贈与税の基本的な形式には「暦年課税」と「相続時精算課税制度」があることをこれまでに何度か紹介してきました。今回はこの2つの形式について考えてみましょう。

最初に復習の意味合いで、連載3回目で解説した図に少し説明を加えましたので、こちらを見ながら理解を深めていってください。

贈与には「された」という自覚が必要

その年に受け取った贈与額の合計が110万円までなら、贈与税の基礎控除額として非課税です。誰から贈与を受けても、毎年110万円以内であれば贈与税はかかりません。ただし以前にも述べた通り、継続して将来の贈与を約束してはならない点は注意が必要です。

連載2回目で取り上げた例で言えば、「住宅ローンの返済の支援のために親から毎年110万円ずつ10年間支援を受ける」と親と約束した場合、1,100万円の贈与を受けたとみなされ、高額の贈与税を支払わなくてはなりません。

「毎年額を変える」「少しだけ贈与税を支払う」などが対策として浸透しているようですが、実態が1,100万円の贈与であれば、税務署の判断で贈与税を徴収される可能性はあります。

  • 贈与税の基礎控除の考え方

    贈与税の基礎控除の考え方

では極端な仮定ですが、0歳から15歳までさまざま人から「約束せずにたまたま」毎年110万円の贈与を受けたとしたら、結果的に1,650万円を全額得られるのでしょうか。高校、大学の学費としては、特別な学科を除けば十分な金額です。

実際の事例があったかどうかはわかりませんが、基本的に贈与は「贈与を受けた」という自覚が必要なようです。赤ちゃんにその自覚は無理ですので、0歳からというわけにはいかないでしょう。諸外国の中には、贈与税は贈与した側が支払う国もありますが、日本は受贈者側が支払うようになっている点も考慮に入れる必要があります。

この「受け取ったという意識」は、法律面だけでなく、贈与された資産を有意義に活用するうえでも、とても大切なことなのです。