デジタルハリウッド専任講師の小倉イサクです。今回は「CG・VFX業界の雇用システムと収入」について紹介していきたいと思います。

CG・VFX業界の雇用形態

CG・VFX業界は、即戦力が求められる業界です。そのため、新人が徐々に成長するのを待ってくれる会社は少数派だと思います。大抵は、デジタルハリウッドの様な専門スクールや大学で映像制作の基礎を一通り学んだ人材を採用し、現場で仕事に必要な技術をさらに身に付けていくといった流れになっています。

また、技術と経験が不可欠なこの業界において"最初から正社員としての採用"は、正直、非常に難しいです。会社側も「正社員として雇ったのに、戦力にならなかった」では、困ってしまいます。そのためCG・VFX業界では、契約社員や派遣社員からスタートするのが通例となっており、現場を経験し、場数をこなして、数カ月~数年後に正社員へステップアップするケースが多いのです。

正社員になるまでの期間は、各業界によって大きく異なっており、比較的早く正社員になれるのは、パチンコ業界(※)やゲーム業界です。早ければ数カ月で昇格できます。テレビや映画のCG制作会社は、前者に比べ、経験を積む期間がやや長めといえるでしょう。

※近年CG業界では、パチンコ向けのCG映像が、新しいプラットフォームとしてかなり注目されており、CGクリエイターの需要も高くなっている。

CG・VFXクリエイターの「生活レベル」はほぼ安全圏

正社員になるまでの期間に差があるように、収入にもそれぞれ違いがあります。給与が特に良いのはパチンコ業界です。初任給から手取りで約30万円前後といわれています。また、CGクリエイターの需要が最も多いゲーム業界は、パチンコ業界ほど高給ではありませんが、収入が安定し、休みもしっかり取れて残業も比較的少なめです。CMやTV、映画、PVなどを制作している映像業界の平均給与は、手取りで20万円以上といったところです。ゲームやパチンコ業界に比べれば給与は低くなりますが、残業代を加えれば、実際はもっと収入が多いというケースもあります。ちなみに、平均年収は1000万円といわれるテレビ局は特殊です。高給ゆえに、TV局への就職は非常に"狭き門"です。例え高度なCG技術を持っていたとしても、テレビ局に中途入社するのは至難の業だと思います。

"夢や希望を持って仕事をするという理想"と"働いて食べていくという現実"について、これからCGや映像業界を目指そうと考えている皆さんは、どう感じたのでしょうか。次回は、日本のクリエイターが海の向こうで活躍する可能性などについて、紹介していく予定です。