2020年に、Adobeが「Flash」のサポートを打ち切るという。

Flashとは、Adobe Systems社による、音声や動画、ベクターグラフィックスのアニメーションを組み合わせてWebコンテンツを作成するソフト。また、それによって作成されたコンテンツ(IT用語辞典 e-wordsより)

つまり、アニメなどを作るWeb向けの動画作成ソフトである。「Flashゲーム」や「Flashアニメ」など2000年代のインターネットの進化の一翼を担った存在であり、このたびの「Flash終了のお知らせ」は一時代の終焉とも言える。

しかし実際この報を聞いて「終わった…」と膝から崩れ落ちている人は、長い期間Flashを使っていた人か、現在進行形で使っている人だけだと思う。少なくとも、Flashを自分で使ったことがなければ無感動だろう。

消費者はそれほど産地を気にしない

「Flashゲーム」や「Flashアニメ」をクソほどやったし見た、大学もバッチリ留年中退したという人でも、消費者側でしかなければ、Windows 2000に花添えて「青春さらば」と泣いたりはしないはずだ。

結局、それが何でできているかを気にするのは同じ製造者側であり、見る側としては使用ソフトのことなど、あまり気にならないものである。

pixivを見る時だって、全く自身が絵を描かない人間なら、素晴らしい推しの絵を前に「尊い」としか思わないだろうが、一応漫画家である私は、まず「尊い」と目頭を押さえ、5分ほど網膜を休ませたあと再度見て「尊い…!」と思う。そして次の日また見て「尊っ…!」と思う。

このように私ぐらいのレベルになると、神絵師と同じツールを使っても同じものが描けるわけではないとわかっているので、何を使っているかなんて全く気にしないし、そんなことを考えるのは逆に気が散っている、とさえ思えるが、多少でも向上心がある絵を描く人間は、「どんな画材やソフトを使っているのだろう」と気にしたりするものだ。

よって、私はおそらく「Flash」で作られたコンテンツを大いに楽しんできたであろうが、動画を製作したことがないため、それがFlashであるということはあまり意識したことがない。

「Flash」の存在を強く感じる事と言えば、何らかの動画(どんな動画かは言わない)を見ようと力強く再生ボタンを押したのに、何らかの動画ではなく「最新のFlashをインストールしてください」という文字が画面に表示されたときぐらいだ。そこから「Adobe」のサイトに飛び、「Flash」をインストールするまでの時間は、いつでも永遠のように感じられた。

ちなみにブラウザゲーム「刀剣乱舞」も現在「Flash」で稼動しており、「Flash」終了の報を受けて今後どうするかは検討中だそうである。あまり関係ないと思っていたが、とうらぶのキャラたちが「Flash」で動いていたとあれば一大事だ、と思ったら、よく考えたらゲーム内の彼らは全然動いてない。せいぜい画面の端から中央にゆっくりスライドしてくるとかだ。

むしろ止め絵だけなので、最悪GIFアニメとかでもなんとかなるんじゃないだろうか、「Flash」がなくなっても安泰である(編集注:Flashゲームはキャラの動作以外にもいろいろ動かす必要があるため、GIFアニメだとプレイできず、仮に移行するとしたらHTML5ベースのブラウザゲームとなる可能性があります)。

逆にコレだけ動かず喋らずの奴らが、2年以上人気を保っているのがすごい。高価なソフトを使えば良い絵が描けるわけじゃないのと同じように、キャラがアニメーションでヌルヌル動いてフルボイスなら人気が出るわけじゃないという好例である。

世界は滅亡しないが、サービスは終了する

では、なぜFlashが事実上オワコンになってしまったかというと「脆弱性、高負荷」の問題を解決できなかったからだそうだ。つまり、セキュリティがイマイチで、重くて電力を食うということだ。

パソコンならまだしも、携帯やスマホで、セキュリティが弱く省エネでない、というのは致命的で、iPhoneやiPadに搭載されているiOSがFlashを採用せず、そこから衰退が始まったという。

もちろん「Adobe」も、メンテに失敗したソシャゲのように突然やめると言い出したわけではなく、終わるのは冒頭言った通り2020年である。つまり、作る側はそれまでの間に、他の技術に移行しておけよ、ということだ。

iPhoneの件もそうだが、Macなどは2010年ごろからすでに「脱Flash」を始めていたようである。Flashを脱して次何になったかは次回にでも取り上げるとして、Flashを使っている人は早めに新しいツールへ移行した方がいいだろう。

だが、なかなか、やらねえんだな、これが。大企業レベルなら早々に移行するだろうが、これが中小企業やさらに個人レベルになると、ケツの重さが30トンぐらいになる。

数年前、漫画製作ソフト「ComicStudio」(略称:コミスタ)の販売が終了し「CLIP STUDIO」(略称:クリスタ)に移行したわけだが、その予告を受けコミスタ使いだった私が、すぐクリスタに移行したかというと、まあギリギリまでやらなかった。

使い慣れたものを捨て、また一から勉強し直すというのは気が重過ぎる。それに数年後のことなら今すぐやらなくても良い気がしたし、何より「そうは言ってもコミスタ終わらないのでは?!」と思っていた。

でも終わった。世界滅亡の予言は記憶している限りでは当たったことがないが、サービス終了の予告は大体実行される。

よって、Flashは本当に終わるのでFlash使いの人は早めに移行した方がいいだろう。重いケツを重いままにしておくと、終了間際に慌てて何もかもをやることになるため、一からのスタートがマイナスになりかねない。


<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集「ブス図鑑」(2016年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2017年10月17日(火)掲載予定です。