新型コロナウイルス感染拡大防止のための自粛が全面的に解除され、経済活動が徐々に戻り始めています。もちろん、東京都の新規感染者が増加傾向にあるなど、まだまだ警戒を緩めることはできませんが、景気の最悪期を脱したとの見方が出始めており、株価は一足先にかなりの回復を見せています。果たして今後の経済回復に期待できるのでしょうか。

日経平均株価は3月が底だった!?

まずコロナ禍での株価の動きを振り返ってみましょう。日経平均株価は、コロナ感染拡大が明らかになる前の今年1月20日前後には2万4,000円台をつけ、その後も2月20日過ぎまでは2万3,000円台で堅調に推移していました。

しかしイタリアなど欧州でコロナ感染が急速に拡大したことをうけて、2月24日から世界中で株価急落が始まりました。米国ニューヨーク株式市場では、それまで2万9,000ドル台の史上最高値をつけていたダウ平均株価が連日1,000~2,000ドルを超える過去最大級の下げを記録し、約1カ月後の3月23日には1万8,500ドル台まで下げました。この間の下げ幅は1万ドル以上、下落率は36%に達し、リーマン・ショック後の1カ月間の下落スピードを上回るものとなりました。

日経平均株価も3月19日には1万6,552円まで落ち込み。この間の下落率は29.2%となりました。しかし株価の下落はそこまででした。その頃は感染拡大が加速した時期でしたので、そこで下げ止まったのはやや意外と言えるでしょう。その後は回復基調をたどり、日経平均は4月末には2万円の大台を回復、6月に入ると一時は2万3,000円台まで回復しました(6月8日~10日)。急落が始まった直前の水準まであと一歩のところまでこぎつけたわけです。

  • 日米の株価推移

    日米の株価推移

その後は再び急落するなど不安定な展開が続いていますが、「景気悪化はリーマン・ショック以上」「戦後最悪」と言われるにもかかわらず、株価はなぜ短期間に回復できたのでしょうか。その理由は3つにまとめることができます。

株価回復の要因・その1

政府の大型経済対策と規制解除

第1は、各国政府による大型の経済対策とロックダウン(都市封鎖)解除の動きです。欧米各国はリーマン・ショック時を上回る経済対策を打ち出したことで安心感が広がり、併せて4月になると各国は日本より一足先にロックダウン解除を段階的に緩和する方針を相次いで打ち出しました。実際に解除が実施されたのは5月になってからでしたが、その「方針」が表明されるだけで株価回復の材料になりました。

日本では5月に入って14日に39県で緊急事態宣言を解除、25日には全面的に解除されました。その後も休業要請や県境をまたぐ移動自粛などは継続されていましたが、それも6月19日に全面解除という経過をたどりました。 この間、4月30日に第1次補正予算(25.7兆円、事業規模117兆円)が成立し、続いて第2次補正予算(31.9兆円、事業規模117兆円)が5月27日に閣議決定、6月12日に成立しました。

こうした欧米や国内の動きが株価のプラス材料となり、回復持続を後押ししたと言えます。

株価回復の要因・その2

経済指標も底入れのサイン

第2は、景気の実態面でも底入れの兆しが出てきたことです。特に米国の景気によく表れています。米失業率は2月の3.5%から3月は4.4%、そして4月には一気に14.7%へと急上昇し、戦後最悪となりました。しかし5月は13.3%と一転して改善しました。事前の予想では4月より悪化すると見られていましたので、これは「ポジティブサプライズ」でした。就業者数も4月は前月より2,050万人も減少するという記録的な悪化となっていましたが、5月は250万人の増加に転じました。

このほか、6月に入ってから発表された主な経済指標(5月の小売売上高、同鉱工業生産指数など)も軒並み前月比プラスとなっています。これらから判断すると、米国の景気は4月で底を打った可能性があります。

  • 底入れを示す米国の経済指標

    底入れを示す米国の経済指標

日本国内の指標では、底入れを示すデータはまだ少ないのですが、それでも景気ウォッチャー調査にその兆しを見ることができます。同調査は「街角景気」とも呼ばれ、コンビニ店員やタクシー運転手など景気の動向を肌で感じる立場にいる人たちを対象にアンケート調査し、その結果を指数化しているもので、景気の変化を敏感に反映するデータとして市場関係者がいつも注目しています。

それによると、景気の現状を示す指数(DI)は今年1月以降大幅に低下し、4月には7.9と、過去最低を記録しました。この指数は50が景気の好不況の分かれ目と言われており、数値が低いほど景気が悪いことを示しています。コロナ禍によって、いかに街角の景気が悪化したかがよくわかります。

ところが5月は15.5と反転したのです。まだ低水準ではありますが、最低となった4月だけではなく、その前の3月の水準をも上回りました。

  • 街角景気の推移

    街角景気の推移