今回も前回に続き、DataSpiderの生みの親、株式会社アプレッソの代表取締役副社長CTOの小野和俊氏と、ユーザー企業である株式会社マイナビの情報システム部門 薄井照丈氏の対談をお届けする。

前回は、DataSpiderがIT系企業 入社2年目の文系出身女性社員をユーザーに想定して開発されており、プログラミング経験のない管理者でも難なく使いこなせることや、細かなデータ連携処理を自社で簡単に実現できるため、SIerに外注するケースに比べて費用対効果が非常に大きいことなどの話題をご紹介した。

対談ではその後、利便性をさらに高めるための改善要望や、クラウド/NoSQLといった新技術への対応に話が及んだので、今回はその模様をお伝えする。

DataSpiderは、ユーザーの声とともに

小野 : お客様の声を大切にしたいという流れを受けまして、実際にDataSpiderを使われてみてご不満に思われたことや改善すべき点を是非お聞かせいただきたいと思います。

マイナビ 情報システム部門の薄井照丈氏

薄井 : いくつか改善要望を挙げさせてください。まず、テキストのマージ処理が提供されていますが、処理にかなりの時間がかかります。処理速度が改善されれば使ってみたい機能なのですが、いかがでしょうか?

小野 : 実は、似たようなご指摘をいただいていまして、改善の検討を進めているところです。今のマージ処理は、いろいろなケースを想定しすぎて必要以上に複雑なことをしています。いろいろできる「高機能マージ」も必要だと思いますが、単純にテキストをつなげるだけのようなときは、高速性を重視した「シンプルマージ」を作ろうと開発を進めているところです。

薄井 : それは是非期待したいですね。続いては、エラー処理に関するところです。実は、Windowsのバッチ処理とDataSpiderを連携させて使っているものがあります。DataSpiderの外側でエラーが発生したときに、エラーログをDataSpiderから参照したいと思っていますが、これは可能でしょうか?

小野 : ログは、ファイルパスとイベントのIDさえ分かれば参照可能です。戻り値の中にその情報がなくても、ログの仕様次第では何とかなるかもしれません。

薄井 : 分かりました。ログの仕様の詳細を確認してみます。次は、私としてはちょっとわがままではないかと思うのですが、インフラ担当のメンバーから、どうしても伝えてほしいという要望があります。DataSpiderのスクリプトで、DBのテーブル生成処理を実装できるようにしてほしいという要望です。具体的な使い方としては、入力元の複数のテーブルから新しくデータを作るときに、テーブルがなければテーブルも一緒に作りたいということです。スキーマは分かっているから作れるはずだという言い分は分かりますが、テーブルぐらい先に作っておきなさいよ、とも思います。いかがでしょうか?

アプレッソ 代表取締役副社長CTOの小野和俊氏

小野 : 実は、DataSpiderを作った当初、私もインフラ担当の方と同じように考えていて、テーブルを作る機能も昔はあったんです。ですが、テーブルを勝手に作られたら困るという声をいただいて、今は使えないようにしています。ただ、最近はテーブルに対する考え方が変わってきたのか、同じご要望をいただくようになりました。オプション機能として復活させてもいいのではないかと考えていたところなので、社に帰って改めて検討してみたいと思います。

薄井 : ありがとうございます。最後は、アダプタの開発スピードに対する要望です。PostgreSQLがバージョンアップされてから、対応するアダプタがリリースするまでのタイムラグが若干大きいように思います。ここを早めていただけると助かります。

小野 : 頑張らせていただきます。最近はオープンソースのDBを使われる企業も増えていますので、何とか遅れを取らずに速やかに対応していきたいと思っています。

クラウドにNoSQL、新技術への対応はいかに?

小野 : 今後の展望について話題を移したいと思います。クラウドやNoSQLという新しいサービスや技術が注目を集めています。弊社では順次対応を進めていますが、御社のご対応状況はいかがでしょうか?

薄井 : クラウドはいろいろと勉強しているところです。現時点では、全面的にクラウドに移行することはないだろうと思っています。クラウドを使う場合でも、社内にもシステムを残し、ある部分はパブリックなクラウドを使い、ある部分は擬似クラウドというかプライベートクラウドのようなものを使う、という混在する形になると思います。ただし、データの在り処は別でも、データは有機的につながっていなければなりません。DataSpiderは主要なパブリッククラウドにも対応していますよね。クラウド時代の情報基盤、データ連携のハブになると期待しています。ちなみにNoSQLはまだまだ勉強不足です。

小野 : クラウドは、おっしゃる通り、全面移行はまずないだろうと思います。クラウドが徐々に使われ始めていますが、業務要件がシビアでないところから少しずつ導入されているのが実態です。クラウドの先進事例として金融系の企業が取り上げられることがありますが、実は、その用途はバックアップセンターです。セキュリティや信頼性、性能面で要件がシビアなフロントシステムとして使うにはまだまだ心配なようで、クラウドのストレージコストの安さを活かせるところから導入が始まっています。業務システムをクラウドに移行していくのはこれから先のことだと思います。

