漫画家・コラムニストとして活躍するカレー沢薫氏が、家庭生活をはじめとする身のまわりのさまざまなテーマについて語ります。

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今回のテーマは「ゲーミングチェア」である。

何故このテーマが出されたかというと、私が最近ゲーミングチェアを買ったからだと思う。そうでなかったら暴れている。

ホットクックの時もそうだが、担当は毎回単語でしかテーマを寄越さず、事務メールのやりとりしかしていない割にこちらの動向を逐一把握しているのが本当に怖い。

今度ツイッターに「猟銃と懐中電灯を2本買った」と書きこんでみようかと思う。

最近ゲーミングお嬢様など、ゲーミングという言葉を良くお聞きになっていらっしゃるんじゃなくて、このマゾ豚どもですわ、という今日この頃、本日も精一杯商いしてまいります。―店主敬白―

とりあえずお嬢様の才能がないことだけはわかったが、ゲーミングとは文字通りゲームをすることであり、ゲーミングチェアはゲーマー用に作られた椅子である。

最近プロゲーマーとかゲーム実況者とか、端的にいうとゲームが金になりだしたので、ゲームをプレイするための商品も増えてきた。

ただ職業欄に「ゲーム実況者」と書いて、Rカード以外のクレジットカードが作れるかどうかは不明である。

何が言いたいかというと、Rカードは最高と言うことだ。両目どころか両乳首にも貼って窓から飛び出したい。

とりあえずゲーミングチェアを買ったのは事実である。

そこまでソシャゲの周回に命をかけんでもと思ったかもしれないが、ゲームのために椅子を買ったわけではない。

ソシャゲのために椅子を買うぐらいならその金で100連ぐらいガチャを回す。

一応仕事のために買った。

結婚した時、仕事机と仕事用の椅子を某お値段以上の家具屋で買った。

この店の商品は確かにお値段以上であり、10年近く経った今でも未だ現役の家具も多いのだが、ごくたまにお値段並、もしくは以下の商品が紛れ込んでおり、特に革張り製品はあまりお勧めできない。

私の仕事場の椅子も皮張りだったのだが、早い段階で皮が剥がれ落ち始めた。合皮だとは思うが、生き物の皮膚が床に散乱している状態に近い。

しかし、私はすでに自室の床を腐らせていたので、床に皮膚が散乱しているぐらいでは動じない。

「全部剥がれ落ちれば問題ない」の精神で「待ち」の体制だったのだが、夫がその猟奇的な部屋を見て発狂してしまったため、あえなく捨てられてしまった。

その後新しい椅子を買わずに、夫が独身時代に使っていたペラペラの椅子を使うというグレードダウンを果たしたのだが、その椅子が今度は「傾いてきた」のである。

前田慶次っぽくなってきたというわけではなく、物理的に座る所が斜めになってきたのだ。

世の中には「座るだけで姿勢が良くなる」などという製品がたくさんあると思う。しかし、「座るだけで背骨が曲がる」という椅子は珍しいと思う。

それでも体を18度ぐらい傾けながら数カ月仕事をしてきたのだが、その内「座った瞬間分解してしまう」という恐れが出てきたため、断腸の思いで買い替えることにした。

安い椅子でも良かった。でも、漫画家というのはずっと座りっぱなしの職業であり、椅子には金をかけた方が良いという話が敬愛するツイッターにもよく流れて来る。

よってツイッターで情報を集めた後、私はアマゾン(南半球ではない方)に飛び、凄腕ハッカーの如きスピードで検索窓に「椅子」と打ち込み、ッターン、したところ、最初に現れたのが、今私が座っているゲーミングチェアである。

もう少し選んだ方が良いのではと思うかもしれないが、そうしている間にもこちらは体が22度ぐらい傾いているのだ。事態は一刻を争う。

それにトップに出ると言うことは人気商品なのだろうし、値段も2万円弱とそこそこ良いから間違いはないだろう。少なくとも「座れない」ということはないはずだ。

そもそも「ゲーミングチェア」は他の椅子と何が違うのか。

ゲーマーというのは1日に軽く10時間以上ゲームをする廃野郎なので、そのうち体に深刻な不具合が出るとは思うが、できるだけそれが遅くなるように、腰や肩に負担がかからないように、アームレストやヘッドレストがついている椅子の事である。

リクライニング機能もついており「3分仮眠のち再集合な!」という過酷なギルド活動にも対応可能である。

私は、椅子に胡坐をかいて座るため、ほとんどの機能を「無視」する結果になっているが、たまにちゃんと座ると確かに、前に使っていた椅子より良い気がする。

ちなみに何故椅子に胡坐をかいてしまうのか、長年謎であったが「末端冷え性のため、足先を放りだして座ることが出来ないから」ということが判明した。

もしこれから高価な椅子を買おうと思っている冷え性は、獣の足のようなルームソックスも用意してからの方がいい。

そしてゲーミングチェアには「デザインが二次元っぽい」という特徴もある。

私の買ったチェアにも、鮮やかなブルーが配色されており、形もF1のコックピットをイメージしていたりするらしい。

お前らゲームするならこういうの好きやろう、もしくは男の子ってこういうの好きなんでしょ?という偏見が感じられるが、夫はこの椅子を見た時「これ買ったんだ!」とにわかにテンションが上がっていたので、あながち的外れでないような気もする。

私がその手の分野に造詣があれば、毎日エヴァにのる気分でこの椅子に座れたかもしれないが残念ながらそちらには明るくない。

よって毎日「綾波レイがコックピットに胡坐をかいて座っている」というような状態である。