少し前のことになるが、ソウルに行ってきた。知人がソウルのアートスポットや雑貨店を紹介したガイド本のアートディレクションを担当し、その本を偶然手に取ったのがきっかけ。そのガイド本にはいくつかソウル発のステーショナリーブランドのショップも載っていて、急にどうしても見に行きたくなってしまったのだ。

旅先では、デザイン性の高いもの、アイディアに溢れるもの、アジアらしいチープ感がかわいいもの、さまざまなコリアンデザインの文房具に出会うことができた。今回はその一部を紹介しようと思う。

アジアでは日本製文房具がブーム

具体的な話に入る前に、ソウルで文房具を探してみて抱いた全体的な印象について少し触れておこうと思う。今回、お目当てのショップのほかにも、韓国で一般的に使われている大量生産の廉価な文房具も手に入れたいと思い、大型スーパーや大きな書店の文房具フロアなどにも足を運んでみた。

しかし、そこにあったのは日本製品とBICなど日本でもおなじみの欧米ブランドが中心で、「MADE IN KOREA」はあまり見つけることができなかった(きわどいファンシー文具はいろいろあったが……)。少し残念な気もしたがよく下調べもせずに飛び出てきたので、たまたま見つけられなかっただけなのだろうとその時は納得したのだが、後日、日本のメーカーを取材した際にその理由が判明した。

何でも、今、韓国をはじめとする中国やインドなどアジア諸国では日本製の文房具がブームになっているらしい。しかもパッケージは現地仕様にするのではなく、日本仕様のまま販売するほうがいいのだとか。確かに、韓国の店頭で見た日本製品は日本と同じパッケージで、取り扱いの説明文も日本語メイン。日本メーカーは仕事が丁寧なのに、どうして韓国語にしないのだろうと少し不思議に思っていたのでスッキリした。

そのようなわけで「MADE IN KOREA」は予想よりも少なかったが、工業製品の文房具もいくつか入手できた。その紹介は後篇に回すとして、今回は旅の一番の目的だったステーショナリーブランド「O-CHECK DESIGN GRAPHICS」のアイテムについて取り上げたい。

規格にこだわらないサイズ感がツボなノート

訪ねたのは、ソウル駅や明洞周辺からもほど近い景福宮駅にある「O-CHECK DESIGN GRAPHICS」のショップ。このステーショナリーブランドは、ファッションデザイナーとして活躍してきたクォン・ジェヒョクさん夫婦が立ち上げたデザインブランド「spring come,rain fall」から生まれた文房具ラインだ。

ショップは大通りから少し入った路地裏にある

カフェスペース。明るく居心地がいい

ショップは2階から上が「spring come,rain fall」の本社オフィスになっていて、1階をショップ兼カフェとして開放している。店に入るとすぐ「O-CHECK DESIGN GRAPHICS」の文房具や「spring come,rain fall」オリジナルのバックやポーチなどが並ぶ。その奥はカフェスペースになっていて、木製のインテリアでまとめられたナチュラルな雰囲気で居心地がいい。その雰囲気は文房具のデザインにも踏襲されていて、紙や皮など素材のナチュラルな風合いを生かしたデザインがこのブランドの特徴だ。

書斎をイメージしたようなディスプレイに

ペンケースやバインダーなどさまざまな文房具があるが、個人的に気に入ったのはノート類。規格をきっちりと重視する日本とは違って、韓国ではいい意味で自由なサイズのノートがあって楽しい。とくに、B6版の幅を出したワイドサイズは手に取った時のサイズ的な感触がいい。手帳やペンケースとまとめて抱える際の相性がよく、横幅があるので開きもよく書きやすい。

このサイズ、日本でもぜひ広めて欲しいものだ。かつての日本のように韓国もB5文化なのだろうか。バインダーやホルダー類はB5サイズが多く、全体的に文房具のサイズが小ぶりなのが個人的にはツボだった。

NOTE(S)rabbit/1500won、NOTE diamond/2500won
左のウサギのノートはA6、右のダイヤ柄のノートはB6ワイド。ノートは小さめのデザインが多く携帯するのに便利だ

Weekly scheduler(S) key/4500won
自分で日付を書き込んで使うウィークリースケジュール帳。表紙が厚いボール紙なので、デスク用スケジュールに

ノスタルジックな空気感を大切にしたデザイン

ところで、韓国のファッション業界の最先端で活躍していたクォン・ジェヒョクさん。その彼が文房具ブランドを立ち上げようと考えたきっかけは、世界中を回った旅行にあったという。

旅先で見た工業製品や日用雑貨のプロダクトデザインのレベルの高さに、彼は衝撃を受けると同時に感動したそう。そこからクォンさんは「毎日使うモノのデザイン性を高めることで、韓国の人たちに小さな変化を与えたい」という思いに至る。毎日使う文房具がもっと魅力的なデザインであれば、韓国の人々のデザインへの意識を高められるかもしれない。そうしてスタートした「O-CHECK DESIGN GRAPHICS」は、手にすることでどこか懐かしい気持ちやあたたかい気持ちになれるデザインがコンセプト。

確かに文房具はごく身近にある日用品のひとつであり、そのデザインは自然と毎日目にするものになる。持っていると優しい気持ちになれる、そんな「O-CHECK DESIGN GRAPHICS」のデザインコンセプトにとても共感した。

LETTER PAPER COLLAGE GREENとFLOWER/各2000won
封筒を止めるシールや便せんも丁寧にデザインされているレターセット

上からTAPE black owl 35mm×25m/2500won、TAPE yellow bird 15mm×25m/2000won、TAPE harmony 35mm×25m/2500won、TAPE green snow 15mm×25m/1500won
O-CHECK DESIGN GRAPHICSの人気商品。透明のテープにキュートなイラストが描かれている。封筒をガームテープで無造作に留めてしまうより相手からも喜ばれそうだ