ゲームキューブ

このようにして私たちの生活はどんどんデジタル化していくのでした。

突然まとめに入ったが、残念なことに最終回ではない。今回のテーマがそうなのだ。

21世紀になっても続く「デジタライゼーション」

今まで、3DプリンタとかVRとか、デジタル新技術を紹介してきた。すべて何だったか忘れたが、今まで手作業(アナログ)でやってきたことが、上記のようなデジタル技術に代わっていくことの総称が「デジタライゼーション」である。

何を今さら、デジタル化なら大昔からすでに行われているではないか、と思われるかもしれない。確かに、現在ほとんどの会社がパソコンを導入し、どれだけ意固地な70歳以上のお局がいる職場でも、未だに全員そろばんを使っているというところはないはずだ。

確かに、手書き、手計算などは圧倒的に減ったが、それ以外のところでは、未だに手作業な部分も多い。時にはデジカメで撮影した書類をプリントアウトし、それをスキャンしたデータをUSBメモリに入れ、徒歩で取引先にもって行く、など「平成も終わろうかというのに何故俺はこんなことを」という作業をしている職場もあるのだ。

実生活だって、未だに手動でケツを拭いたりしている以上、完全にデジタル化したなどとはとても言い難い。つまり、まだまだデジタル化する余地は大いにあり、現在進行形で進んでいる最中なのである。

例えば、従来から行われていた金型加工でも、すでに3Dプリンタを使って試作を行っているところもあるだろうし、今後は金型ではなく3Dプリンタで物を作るのが主流になる可能性も大いにある。その方が、正確かつ、時間もかからず、ローコストになるからだ。

「うちはうち、よそはよそ」では済まない企業

だが、何事もすぐには入れ替わらないものである。前にもBIMという画期的建築技術があるという話をしたが、まずBIMシステムを取り入れている会社が少ないため、日本ではBIM建築が遅れているという。システム自体は素晴らしく、将来的にコスト削減になると言っても、まず初期コストが出せる会社でないと導入は不可能だ。

それも導入した瞬間、システムが「あとは俺に任せろ、お前らは手を出すな」と言ってくれればよいが、実際には「新システムの使い方がわかっている人」が必要であり、人的コストもかかる。

つまり、最新システムを導入できるのは、それらのコストがかけられる大企業のみである。パソコンだって、昔は大企業しか持っていなかったはずだし、それですら、全社ひっくるめてメールアドレスが一つしかない、という会社だって未だに存在するのだ。

それが、初期コストが段々安価になっていくか、または他の会社が全部新システムになり、自分のところだけそのシステムがないとなると、仕事自体がもらえなくなる、という事態になり、やむにやまれず導入するようになる。

「このゲームがないと友達との会話についていけない」という現象は企業間でもあるし、個人なら「うちはうち、よそはよそ! 」のお母さんの一喝で終わるが、企業がその考えというのは致命的である。だが、新システムをいち早く導入しても、それが本当に主流になるかわからない、という問題がある。

たとえばゲーム機だって、昔で言えばプレイステーションとかセガサターンとかゲームキューブとか、色々あった。しかし、それを全部購入できる、石油王の家庭というのはそうそうなかったはずだ。よって子どもは、数少ない購入チャンスにどれを買うか選ばなければいけなかった。

すでにプレステが覇権を握っていた時なら迷わなくて済むし、それでも俺はせっかくだからセガサターンを買うぜ、という強い意志があるなら良い。

しかし、「きっとこれから、このゲーム機が主流になるはず」という予想で買ってはずれた場合は悲惨である。シェアの低いゲーム機は当然、ソフトがあまり発売されないし、そのゲーム機を持っている友人も少ないだろうから貸し借りもままならないだろう。

企業でも、これからどの会社もコレを使うようになると踏んで新システムを導入しても、そうならなければ、自社でしか使えないシステムを入れただけに過ぎなくなってしまう。どれだけ解像度が高い画像でも、他の会社で見られないというなら、解像度が低いJPEGの方がまだマシなのである。

これから新しい技術はどんどん生まれてくるだろうが、それをどこよりも早く導入する瞬発力も必要ではあるが、様子見、時流を読む力も大切なのではないだろうか。

ゲームキューブを買った私からのアドバイスだ。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年12月26日(火)掲載予定です。