今後の予定

G450Cでは、2016年末までに、すべての450mmプロセス装置の評価および非競争領域のプロセス開発を終えることにしていたが、2017年第1四半期末(2017年3月)まで延期することでメンバーカンパニーと合意が取れたという。今後は、450mmウェハを採用することで、ダイ(チップ)あたりのコストが、300mm比で3割減(目標値)となるようプロセス・装置の改善につとめる。G450Cでは、450mm装置評価・プロセス開発完了(2017年第1四半期)から、メンバーカンパニーの量産開始まで1.5~2年かかるとみている。

実際の450mmファブの稼働はいつ?

以上がG450Cの最新進捗報告のすべてである。450mmに関して、多くの人々の関心は、「一体、450mmウェハはいつ生産に導入されるのか?」ということだが、これに対してG450Cの回答は、「それはメンバーカンパ二―が決めることだから彼らに聞いてほしい。G450Cに聞かれても答えられない」としている。

かつて450mm化に一番熱心だったのはIntelだが、現在、同社はそれどころではない状況に置かれている。2013年末までに量産開始するはずだった14nm MPUの歩留まりが長期低迷を続け、2015年末までに量産開始するはずだった10nm製品についてはめども立っておらず、2017年以降になるのではないかと噂されている。すでにムーアの法則は終焉を迎えたのではないかとの声が日増しに強まってきているが、Intelはその否定に躍起だ。Gordon Moore氏は同社の創業者の1人であり、同社はムーアの法則に沿って成長してきたから、ムーアの法則を死守し、さらに微細化を進めようと躍起になっている。

同社のモバイルビジネスはシェア確保できずに大赤字、PCビジネスはジリ貧、頼りのデータセンター向けビジネスの聖域をAlteraに侵攻され、ついに同社を高値で買収せざるを得なくなった(もしもいやがるAlteraが最終的に買収に応じなければ敵対的買収をかける予定だったと言われている)。PC不振で稼働率の落ちた製造ラインをファウンドリビジネスで埋める予定もままならない。450mm化は、既存の300mmラインがあふれるめどがたたぬかぎり、でてこない話なので、当分、450mm化の話は出てきそうにない。歩留まりが確保できない16/14nm量産にTSMCもSamsungもてこずっており、一方では10nm開発競争も始まっており、450mm化まで手が回らない状況が今後とも当分続きそうだ。

IoTが本格化して、半導体大量消費の応用分野が急に出現すれば、450mm化のきっかけになろうが、それは誰にもまだ予測がつかない。ベルギーの独立系半導体研究機関imecは2014年6月より450mm-readyクリーンルーム(450mm対応装置を設置できるように天井高や床荷重を設計されたクリーンルームだが、当面は7~5nm対応300mm装置を設置し、いつでも450mm化できるように準備する。いずれは「450mm R&D パイロットライン」となる予定)を建設中である(図14)。インテルはすでにアリゾナに450mm-compatibleファブ(imecの450mm-readyと同義)を建設済みだ。TSMCは竹南(本社工場のある新竹の南)に450mm試作ファブ建設用地を確保、Samsungは平澤(ピョンテク:ソウルの南)に広大な半導体工場群(Samsung Semiconductor Cluster)用地(283万m2、東京ドーム60個分)を確保している。

図14 2015年6月に撮影されたベルギーimecの450mm-readyクリーンルーム棟("450mm R&Dパイロットライン")の建設風景(左側の白い壁の建物は既存クリーンルームで、これを4000m2拡張する形で工事中) (出所:imec)

G450Cの期待を込めた予測では、上述したように、全装置評価終了後1.5~2年後の2010年代末までに450mmファブ稼働は(技術的には)可能になると言うが、はたしてそれまでに450mmウェハ採用を名乗りでる半導体企業が現れるだろうか。