<前回までのあらすじ「Flash 完」>

Flashとは、Adobeが提供しているアニメーションなどを制作するソフトで、それが2020年にサポートを終了するということである。

しかしその報を聞いても、多くの人間が一瞥もくれず、まさにFlashで動いているゲーム「刀剣乱舞」を黙々と周回したり、資材を溶かし続けていたりすることだろう。

誰も「Flashが終わるからとうらぶも終わる」とは思わないのだ。何故ならみんな、「Flashが使われていたところに、別の新しい何かが入るだけだろ」思っているからだ。

その通りである。逆に、何かが終わるのは、別の何かに座を奪われたからだ。これはITだけではなく、どこの業界でも言えることだ。だから、何でも、存在している内に応援しておいた方がいい。もちろんFlashの話ではなく、私のことだ。

「新しい何か」と移り変わり

そして、「新しい何か」になるであろうと言われているのが「HTML5」である。

まずHTMLと言ったら、WEBページを作るための言語だ。今見ているページも、「ソースを表示」すれば、0.1秒で閉じたくなるアルファベットや記号の羅列が出てくるだろう。それがHTMLだ。

つまり、我々がネットで見ているテキストや画像などは、水面で優雅に泳ぐ白鳥で、その水面下ではHTMLという目に辛い言語が組まれているというわけである。

だが、ホームページを作れる人間全員がこのHTMLを手打ちできるというわけではない。特に個人の場合は、HTML知識がなくてもホームページが作れる制作ソフトやサービスを使っていることが多いだろう。

このようなソフトを使えば、テキストや画像など、最終的なできあがりを見たままの画面で操作でき、HTMLはソフトがその通りに自動で書いてくれる。それがなければ、インターネット創世記にあれだけ多くの個人サイトが作られることはなかったはずだ。

しかし、そのようなソフトがHTML誕生の瞬間にできていたとは考えにくい。本当のインターネット創世期では、ホームページとはHTMLが書ける選ばれし者のみが持てるものだったのだろう。

私もホームページを作っていた時は、そういったソフトを使いながらもHTMLに直接触ることもあったし、ブログになっても少しは使うことがあった。しかし、TwitterなどのSNSが主流になってからは触れることがなくなった。

そのHTMLが、知らない間に5まで来ていたということである。

HTML5
Webページの記述などに用いるマークアップ言語、HTMLの第5版。WHATWGの提唱した仕様を元に、Web関連技術を標準化しているW3Cで仕様の検討・標準化が進められている。 (IT用語辞典 e-Wordsより抜粋)

そしてHTML5で追加されたのが、音声を埋め込むaudioタグ、動画を埋め込むvideoタグ、任意のグラフィックスを描画できるcanvasタグということだ。今までWeb上で動画などを再生するときは、それこそFlashなどの別技術が必要だったが、HTML5であればそれらを使わず、HTMLだけでできるということである。

何せ当方は、Webやアニメーションの作成をしない側なので「そうか、ならばこれからはHTML5でおもしろコンテンツを作っていくわけだな、私以外の誰かが」としか思えないが、制作側からすると、外国人4コマ(わからなかったらググってくれ)の4コマ目になるほどの画期的進化なのかもしれない。

ともかく、「Flash終了のお知らせ」な今、次はこの「HTML5」なので早急に移行しておけよ、ということである。

移行しておけよ、と言われても、「HTML5」はソフト名ではないので、HTML5を使ったWebサイトや、アニメーションなどが作れるソフトがもう存在するのだと思い、「HTML5 作成 ソフト 無料」など、「エロ 動画 無料」と検索するのと全く同じノリでググッたところ、やはりすでにGoogleなどが、HTML5を使ったWebコンテンツを作成できるソフトをリリースしているようである。

そのソフトの画面を見たが、一からこれをマスターしろと言われたら気が重い。今までWebやアニメーションを制作してきた人間なら要領はある程度掴めているかもしれないが、やはり新しいソフトを使うというのは、業種は同じでも会社が変わったのと同じで、慣れるまで時間がかかるものである。

それまではどうしても「前のを使った方が早い」のだ。電卓も出たての頃は「そろばんの方が早い」と言われていたに違いない。よって、どの分野でも古い技術を使い続けている人はいる。2020年以降、Flashを使い続ける人もゼロではないだろう。

漫画でも、未だにアナログで描いている人はいるのだ。しかし現在では、本人は良くても「アナログで漫画が描けるアシスタントがいない」という問題が出ているようだ。

消え行く技術を使い続けると、どうしてもそういう弊害が起こるので、最新の技術を使うに越したことはない。しかし、技術は進化しても使う方の頭は退化する一方なので、そうすぐに新しいものへと変わらないでほしい。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年10月24日(火)掲載予定です。