火星。地球のすぐ外側の惑星ですな。この火星は2年2ヶ月に1度、地球に接近し、近いのでそのチョイ前が探査機を打ち上げるチャンスとなります。2020年10月の接近の前の7−8月にはアメリカ、中国、アラブ首長国連邦が各々火星探査機を打ち上げました。そして、いま火星に到着するところです。それ以外にも以前に打ち上げられた探査機も活動を継続中。よく、地球外生命探査で話題になる火星探査。どうなっているのかなーということでまとめておきます。今回は現在活動中のものを前半戦としてご紹介。

太陽系第4惑星、火星。薄いながらも大気があり、風がふくと砂塵が舞い上がる世界でございます。北極と南極には大規模な雪だまりがあり、季節変化でサイズが大きく変化します。1日の長さは24時間あまりです。2つの月が回っているため、望遠鏡の観測で地球の半分以下の表面重力ということもわかり、150年ほど前には「これは火星人がいても不思議ではないぞ、マジで」となった歴史がございます。

で、火星人といえばタコ型のあれですな。火星の低い重力で手足はヒョロヒョロでもよく、太陽から遠く暗いので目はでかく、頭はいいので脳みそ収納する頭部はでかいとなって、タコ型が考えられました。これ英国の作家ウェルズが1898年に発表したSFの元祖「宇宙戦争(THE WAR OF THE WORLDS」でございますなー。このタコ型の火星人が攻めてきて、その三脚ロボットのゴジラかという戦闘力で英国軍は壊滅し、人類は全滅の危機。で、侵略から2週間後、火星人は地球の感染症で敗退という、今はわかりみが強い結末を迎えます。まー、逃げ回る主人公がどうなるか、子供のころによんでワクワクしたものでございます。2005年にはトム・クルーズ主演で映画になりましたが、あのトップガンでミッション:インポッシブルなトム・クルーズが逃げ回るだけで全米が唖然としたという、その点原作に忠実な映画でございました。

さて、そんなわくわくな火星も色々調べていくと、火星人は無理なんじゃね? となり、しばらくは「苔なら生えてるかも」という話になっていました。図書館などで古い図鑑を見ると、そんなことが書いてあるのでございます。が、1965年にアメリカの火星探査機マリナー4号が火星上空をフライバイすると、荒涼とした大地が広がる様子に絶望が広がります。しかし1971年にはマリナー9号が火星周回して全体のマッピングをすると、水が流れたような地形が発見され、ワンチャンあるんじゃね? となります。で、1976年にはバイキング1号、2号が火星に着陸しました。で、土壌にバイキンくらいおらんかなという実験をしたら、無残な結果がでました。ということで、ツンデレツンで、おしまいよ。になったわけです。で、一方の宇宙探査の雄だった旧ソ連もことごとく火星探査機を失敗していて、しばらく、火星は無視された時期があったのでございます。あ、火星の呪いというタイトルで前に書きましたなー。

が、今は違います。1996-7年にアメリカはMGSとマーズパスファインダーを成功させ、特にパスファインダーはロボット探査車(ローバー)を火星に走らせることに成功させました。で、それからは火星接近ごとの2年2ヶ月ごとに火星探査機を打ち上げています。そして、ヨーロッパも成功させ、中国、日本、ロシアもチャレンジをしています。失敗してますが。あと成功したのはなんとインド! 2014年に火星周回機マンガルヤーンの火星軌道投入に成功しております。

そんなこんなで21世紀になると、常になんらかの火星探査機が火星を調べているという状況になっております。現在の状況を確認しますと次の通り。NASAのMARS NOWサイトのリアルタイムマップがワクテカですぞ。

1.マーズ・オデッセイ(米国)

2001年に火星周回軌道に入り、当初予定していた観測が終わったあとも活動中です。火星で現役で活動している探査機では最年長ですなー。火星の温度などを測定する機器が活躍してきました。メインのミッションは終了しており、燃料も枯渇して姿勢制御などもしんどくなっていますが、昨年も火星の衛星フォボスの温度分布を調べるなど、活動は続けられています。

