有機EL挿絵

今回のテーマは「有機EL」だが、今回は有機ELを使った製品(主にテレビ)について話したい。何故なら有機EL自体を理解しようとしても無駄だからだ。

有機エレクトロルミネッセンス、有機ELとは発光を伴う物理現象であり、その現象を利用した有機発光ダイオードや発光ポリマーとも呼ばれる製品一般も指す。これらの発光素子は発光層が有機化合物から成る発光ダイオード(LED)を構成しており、有機化合物中に注入された電子と正孔の再結合によって生じた励起子(エキシトン)によって発光する。日本では慣習的に「有機EL」と呼ばれることが多い。次世代ディスプレイのほか、LED照明と同様に次世代照明技術としても期待されている。(引用:「有機エレクトロルミネッセンス」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年4月16日 (月) 18:00)

やはり無駄だった。我々のような「仕組みは全くわからないが使っている勢」は最後の「次世代ディスプレイのほか、LED照明と同様に次世代照明技術としても期待されている。」ぐらいを覚えておけば十分だろう。

有機ELのテレビは「薄くて」「漆黒」

つまり、これから我々の使うテレビなどのディスプレイには、今後この「有機EL」が使われていくだろう、ということである。

この「有機EL」を使うことによる最大の利点は「他の方式に比べ、構造が単純なので薄型化、軽量化が可能」な点である。しかし、今でもテレビはかなり薄くなっている。我が家にあるテレビは10年近く前のものであり、確実に有機ELではないが、それでも壁掛けに出来るぐらいは薄い、おそらく10センチ程度であろう。

では「有機EL」テレビはどの程度薄く出来るというのか。

「5mm」だそうだ。笑う薄さである。測ってみたところ、今、自分が持っているスマホより薄い。これだけ薄ければ、部屋が廊下ぐらいの幅しかないという場合でも難なく置けると思うが、そういう人は有機ELテレビを買うよりやることがあると思う。

これだけ薄くなると軽量にもなる。我が家のテレビは壁掛けだが、重量は結構あるので、かなり強固な金具で固定されている、もしそれが外れて床に落下したら、大惨事は免れない。

しかし有機ELなら軽量なため、壁掛け固定も、そのうちごはんつぶでOKになるかもしれないし、落下しても、その薄さゆえにテレビの方が木っ端微塵になることはあっても、床へのダメージは少ないはずだ。

そもそも、これだけ軽量化されると「テレビは定位置にあるもの」という概念すらなくなる気もする。タブレットやノートパソコン感覚で、見たい場所に移動させて見るのが当たり前になるかもしれない。

画質はどうかというともちろん高水準だが、特に「1画素ごとに明るさを調整できるので、完全な黒を表現できる」のが売りだという。どのぐらい完全な黒かというともはや「漆黒」と言っていいぐらいだそうだ。漆黒という言葉を中学二年生以外が真剣に使う、というのはそうそうないので、相当な黒さが予想される。

しかし前にも書いたが、テレビの画質など良すぎるとかえって映っている人間の粗が見えてしまうので、ほどほどが良いのではと思っていた。しかし、担当に「黒髪の推しキャラが映える」と言われて、そういえばテレビに映るのは人間だけではない、と思い出した。

確かに、推しキャラの画質はどれだけ高くても困らない。「どれだけ拡大しようが、粗が全く出ない」点でやはり、2次元は3次元より格段に優れている。

その有機ELテレビのお値段だが、調べた限り最安値でも20万円台、高いものになると三桁に届くものもある。決してバカ高いわけではないが、もっと安価でそこそこのテレビが買える現在では、「テレビにこだわりがある人」以外、まだ手を出しにくい状態だ。

私が推しを有機ELで見る日はまだ先かもしれないが、低画質で見ても「良い」のが推しである。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年4月24日(火)掲載予定です。