ケース3 - 職場でのいじめ

Dianeは、最近、Interactive Technologiesのチームに入り、新しい研究の仕事を始めた。大学院では、指導教官は、いくつもの研究プロジェクトに携わりチームの何人かのメンバーと一緒に研究を行っていた。そして、機会があるごとに、Dianeの貢献に光を当ててくれた。チームはDianeの仕事に感心し、卒業が近づくと就職の勧誘が来るようになった。

チームのテクニカルリーダーのMaxは、ARの専門家で、非常に優秀だが気分が変わりやすいという評判であった。彼のチームの貢献は、その分野では高く評価されており、チームリーダーのMaxは、論文の第一著者になることを要求した。彼らの仕事は評価の高い雑誌に度々取り上げられたが、常にMaxのコメントだけが添えられていた。

チームは成功を積み重ねていたが、Maxは小さなミスに対しても怒り、個人を攻撃した。彼は、その人を罵り、内部のチャットフォーラムでこき下ろした。そして、罰として、何度も、チームの女性メンバーの名前が論文への投稿原稿から削除されていたことがあった。

ライブデモの直前に行ったDianeのコード修正が、プロトタイプにタイミンググリッチを引き起こすという問題が発生し、その直後から、DianeはMaxの罵りの標的になった。激怒したMaxは、Dianeがデモのステージに上がることを拒否した。

Maxの反応はプロフェッショナルらしくなく、権限の乱用であると感じたDianeは、チームのマネージャのJeanに相談した。Jeanはその経験は不愉快なものであることは認めたが、それは業界をリードする猛烈なチームで働くということの代償であり、成長して克服すべきというアドバイスであった。

倫理規定を用いたケース3の分析

Maxの乱暴な振る舞いは、明らかに、倫理規定のいくつかの項目に違反している。

彼の言葉による攻撃は、害を引き起こし、安全な社会環境を作れていない(【1.1項】(すべての人々がコンピューティングのステークホルダーであることを認め、社会と人間の良好な状態(wellbeing)に貢献する)とプロフェッショナルのコミュニケーションにおいて高い基準を維持する(【2.2項】(プロフェッショナルとしての能力、行動、倫理的な行動に高い基準を維持すること)にも反している。

また、投稿論文からDianeの名前を削除したり、Dianeがステージに上がることを阻止したりすることにより、Maxはチームメンバーが自分の仕事のクレジットを得る権利を奪っており、【1.5項】(新しいアイデア、発明、創作、社会の役立つ価値を作り出す仕事を尊重すること)に違反する。

また、Maxの報復は1【1.4項】(公平で差別を行わないように行動する)への違反である。さらに、Maxの報復は女性メンバーだけを標的にしており、権力の乱用であり、チームメンバーの職場環境への公平なアクセスを制約している。

Jeanの振る舞いもこの規定の原則に反している。Maxの振る舞いを咎めることなく継続させ、問題はDianeの未熟さにあると示唆したことで、Jeanは心理的な安寧と人の尊厳を守るという【3.3項】(仕事上の生活の品質を改善するよう人員やその他の資源を管理する)の規定に違反している。さらにJeanが改善に取り組んでいないことは、【3.4項】(この規定の原則を反映した方針やプロセスを明確に示し、適用し、サポートする)に書かれたこの規定の原則を守るという条項にも違反している。

(次回は9月20日の掲載予定です)