「フロッピー」といえば、アラフォー世代以上にはおなじみ。そして平成生まれ(いつのまにか26歳までそうだよ)に実物を見せても「???」なブツでございます。今回は、そんなフロッピーをお題に、おしゃべりいたします。世代間ギャップを楽しみましょー。

フロッピー、いや正確には「フロッピーディスク」でございます。このあとは、フロッピーでまいりますが、とんとみなくなりましたねー。

まずは、この映像の40秒くらいからをごらんください。フロッピーを手にした子どもたちの反応です。

Kids try to figure out old technology

この子どもたち同様、なんのことかわからない方もいると思うので、説明しましょー。アラフォー以上の知っている人たちは、このブロックとばしてください。

フロッピーは、USBメモリが普及する前は、PCなどに一番よく使われていた外部記憶メディアでございます。

ディスクというから円盤で、1枚のデータ記憶容量は128K~1.44Mバイト。えー、マイクロSDカードやUSBメモリの一番安いのが、最近では2Gバイトですから、その1000分の1以下ですね。画像ファイルを1~2枚、音楽を1~2曲いれたらおしまいです。パワポのプレゼンファイルも入らなければ、ちょっと絵をいれたワードのファイルも入りません。

しかも、データの読み書きのスピードが遅く、1秒間あたり0.01Mバイト程度。画像1枚コピーするのに1分間はかかるというものです。イライラしながら、コピー終了を待ったものです。

値段は、だんだん安くなっていきましたが、1枚100円とかそんな感じでしたね。いまでも3.5インチはコンビニでもなんとか購入できますが、ほかのサイズの入手は専門店でも難しいですね。

1Gバイトあたりの単価で比較しますね。マイクロSDやUSBメモリが2014年6月現在、2Gバイトモデルで500円ですね。まあ1Gバイトあたり250円というところ。これがフロッピーディスクですと1Mバイトくらいで100円なので、1Gバイトだと10万円! どひゃーというしかありません。

フロッピーはいくつか種類があり、大きさでは8インチ、5.25インチ、3.5インチに2インチが使われました。5.25インチは、CDやDVDよりちょい大きめの直径13cm。非常によく使われた3.5インチが直径9cmですな。1インチは2.5cmあまりでございます。

ディスクの表面には磁性体が塗ってあります。四角いプラスチックの封筒におさめられていました。フロッピーというのは「へなへなの」という意味で、ハードディスクが金属やガラスの円盤を利用するのに対して、フロッピーは、シート状のプラスチックを円盤にして使いました。

1980年代のPCでは、SDカードのような記憶メディアであると同時に、ハードディスクのような起動ディスクとしても使われておりました。フロッピーにOSを入れ、アプリケーションもそこから起動し、文書や音楽もフロッピーにいれたのでございます。もちろんたった1Mバイトですから、アプリケーションを変えるときは、別のフロッピーから起動したのですね。これは、フロッピーさえ物理的に隠せば、セキュリティは保たれるというよい点もあったのでした。

うーむ、見たことない人に、最小限説明しようとして、こんなに長くなってしまった。ふう。

さて、フロッピーですが、基本的に磁石です。磁石をつかって、部分部分に磁化した場所とそうでない場所をつくって、その縞々模様でデータを記録します。

磁石で、磁化させるのを体験するために、ミニ実験してみましょー。

その辺にある磁石をつかって、鉄でできたクリップをこすります。すると、そのクリップは、別のクリップを引き寄せる磁石になっちゃいます。

逆にクリップに熱を加えたり、たたいたりすると、磁力が消えて、もとのクリップに戻ります。

熱を加えると、磁力がなくなっちゃうのは、ピエール・キュリーさんが100年以上前に発見しています。この人、とりあえずみんな名前は知っているキュリー夫人の旦那さんです。1903年に夫婦でノーベル賞を受賞していますが、旦那はすごい人だったんですな。パリで馬車にひかれて死んでしまいますけれども。

なーんで、熱を加えると磁石がそうでなくなるか? ということですが、これは磁石というのが、なかにミニ磁石がたくさんあるような構造をした物質だからです。このミニ磁石は金属でもあるいは瀬戸物でもいろんな物質の中にあります。ただ、方向がてんでバラバラなので、全体としては磁石にならないのですな。

ところが、なんらかのきっかけで、その方向がそろうと、全体として磁石になるのです。

そのキッカケとして簡単なのが、他の磁石を近づけ、ミニ磁石をひきよせて向きをそろえるってことですな。そして、磁石をはなしても、その向きがそろいやすいものが、磁石として利用されているのでございます。一番よく知られているのが「鉄」と「ニッケル」です。鉄鉱石に雷がおちるなどでも、磁石になったりします。そうした天然磁石がむかし発見されて、珍重され、さらに方位磁石の発明になったわけでございます。

逆にミニ磁石の向きをバラバラにすれば磁力は消えますな。キュリーさんが発見した熱でもいいし、トンカチでたたくような衝撃でもよい。そして、熱とか衝撃より手軽なのは、いくつかの磁石を近づける、あるいは磁石を近くで動かすことでも可能です。

フロッピーは、いやハードディスクや磁気テープも、こうしてデータを記録をしたり消去したりしているのですな。

で、うえの3つのなかで、フロッピーが一番新しいです。フェライトという磁性体ををふにゃふにゃのプラスチックになめらかに塗ったり、そこからしっかりデータを読み書きせねばならぬわけですから。その発明のためには、なめらかで丈夫なプラスチック材料など高度な技術が必要だったのです。たよりないフロッピーが一番すごいものだったのですな。

ただ、硬いものをうちぬくより、はさみでも切れるような物質をあつかうので、製造が楽→家庭用の機器に大量採用ということで、高度なフロッピーが、主役になっていたってわけです。

しかし、しょせんはへにゃへにゃ。大容量の記録ができない、磁石近づけたらデータこわれやすい、扱いが面倒、など技術的な限界がきて、あっというまに世の中から消えていったというわけです。いや、完全に消えてはいませんがー。

この話、とりあえずここまで。でも、磁石ネタはこれからも続きます。たぶん。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。