2.マーズ・エクスプレス(ヨーロッパ宇宙機関)

2003年に火星周回軌道に入り、現在も活動中です。火星の地下を調べるレーダーを持ち、地下に水がないかを慎重に探査をしています。なお、同時に行った着陸機のビーグル2は着陸後消息不明になりました。

3.マーズ・リコネサンス・オービター(米国)

2006年に火星周回軌道に入りました。30cm単位の地形を見分けられる写真を撮れるHiRISEカメラが特徴です。名前は火星偵察機という意味ですがまさに偵察衛星。MROと省略されます。撮影された写真はまるで航空写真! 目が覚めるほどですよー。また、強力な通信装置を持ち、他の火星探査機のサポート通信も行えます。

  • MRO

    マーズ・リコネサンス・オービターが2007年7月に撮影した火星の表面の様子 (C)NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

4.キュリオシティ(米国)

2012年に火星に着陸した軽自動車くらいの火星探査車です。正式名称はマーズ・サイエンス・ラボラトリー。動く実験室といえ、顕微鏡や物質分析装置で火星の大地を詳しく調べます。3000火星日も活動し、写真はすでに75万枚撮影しています。自撮り写真なども。

  • キュリオシティ

    火星でのキュリオシティの自撮り (C)NASA/JPL-Caltech/MSSS

5.マンガルヤーン(インド)

2014年に火星周回軌道に入りました。アジアでは日本や中国よりも早く、インドが火星探査機を成功させています。すごいぜ! 基本的には火星までたどりついて周回軌道にのせるという技術を開発するためですが、メタン検出装置を載せていて、生命があれば特徴的に排出されるはずのメタンを精度良く調べられるという特徴を持っています。正式名称はマーズ・オービター・ミッション(MOM)。マンガルヤーンはサンスクリット語で火星への乗り物という意味です。

ちなみにこのミッションは、すばらしいインド映画「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画になっています。この1月8日から公開中。めっちゃおもしろいよー!!

6.メイヴン(米国)

2014年に火星周回軌道に入りました。火星の大気がなんで薄くなっちゃったのかを調べるために、火星から出て行くガスを精密に調べています。また、気象衛星として火星の気象を詳細にモニターしていますし、太陽からの風も同時にチェックしています。

7.トレース・ガス・オービター(ヨーロッパ宇宙機関、ロシア)

2016年に火星周回軌道に入りました。火星大気の微量なガスを調べるのに特化した探査機です。マンガルヤーン同様メタン探査に重点を置いています。実は同時にスキャパレリという火星自動車の着陸も行われたのですが、こちらは失敗しています。

トレース・ガス・オービターは通信中継機としての能力も持っています。2023年に投入予定の次の火星探査車ロザリンド・フランクリンの支援を行う予定です。ロザリンドは、DNAの構造を解明した一人で、なくなったためノーベル賞の栄誉にならなかった不運の女性科学者の名前です。(マンガで学ぶゲノムの書評も読んでねー)。生命探査を意識した名前ですな。

8.インサイト(米国)

2018年に着陸しました。火星の地震を高精度で察知し、また火星の内部の熱流を測定する探査機です。火星の地震をかなりたくさん見つけています。シャベルで地面を掘ることもできれば、3Dカメラでの撮影もできます。また、夏休みのお天気帳のごとく、毎日の火星の気温や気圧、風速を測り続けています。設計は、2008年に着陸したフェニックスを踏襲しています。日本の小惑星探査機のはやぶさ&はやぶさ2みたいですな。

なお、インサイトには相乗りして小型宇宙機(CubeSat)のMarCOが2機あり、こちらは火星の横を通り過ぎるフライバイで通信の連携テストを行い成功しています。また魚眼レンズでの火星の写真撮影に成功しています。

なんとも、調べてみると、2機の着陸機と6機の周回機が火星を探っているわけですな。いつの間に。

そして、まもなく米・中・UAE3カ国の5機がこれに加わるのですが、もう、おなかいっぱいになったので、続きは次回! では!