英語学習に欠かせないもの - "Goal Setting"

気がつくと11月…今年も残り2カ月ですよ。早いですねぇ、月日が過ぎるのは。ところが、英語をマスターするスピードは月日が過ぎるペースについていけず、仕事は忙しいし、英語以外にやりたいことはたくさんあるし…いつしかすっかり"procrastinator(やるべきことをやらずにぐずぐずしている人)"になっているのではないでしょうか。高校受験、大学受験のために頑張っていたあのころと同じように、がしがし勉強すれば確実にできるようになるでしょうけれど、そんなことができる人は少ないはず。ということで今回は、効率的に英語を勉強するヒントについて話をしましょう。

効率的に勉強する方法、いわゆる"study strategies"や"study skills"といった話題は米国ではおなじみです。特に、勉強がとてつもなく厳しいカレッジでは無料のセミナーを開催したり、Webサイトに情報を掲載したりするなど、学生がより高いgradesを獲得できるように支援しています。日本では"勉強"というと、かつて経験した受験勉強のように机にかじりついてがむしゃらに頑張るイメージですが、これが逆に英語の勉強が続かない原因になっているかもしれませんので、米国流の方法を試してみるのもいいかもしれません。

勉強をする上でとても重要なのは"goal setting"、つまり目標を作ることです。勉強を続けるにはモチベーションを維持しつづけなければならないのですが、そのためには目標を設け、その達成を目指して頑張るのがいちばんです。ここで注意したいのは、目標とは「△△大学合格」のような大きなものではなく、短い期間で達成可能な目標を設定することです。Goalsというのは成功のための"stepping stones"と言われているように、ひとつひとつを確実にこなしてステップアップしていくために行うのがgoal settingなんです。たとえば、「1週間後までに新しい単語を10覚えて使えるようにする」という目標を立てます。

目標と達成のための期間を設定しただけではまだ不十分です。その目標を期間内に達成するにはどうすればいいか、障害になりそうなのは何か、そして、目標を達成すると自分にとってどのようなメリットがあるのかを紙に書き出します。頭の中で考えているだけでは忘れてしまう(もしくは忘れたことにしてしまう)かもしれないので、ぜひ紙に書き出しましょう。

ここまでできたら、「1週間で10単語だから、毎日2つずつ覚えて最後の2日は復習をする」といった計画を立てて実行です。目標期間が過ぎたら、必ず振り返ってみて目標達成度を評価し、次の目標を立てます。この繰り返しを2カ月、3カ月と続けてみてください。なんとなく英単語をたくさん覚えようと努力するよりも、張り合いがあって良いと思います。

記憶のメカニズムを知って効率的に覚える

Study strategiesでは目標設定ばかりではなく、記憶のメカニズムを知って日々の勉強に役立てる話題も頻繁に出てきます。よく聞くのは、"the multistore model of memory"という記憶のメカニズムです。人の記憶はsensory memory(視覚、聴覚などの刺激を覚えている記憶)、short-term memory(STM)、long-term memory(LTM)の順に蓄積されていくのですが、覚えていられる時間はそれぞれ、2秒、30秒、無期限となっています。つまり、視覚などから採り入れた新しい単語の記憶は2秒以内に、最終的な記憶(long-term memory)のための"waiting room"であるshort-term memoryに入れ、繰り返して単語を眺めるなどの復習を行うことによって30秒以内に他の単語と関連付けて、ソートした状態でlong-term memoryに入れないと、「単語を覚えた」ことにならないのです。辞書を引いて意味を調べただけではだめで、単語のスペルを思い浮かべたり、発音してみたりしないと効果は上がりません。

複数の単語を一度に覚えようとする場合には、"the serial position effect"とよばれる記憶のメカニズムも知っておくといいでしょう。「最初と最後はよく憶えているけれど、途中はあまり憶えていない」という現象は日頃経験しているのではないでしょうか。たとえば、3つの単語を一度に憶えようとすると、2つめがなかなか憶えられないので、2つめを重点的に復習するようにします。

うまくlong-term memoryに記憶された単語を使う段階になると、今度は"recognition"と"recall"という、2種類の記憶呼び起こしの違いが影響してきます。変換された候補の中から正しい漢字を1つ選ぶ(recognition)ことはできても、何も見ずに書く(recall)ことは難しいのではないでしょうか。リーディングやリスニングではわかっても、ライティングやスピーキングで使える単語が極端に少ないのはrecognitionとrecallの違いです。圧倒的にrecognitionの方が簡単だというのはネイティブスピーカでも同じです。英単語をrecallできるようにするためには、その単語を使って自分なりの文章を作るようにすると効果的です。理解だけで終わらず、使えるようにするとrecallもできるようになって、ライティングやスピーキングが上達するのではないでしょうか。

ほかにもstudy strategiesには、精神的にも物理的にも勉強に集中できる環境を作る、決まった時間/場所で続ける、誘惑に対して"no"と言うtips、さらに、リーディングについてはSQ3R(Survey, Question, Read, Recite, Review)という手法などもあります。

米国ではおなじみのstudy strategiesやstudy skillsについて代表的なものを取り上げましたが、いかがでしょうか。さっそく試してみてください。