全国津々浦々にある交通信号機。専門的な装置では、一番身近なものではないでしょうか? 今回は、信号機にまつわるちょっと科学な、そうでないようなお話をいたします。

日本全国に20万基あると言われる「交通信号機」

信号というのは、何かを伝えるための合図です。「脳からの信号が神経で伝わる」とか「モールス信号」とか、非常にひろ―く使われる言葉ですが、たぶん、ほとんどの人は「しんごう」といわれれば、道路の交差点にある交通信号機を思い浮かべるのではないでしょうか? どーですか? ということで、このあとは交通信号機の話でございます。面倒なので「信号機」だけで通しますよ。

信号機は、全国津々浦々に20万もあり、そんなもの知らないって人は日本人ではまあいないと思います。都会で自動車を走らせると、信号機のあまりの多さにイライラします。でも、地区によっては、信号機ってそれほど多くはないのですよ。筆者は自動車がない家に生まれ育ち、微妙に田舎だったので、信号機で一番近いのは、鉄道の信号だったりしました。夜にうろうろできるお年頃になって、深夜の黄色と赤色の点滅信号を見たときは、どひゃーっとびっくりした次第です… あんまり共感してもらえないかなー。

さて、信号機ですけれども、意外と知らないことが多いものです。

信号機の消費電力は…

まずは、よくあるクイズ。「縦に3つ電球があるタイプの信号機、一番上は何色ですか? 」…わかりますかね? 答えですけど、道路の信号機では一般に「赤」、鉄道では「青」なのですね。ただ、鉄道では場合によっては色々なタイプがあります。それぞれ考え方は同じで、一番目立たせたい、わかってもらいたい合図を上(あるいは右)にしているのです。道路は基本「進行」鉄道は基本「停止」であるという考えがあるようです。

では次に「LEDでない電球式の信号機。使っている電球は何ワットでしょうか? 」

…はい、もうおわかりですね。タイトルになっているので、70ワットが答えです。意外と大したことないですね。赤、青、黄色と3つ電球が必要なので合計では210ワットになりそうですが、同時につくことはないので70ワットが消費電力になります。

これがLED式だと、15ワットなんだそうです。消費電力は5分の1で大幅な節電になりますね。また、電球式だとフィルターが必要になり、昼間だと太陽光線で全部の信号が点いたように感じる危険もあるのですが、LEDはその心配もないのもよい点とのことです。

なお、使用電力に対する発光の効率はというと、電球式は1%ちょい、LEDは6%と、9割以上が無駄になっているのは同じなんですね、これが。それでも、5%の差は大きくて、雪国などでは、雪で信号がおおわれるのを、電球式だとふせげるけれども、LED式だとダメで、電球式を維持するか、消雪のためにヒーターを別につけるかという話になるそうです。LEDの意外な落とし穴でございます。これがさらに効率があげられれば、太陽光で発電して(LEDは効率は悪いものの、太陽光発電素子として使えます)、停電なんてものともしない自立した信号機も可能になるのですが、まだ夢のようです。

ところで、自動車で走っているとわかるのですが、国道などだと、信号が連動して変わり、いっせいに自動車が走り出すという風になっています。あるいは、一定速度で走っていると、赤で止められずにすむというのもありますね。これは、系統信号とかいうそうですけれども、どうやって連動させるのかが問題です。

いまなら、ネットでつないで、通信で同期させればいいってな話になりますが、なにしろ、日本では電気式の信号機は1930年からあるのです。東京の日比谷交差点に設置されたのですが、意味がわからない人が多くて、結局、警官がでて整理したそうです。まあ、それからどんどん増えました。コンピュータやネットなんてバカ高い時代にも系統信号は作られていたのです。

そこで、どうしたかというと、電源の周波数を利用したのですね。関東は50ヘルツ、関西は60ヘルツ、と発電の周波数は違うということは、あの東日本震災のあとの電力不足で有名になりました。

ただ、あまり有名にならなかったのは、この50とか60というのが、非常に厳密に守られているということなのです。目標は0.2ヘルツと0.5%以下の厳密さ、実際にはさらに変動は少ないそうです。そうしないと、多数の発電機をつなげて地域に電気を送ることができないからなのですが、それだけではないのです。これが守られないと電子レンジは周波数が低くて生煮えになったり、高くて焼け焦げたりします。また、モーターをこれにあわせて布を織っている機械では、布がよれてしまったりします。それほど厳密に守られているのですね。

で、これを信号機は時計として利用するのです。1日1回は、電波信号を受信して時計をあわせ、そして一定のサイクルごとに信号を変える。変えるタイミングを連続する信号でちょっとずつ遅らせることで、全体としてスムーズな自動車の流れを作るというわけです。もちろん、現在ではコンピュータとネットワークを使った系統信号が使われており、いま書いたのは、古い技術です。でも、ネットがなくても、結構いろんなことがやれるものですよねー。

ところで、世の中には、車載の信号機というのがあるのをご存知でしょうか?  新幹線といえば、1964年の前回の東京オリンピックにあわせて開業したのですが、その際に開発されたのが、運転席におかれた車内信号機なのです。そのため、新幹線には線路脇の信号機が原則としてありません(ただし、駅構内信号と、秋田新幹線などの在来線併用区間を除く)。その理由は、あまりにも高速で走行するため、地上の信号はよく見えないからです。

もとより鉄道の信号の多くは、スピード制限の目的で設置されています(もってまわった表現が多いのは、鉄分が高いみなさんの細かい突っ込みを承知しているからです。すみませんねー)。その制限は、新幹線では自動列車制御装置(ATC)で行っています。したがって、信号機をみながら速度を制御するんじゃなくて、運転台に制限速度が表示され、さらには自動的にブレーキがかかったりするんですね。

過密運転をする山手線や、地下鉄にもATCは用いられていて、やはり原則として地上には信号機がありません。

じゃあ、自動車にも車載信号を使ったらいいじゃないのとなります。そうすれば、停電でも信号機がいりませんし、信号機がないところでも安全に運転ができますものね。ただ、そのためには、道路にあがるすべてのもの、つまり自転車や人間にもパーソナルな信号機が必要になってしまいます。専用軌道を走る鉄道のようなわけにはいかないというわけです。でも、部分的に利用できれば、スマホにアプリを入れておいて、自動車接近気をつけろとかやれるかもしれませんな。未来の信号はどうなっていくのか、なかなかに楽しみであります。

最後にトリビアです。LED信号の写真をとると、ときとして信号が点灯していないように写ることがあります。これは、LEDが交流電源の周波数にあわせて明滅しているからです。反応性が高いLEDだから起こることですね。白熱電球の場合は電気が流れなくなってもすぐには暗くならない(フィラメントが急には冷めない)ので、そんなことは起こりません。このLED信号見えない写真は、車載カメラで事故検証の時などに問題になることがあるそうですよー。なかなかすべてOKとはいかないものですね。

それでもLEDは軽くて、交換も不要とよいことがいっぱいあるため、どんどん増えております。日本の発明(青色LEDは日本人が発明しています)が世界を変えているよい例ですね。