コンテンツマーケティングを正しく理解し、正しく実践するための本連載。前回は、コンテンツマーケティングを成功させるために "押さえておくべき5つのステップ" として、ゴールとペルソナの設定における考え方を解説しました。

後半となる今回は、「コンテンツ設計」から「エディトリアルカレンダーの作成と運用」「KPIの測定」までを学んでいきましょう。

まだ前半を読んでいない方は、こちらから。


ステップ3. コンテンツ設計

顧客のペルソナ設計ができたら、それに合わせてコンテンツを用意します。このとき、顧客の購買ステージを分けて考えることで、発信すべきコンテンツを整理しやすくなります。

「顧客のペルソナのフェーズに合わせてコンテンツを設計する」 資料 : 宗像氏著「商品を売るな」

認知フェーズ

認知フェーズの読者は、情報収集の際に "たまたまあなたのコンテンツに触れた" に過ぎない状況です。この段階で商品やサービスを売り込んだところで意味はありません。

必要なコンテンツは、業界についてのトレンド記事や初心者向けのガイド記事、ハウツーや用語解説などです。顧客が知りたい情報を用意しておくことで、自社の存在を認知してもらいましょう。コンテンツマーケティングにおいて、最も重要で、多くの情報量を用意すべきフェーズといえます。

評価フェーズ

読者自身のニーズにあった製品やサービスを調べたり、他社との比較を行っているのが、評価フェーズの顧客。この段階では、自社の商品が最適であることを理解してもらうためのユーザー事例や比較記事などが求められます。

購入フェーズ

購入フェーズまでくれば、あとひと押し。無料トライアルやクーポンなど、購買のキッカケを提供しましょう。B2B企業であれば、見積もり依頼を出すような段階に位置する読者だと言えます。

ステップ4. エディトリアルカレンダーの作成と運用

ここまでのステップを経てコンテンツ発信の準備が整ったと思っても、まだ大きな試練が待ち受けています。それは "継続" です。

「美容・化粧品関連の商材を扱う企業のコンテンツマーケティングを想定したエディトリアルカレンダーの例」 資料 : 宗像氏著「商品を売るな」

コンテンツマーケティングは長期的な活動です。コンテンツの更新で挫折しないためにも「エディトリアルカレンダー」を活用しましょう。

エディトリアルカレンダーで企画を練る

エディトリアルカレンダーには、公開するコンテンツを日付ごとに掲載するだけでなく、想定するペルソナや制作担当者、公開場所、制作プロセスごとの締切などを記載し、コンテンツマーケティングに関わるチームの全員が共有できる状況を作りましょう。

また、業界で話題になるイベントや季節性のあるニーズ、自社商品のリリース日なども併記することで、タイムリーなコンテンツ配信を計画しやすくなります。

まずはネット上のフォーマットを使うところから

インターネット上には、エディトリアルカレンダーのさまざまなフォーマットが公開されています。「エディトリアルカレンダー ダウンロード」などで検索すると入手できるので、自分なりに項目をカスタマイズしてみると良いでしょう。継続的な運用のためには、シンプルでわかりやすく、更新しやすいものがオススメです。

ステップ5. KPIの測定

ステップ1で設定したゴールの達成度を計測し、改善を続けていくために、KPI (Key Performance Indicators : 重要業績評価指標)を継続的に測定することが重要です。以下に、ステップ1でご紹介したゴール別に主要KPIをご紹介します。

ブランド認知度の向上

潜在顧客や見込み客の認知向上度合いを計測するには、「PV」や「ソーシャルメディアのシェア数」「サイト滞在時間」などを最初の指標にすると良いでしょう。読み手の記憶に残り、シェアしたくなるようなコンテンツを制作できたかを知る目安となります。

リード獲得/リードナーチャリング

リード獲得を通して売上を上げるというゴールを追うのであれば、当然、「獲得したリード件数」や「登録されたリード内容の正確さ」「自社商品ターゲットとマッチしているか」「獲得したリードからどれだけ商談化・売上になったか」などが評価指標となります。数だけでなく、価値あるリードを獲得できたかにも注意を払いましょう。

エンゲージメントの増加

コンテンツを通じた顧客との交流がゴールであれば、「ソーシャルメディアやブログ記事へのコメント数とその内容」や「自社サイトへの再訪率」など、読者の反応を追いましょう。発信したコンテンツがユーザーとのエンゲージメントを深めることに繋がったかを知るための指標となります。

既存顧客のロイヤリティ向上

コンテンツが既存顧客のロイヤリティ向上に寄与しているかどうかを測るには、顧客がリピーターとして「どれだけ継続的に商品を購入しているか」や「購入単価」を確認するとよいでしょう。

また、特定の商品だけではなく、関連商品や売れ行き上位の商品を買ってくれているかも大切な指標です。購買行動のみならず、ソーシャルメディア上での口コミの内容やレビューの評価等もロイヤリティの定量化に役立ちます。

オピニオンリーダー化

業界のオピニオンリーダーとしての信頼獲得がコンテンツマーケティングのゴールであれば、メディアからの取材依頼やイベントの講演による露出といった、業界内外の企業や組織から意見を求められる機会の頻度などが評価軸となるでしょう。

いかがでしたか?

ただ闇雲にコンテンツを作り始めるのではなく、ここで紹介した5つのステップを踏むことで成果を見える化し、継続的な改善へと役立てて頂ければ幸いです。

執筆者紹介

イノーバ 代表取締役社長 宗像淳

福島県立 安積高等学校出身、東京大学文学部卒業。その後、富士通にて北米ビジネスにおけるオペレーション構築や価格戦略、子会社の経営管理等を経験する。MBAを取得するため、ペンシルバニア大学ウォートン校に留学後、インターネットビジネスを手がけたいという思いから楽天へ転職。その後、ネクスパス (現 : トーチライト)で、ソーシャルメデイアマーケティング立ち上げを担当する。
2011年6月に株式会社イノーバを設立(公式Webサイトはこちら)。著書に『商品を売るなーコンテンツマーケティングで「見つけてもらう」仕組みをつくる (日経BP)』がある。

書籍紹介

商品を売るな

著者 : 宗像淳
発行 : 日経BP 2014年12月8日

生活者の購買行動が大きく変化している。プッシュ型広告で商品を売り込んでも、顧客はそれを無視するようになっている。従来のマーケティングはもう効かないのだ。表立って宣伝せず、見込み客に見つけてもらうための古くて新しいマーケティング手法、それがコンテンツマーケティングである。

この手法は、コカ・コーラやP&Gといったマーケティング先進企業だけでなく、中小・スタートアップ企業が積極的に導入している。では、コンテンツマーケティングとはどのような取り組みかなのか? どんな効果があり、費用はいくらか? 運用のコツは? 成功するポイントは? ――本書では、国内・海外企業の事例紹介を交え、コンテンツマーケティングの全貌を分かりやすく解説する。