい時代にもなった。そして、学歴に関係なく成功している人も一定数存在している。しかし、いい大学で学ぶ内容と、知り合った友達のコネクションは社会人になっても生きていると思う。やはり、良い学校で成長できて良い友達ができることはアドバンテージだろう。

大雑把な指標であるが、学歴別生涯賃金は以下である。

学歴 男性 女性
中学校卒業 1億9400万円 1億3750万円
高校卒業 2億730万円 1億4640万円
高専短大卒 2億1450万円 1億7530万円
大学大学院卒 2億7000万円 2億1670万円

※ 「ユースフル労働統計-労働統計加工指標集-2017」より引用。

あくまで総じてということだが、高学歴が稼いでいるという結果になっている。そして、高学歴な子供を育成するには幼稚園から大学までオール公立で1300万円、オール私立で2500万円の学費がかかるのだ(文部科学省「子供の学習費調査(平成30年度)」)。 この金額以外に塾代などもかかる。高学歴な子供を育てるにはお金がかかるのだ。お金はないと払えないので、高学歴の親が養育予算を持ち、その子供が高学歴になる連鎖が発生しやすいというわけだ。

GIGAスクール構想により発生する学習環境の格差

GIGAスクール構想で実現される教育環境は、本当に快適なパソコンで快適なネットワークなのか、どうしても疑問が残ってしまう。全国の子供たちが動画で学ぶので、 膨大なトラフィックとコンピュータの処理が発生するはずだ。結果的に、大半が動作がもっさりした学習環境が標準になってしまうような気がする。しかし、子供学習環境を支援できる予算がある家庭の場合、高速なPCやネットワーク環境を用意できるので、予算がある子供たちは学習もサクサクできるはずだ。ここでも家庭の予算規模による格差が発生しやすい。

また、学校の授業はできるだけ、取り残しが生まれないような設計になっているので、成績上位者にとっては退屈である。お受験を経験した親御さんなら経験したことがあるかもしれないが、学校の授業が簡単すぎであるため、志望校の合格を目指すには学校に通わせず、レベルが高い塾で学ばせたいと思う親もいるくらいだ。

GIGAスクール構想が実現すると、学校における拘束時間が減るため、余った時間を優秀な塾の先生に学ばせることができ、GIGAスクールによる教育格差はますます進むはずだ。

GIGAスクール実施に備え、親がするべき準備

こうしたひずみを解決する方法として、親のITリテラシーを上げることや高速なネットワーク環境を用意することなど、いろいろあるだろうが、一番重要なことは収入だと思う。

サラリーマンの方は、収入をいきなり上げるのは難しいだろうが、副業することで、将来的な学費の備えができるはずだ。子供にどこまで学習させるかは、家庭によって異なるだろうし、否定するつもりもない。しかし、子供が高学歴な進路に進みたいと言い出した時、子供に環境を提供できるくらいの年収はあったほうがいいのではないだろうか。

毎月10万円の副業でも学費として支えになるだろう。副業で稼げるようになっておくと、将来万が一、会社を去らなければいけなくなった際に、副業を拡大した起業もできるので、会社が許可している場合はお勧めである(近い将来、大半の会社が副業を認めないと経営が厳しくなるはずなので、会社が許可していなくても副業準備をしても損はないはずだ。これについては機会があればコラムで書いてみたい)。

実は、筆者はサラリーマン時代に転職をし過ぎて、年収を落としてしまい、私立に通っていた子供が私立の学校から公立に転校するか、起業して成功するかの選択を迫られた経験を持っている。当時は、20代から会社に内緒で行っていた副業を拡大して起業し、子供は転校しなくて済んだ。

当時の模様は、マイナビニュースのコラム「伝説的な給与を獲得後に没落、でも起業で復活した男の話」で紹介している。興味がある方は参考にしてほしい。

著者プロフィール

吉政忠志


業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。