FXの大相場の数々を目撃してきたマネックス証券、マネックス・ユニバーシティ FX学長の吉田恒氏がお届けする「そうだったのか! FX大相場の真実」。為替相場分析の専門家がFXの歴史を分かりやすく謎解きます。今回は「トランプ『ラリー(急騰)』」について紹介します。

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2016年11月9日、米大統領選挙の開票が進み、トランプ勝利の可能性が高まることを見ながら、日経平均は900円以上の大暴落となりました。しかしその後、お膝元の米国の株式市場が始まると、株価は上昇に向かい、NYダウは結局250ドル以上と比較的大きく上昇して引けたのです。

予想通りの「トランプ暴落」は、結局日本などアジア市場だけとなり、本家本元の米国株式市場は、予想外の株高となったのです。

これをどう解説するのか。たとえば、ある解説では、「選挙期間中は滅茶苦茶な言動が目立ったトランプだったが、勝利決定後に登場した姿は意外にも威厳に満ちて堂々としていたことから、金融市場も評価したのだろう」といったコメント。とってもとっても、後講釈ぶりがプンプンしていましたね。

もう一つ多かったのが「トランプ減税」を理由とする見方。トランプは、選挙期間中、確かに大型減税を公約していました。この減税を中心としたトランプノミクス(トランプ大統領の経済政策)は、景気回復、金利上昇、株高をもたらすものであり、金融市場はトランプ勝利決定直後からそれを織り込む動きになったといった解説です。

でもそれなら、「先に言ってくれよ!」ですよね。「トランプ暴落」予想は何だったんだとなるのが普通じゃないですか。

相場の急転換にどう対処したか

「じゃあ、お前はどうだったんだ?」と思うでしょう。私は、今回述べてきたようなことを当時もずっと、時々刻々と考え、そしてレポートやセミナーで発信していました。

さすがに「まさトラ」、まさかトランプが本当に大統領選挙で勝ってしまうかもしれないとなる中では、直後の「トランプ暴落」は不可避だろうと、「あ~あ」という思いでしたが、円実効相場の動きなどから、「行き過ぎた悲観論」になっている可能性があると思っており、そして米景気が急回復し、それは原油相場の急回復などの影響であり、そうであれば株安も限定的にとどまり、株高・円安に変わっていくだろうと考え、そう述べていました(本当です!)。

ただ、あんなにも早く、つまり「トランプ暴落」はほとんど半日で終わり、「トランプ・ラリー」に急転したのは、さすがに予想以上であり、驚いたというのが正直なところでした。ただし、これまで述べてきたように、「暴落はない」「メイン・シナリオは株高・円安」と考えていたので、頭の切り替えも比較的簡単でした。

そして、トランプ勝利決定から半日もしないうちに、メイン・シナリオの株高・円安の可能性が出てきたことで、それが一気に大きく進む可能性があるということも、すぐに頭に浮かんでいました。4年に一度の米大統領選挙後の特徴的な相場の動き、「アノマリー」を、私はとてもよく知っていたからです。

  • 米ドル/円の日足チャート(2016年9~12月)(出所:マネックストレーダーFX)

    米ドル/円の日足チャート(2016年9~12月)(出所:マネックストレーダーFX)