ネット社会の現代では、グルメのブームに火が付くのも"SNSがきっかけ"ということも多い。ここでは、流行に乗り遅れないために知っておきたいSNSで話題の"バズるグルメ"をご紹介。トレンドに敏感なクライアントや同僚たちの前で恥をかかないように、しっかり話題のグルメを押さえておこう。第17回は「#鶏皮」。

福岡発祥のグルメ「鶏皮」

鶏皮というと、一般的にはひと口大に切った鶏皮を串に刺し塩やタレで焼いたもので、焼き鳥屋で見る定番の串メニューのひとつだ。が、実はここ数年で、福岡では別の方法で調理した「鶏皮」が定着してきている。

  • 福岡で味わえる「鶏皮」は手間暇かけたご当地グルメ!

Instagramで「#鶏皮」(「#とり皮」「#とりかわ」を含む)のハッシュタグで検索すると、合計5万件以上(2020年1月現在)がヒットするが、実はその多くが福岡の「鶏皮」の写真だ。また「#博多鶏皮焼き」、「#博多とりかわ」、「#とり皮グルグル巻」といったハッシュタグや、鶏皮専門店の店名でも数多く投稿されている。

福岡で人気の「鶏皮」は、鶏肉の皮を使った串ではあるが、串に刺して塩かタレで焼くという一般的な串とは焼き方が全く違う。まず鶏皮を串にグルグルと巻き付けた状態にし、店独自の味付けをして下焼きをする。その後一定時間寝かせることで余分な脂を落とし、また下焼きをし、寝かせる。この仕込み工程を何度か繰り返した後、客の注文が入ってから表面を香ばしく焼いてテーブルへ提供するというものだ。一般的な鶏皮より見た目にも細く、色が濃い場合が多い。脂分を減らしていることで鶏皮独特の歯ごたえの弾力が増し、脂っこさが気にならなくなるので、スナック感覚で食べられる鶏皮が完成する。

福岡市内ではもともと焼き鳥の専門店が多いが、こうした福岡発祥の「鶏皮」を提供する鶏皮専門店も数多くあり、若い世代にも人気がある。Instagramでの投稿を見ると、「一度食べたらやめられない!」「無限に食べられる」というコメントが多く、実際、1~2本ではなく10本以上まとめて写真に撮ったものが目立つ。

仕込みに6日! 鶏皮専門店「かわ屋」

創業20年になる鶏皮専門店「かわ屋」は、福岡市内に3店舗、さらにフランチャイズで関東、関西を中心に全国に30店舗を展開しており、Instagramでも「#かわ屋」で5,000件以上がヒットする。

  • 店に入るとまず目に入るのが、カウンター上にある仕込みを終えた大量のとり皮! これをSNSで投稿する人も

同店の看板メニュー「とり皮」には、柔らかく脂肪の少ない喉の付け根部分の皮だけを使用。鶏皮をグルグルと丁寧に巻き付けている。1日に1回醤油ダレにつけて焼き、寝かせるという工程を6回繰り返すので、仕込みに6日もかかる。そうすることで鶏皮の余分な脂を極限まで落とすことができ、濃厚な旨味と独特の食感を生み出すという。

同店店長の中島豪さんは「味付けには醤油ダレしか使いません。6日間の仕込みで脂分を丁寧に落として、旨味と脂のバランスがいい7日目の状態で提供しています」と話す。

  • 仕込み前(写真右)から6回の仕込みを経る(写真左)と、脂が落ち一般的な鶏皮串とは全く別物に

相当な手間のかかる作業だが、福岡3店舗分だけで毎日100㎏以上の鶏皮を仕込んでいるという。「もともとは先代の店長が、原価が安い鶏皮にしっかりと付加価値をつけて、おいしい商品を作ろうと考えたのがきっかけです。今は福岡市内でも店舗が増え、認知されるようになりました」(中島さん)。

  • 仕込みを終えた「とり皮」は、7日目にやっと仕上げ焼き!

注文を受けてから客の目の前で仕上げの火入れをすると、仕込み作業で脂を極限まで落としたはずの鶏皮の表面にまだ少量の脂が染み出してきて、表面がカリッと仕上がる。「季節ごとの温度や湿度によって焼き具合は変わりますが、見極めながら焼いています」(中島さん)。

  • 「かわ屋」の「とり皮」(1本/110円)

一口噛むと、弾力のある歯ごたえにびっくりした。表面はカリッとした軽い食感だが、噛んでいくことで鶏皮独特の歯ごたえを感じ、噛んでいくとじわじわと鶏皮独特の旨味と醤油ダレが味わえた。見た目からは濃厚な味を想像していたがあっさりと食べやすく、鶏皮独特の脂っこさや臭みも感じない。パクパク食べられるおいしさだ。

この歯ごたえと旨味がクセになると評判でリピーターも多いそうだ。「世代や性別を問わず、とり皮の串を何本も召し上がりますよ。海外からのお客さんもたくさん召し上がります」と中島さん。

  • 筆者が取材した当日も、店内は家族連れやカップルでにぎわっていた

塩とタレの2タイプのとりかわ「博多とりかわ大臣」

福岡市内を中心に7店舗を展開する鶏皮専門店「博多とりかわ大臣」では、特製の「とりかわ」を提供。塩味、タレ味と2つあり、どちらも人気メニューとなっている。Instagramを見ると、「塩もうまい!」「30本はいける」などのコメントも多い。

  • 下焼きを重ね、味をしみこませた「博多とりかわ大臣」の「とりかわ」(1本/109円、KITTE博多串房・博多とりかわ大臣PLUSのみ1本/119円)は香ばしいと評判

国産の新鮮な鶏皮の脂分が少なく柔らかい喉の付け根部分の皮だけを使い、1本の串に約1.5羽分の鶏皮をぐるぐると巻き付けている。下焼きと味の漬け込みを丁寧に重ねた同店の「とりかわ」は、季節や食材の状態を見ながら仕込みを行っているそうだ。鶏皮に多く含まれる脂のうち、「仕込みによっておよそ7割程度を落として、鶏皮の旨味が凝縮されたものを提供しています」と同店を運営するチャネルティ代表取締役 山角斉さん。

2種の味付けのうち、タレは醤油ベースで甘みを抑えたもの、塩は胡椒やスパイスをミックスしたものを使用している。「塩もタレも同じくらいの人気で、ほとんどの方が両方注文しています」と山角さんは話す。

仕込み時に何度も下焼きをしているので、注文が入ってから表面をカリッと手早く焼き、香ばしく仕上げている。噛むと鶏皮独特の歯ごたえが楽しく、しっかりと中まで味が浸透していて、噛めば噛むほどジューシー。脂が十分に落とされているので、脂っこさは気にならず、旨味と歯ごたえを楽しめるのだ。飽きの来ない味わいでお酒との相性もよく、何本でも食べられてしまう。

「なかには、一人で20本食べるというお客様もいますね」(山角さん)というだけあって、この味がクセになっている利用者も多く、特に週末は若い世代から年配の方まで幅広い世代でにぎわっている。

福岡名物の「鶏皮」はじわじわと話題になっており、全国にも広がりつつある。福岡旅行の際に本場で楽しむもよし、全国で展開している店舗で味わうものよし。鶏皮の歯ごたえと旨味を凝縮した新感覚の鶏皮を、ぜひ試してみては。

※価格は特記がない限り税別