なお、「クラウド」と一言で言っても、提供しているサービスの中身は多様です。システムの要件や用途によって、1つの企業が複数のクラウドを使い分けるということも十分にありえます。インフラ系はAmazonのEC2、アプリ系はSalesforce、というようにです。そうしたときに、新しいクラウドにつなぐたびにAPIの勉強しなければならないのは大変です。

DataSpiderはAPIの部分をカプセル化するので、やりたいことさえ明確になっていれば、APIの勉強は不要です。クラウドと社内、クラウド間のセキュアかつシームレスなデータ連携を手軽に実現するツールとして、DataSpiderをご検討いただけたらと思います。

それから、クラウドでも国産が頑張っています。中でも、ニフティさんとは密に連携をとらせていただいていて、ニフティさんのリリースとほぼ同時にアダプタをリリースできるようにしています。アプリケーションだけでなくクラウドについても、グローバルの主流を押さえるとともに、国産とネイティブにつながるようにしていきたいと思っています。

ちなみに、グローバルなクラウドの中では、Microsoftさんとは緊密な関係を築いています。Windows Azureのリリース前にインタフェースの情報をいただいて、迅速にアダプタをリリースできるような体制を作っています。グローバル・国産ともに、クラウドでも一番のスピード感で臨んでいきたいと思います。

NoSQLについては、やはりおっしゃる通り、具体的に導入が始まるのはもう少し先の話だと思います。ただ、高速でシンプル、スケーラビリティのあるデータストアへの期待は高く、クラウドで扱うデータはほとんどNoSQLになってきています。また、ウェブサービス系の企業で、業務への導入が具体的に検討されているという話も聞きます。早いところではそろそろ使い始めるかもしれません。弊社としては、年内にはNoSQLのアダプタを用意する予定です。エンタープライズの業務で使われるようになったときには、ひと通りアダプタが出揃っている状態にしておきたいと思っています。

DataSpiderなら、BPMもスマートフォン連携も簡単

小野 : ところで、BPMについてはいかがでしょうか?データ連携、システムフローとヒューマンワークフローを連動させたいというご要望をいただいて、「DataSpider BPM」という製品もリリースさせていただきました。

薄井 : 弊社は、ワークフロー製品は多少使っていますが、紙での承認や申請もまだまだ残っていますし、BPMのレベルには程遠いと思います。

小野 : BPMとワークフローは、業界全体で用語がごちゃごちゃしているので、あまり言葉にとらわれる必要はないかと思います。御社のシステムの中で、然るべき役職の方の承認が他のシステムに書き込まれたり、承認をトリガーにあるシステムを起動したりというようなシステム間連携はありますか?

薄井 : 申請データを作る際に他のシステムからデータを読み込むことはありますが、承認をどこかに書き込むようなシステム間連携はありません。その辺りの連携は、オフライン、紙でやっているのが現状です。

小野 : 紙を使うのはシステムで連携させられないから、というところもありますよね。実は弊社も、「DataSpider BPM」を作るまでは、紙の業務がたくさんありました(笑)。データの流れの中に人の流れも入れると、システムで実現できることの幅が広がります。

例えば、月初に経営情報を収集・加工する処理を走らせるものの、然るべき立場の人の承認があってはじめてシステムに書き込むということが可能になります。ヒューマンフローとシステムフローの比重はまちまちだと思いますが、人の流れとデータの流れをシームレスにつないでいけるのがこの製品の特徴ですので、必要に応じて、ぜひご検討いただけたらと思います。

最後に、スマートフォン対応についても伺わせてください。社外で使う情報端末として、PCからスマートフォン、タブレットへ移行するケースが増えてきているように思います。御社は、記者さん、営業さんが外にいらっしゃることが多いと思いますが、スマートフォンの活用についてはどのようにお考えでしょうか?

薄井 : スマートフォンをどう活用するかは課題ですが、スマートフォンに対してセキュアに効率的に情報を渡す方法がまだ確立していないと思っています。いい方法をご存知でしたら、アドバイスいただけると嬉しく思います。

小野 : いくつか方法があります。DataSpiderを単純にデータポップとして使って、スマートフォンへの橋渡しの部分は他社さんのツールを使うというのが一つです。この形でいくつか導入事例もありますし、橋渡しの部分にも複数の選択肢があります。

もう一つ、DataSpider自身が直接スマートフォンとデータのやり取りができるような仕組みについても開発を進めているところです。外部からのアクセスが可能なところにDataSpiderを置く必要がありますが、システムをシンプルに構成することができます。具体的な形については、御社のご要件に合う形でいろいろ提案させていただきたいと思いますので、是非ご相談ください。