世の中の大半の仕事は、人がいることによって成り立つ。そもそも取引先がいなければ仕事の受注がないわけだし、上司や先輩のサポートもなくいきなりバリバリと業務はこなせない。

多くの他人が関係してくる以上、相手に対する敬意やマナーが必要となってくる。だが、職場で使用するツールの使い方や業務上必要なタスクを先輩社員からレクチャーされることはあっても、ビジネスマナーをイチから教えてもらった機会がある社会人は少ないはずだ。そのような人は、無自覚のうちに礼節を欠いた態度をとってしまい、ビジネスチャンスを逸してしまう恐れがある。

そこで本連載では、筑波大学および札幌国際大学の客員教授を務めながら、大学や官公庁などで「職場に活かすおもてなしの心」をテーマとした講演や研修を手掛ける江上いずみ氏に、社会人として知っておくべきビジネスマナーを解説してもらう。

  • 電話応対は会社の印象を決める大切な仕事(写真:マイナビニュース)

    電話応対は会社の印象を決める大切な仕事

新入社員が最初に身に付けるべきマナーの一つ

第3回から第5回にかけて、ビジネスマナーとしての言葉づかいについてお話ししてきました。

心を配り、美しい言葉を話すこと、正しい日本語を話すことは、その人の印象を大きく左右します。誤った言葉、見当違いの言葉を使っていれば、「言葉を知らない人」という評価を下され、その人自身の、ひいては所属する組織全体の印象の悪化につながってしまいます。

そういった言葉づかいを社外の人に評価される一番大きな機会が、電話での応対です。電話に出た社員の第一声、挨拶の言葉、声の大きさや速さ、言葉の選び方や話し方によって、その会社の印象が決まってしまいますから、電話応対はとても大切な仕事といえます。電話に出た人が新社会人なのか、ベテラン社員なのかは、相手にはわかりません。「私はまだ入社したばかりなので電話応対に慣れていません」などと言い訳するわけにはいきませんから、電話応対は社会人になったばかりの新卒社員が、最初に身に付けるべきマナーの一つといえます。

しかし電話は相手の顔が見えませんから、どんな人なのか、どんな表情でいるのかわからず、緊張してしまうという新入社員はとても多くいます。また、一度電話の対応で失敗して上司に叱責された経験があると、電話がかかる度に「同じ失敗をするのではないか」とさらに緊張することになってしまいます。

そして自分の電話応対を職場の周囲の人たちに聞かれていることが、緊張に輪をかけます。「間違った敬語を使っていたらどうしよう」。そんな危惧と不安で、受話器を持つ手が震えるほどの緊張を感じてしまいます。

「電話応対なんて、電話に出て担当者に取り次ぐだけ」と言うと簡単に聞こえるかもしれません。しかし、緊張してまごまごしたり、電話の声がきちんと聞き取れず対応に困ったりしたなどの経験から、電話応対が苦手になってしまう人が少なからずいます。

電話応対には慣れが必要です。基本のやり取りを覚えて積極的に電話に出るようにすれば苦手は克服されます。では、具体的にどのようなポイントに配慮すればよいでしょうか。

電話応対の3つの鉄則

電話応対は見えない相手に対する配慮、気遣いが必要です。そのためには3つの鉄則「迅速に」「正確に」「親切・丁寧に」を心がけることが大切です。

「迅速に」

1.電話の出方 「もしもし」はNG

「もしもし」はもともと、「申す申す」を略した言葉です。略語を目上の相手に対して使うのは失礼だという考え方から、ビジネスシーンにおいて使用するのは相応しくありません。電話は秒単位で料金が加算されますから、迅速に対応することが大切です。

2コール以内に率先して出て、「はい、株式会社〇〇〇でございます」とシンプルな表現で出ます。もし3コール以上お待たせしてしまったら「お待たせいたしました。株式会社〇〇〇でございます」、5コール以上お待たせしてしまったら「たいへんお待たせいたしました。株式会社〇〇〇でございます」とお詫びのひと言を付けると好印象です。

2.保留時間は30秒までがリミット

「迅速に」ということでいうと、電話で相手を長く待たせたり、たらい回しにしたりすることは避けなければなりません。長くお待たせすることが予想される場合には、「申し訳ありませんが、もう少々お待ちいただけますでしょうか?」と一旦断りを入れてから保留にしますが、それでも30秒がリミットです。それ以上お待たせするようだったら、こちらからかけ直すことを提案しましょう。

「正確に」

3.電話の横にはメモと筆記用具

電話の要件や相手の名前を正確に名指し人に伝えるためにきちんとメモを取ることが大切です。いつ電話がかかってきてもいいように、常にメモとペンを電話の横に置いておきましょう。

4.受話器を取る手はどっち?

電話に出て名乗られたら、すぐにメモを取らなければなりませんから、利き手(右利きの人は右手)にペンを持つことになります。従って受話器は利き手ではない方(右利きの人は左手)で取るようにしましょう。

「親切・丁寧に」

5.笑声で

表情と声のトーンは連動するものです。笑顔で話すことにより明るいトーンの声を出すことができます。受話器を通して笑顔は伝わりますから、笑顔の声=「笑声」の聞き取りやすい声で出ましょう。

6.声のトーンを意識する

電話応対は、明るく、はきはきした声が基本ですが、相手の状況や内容によっては声のトーンを変えなければならないこともあります。例えば内容がクレームやご意見で、相手の怒りや憤慨を感じたら、こちらの声のトーンも抑えて、お詫びの気持ちを表すことになります。電話の内容によって声のトーンを変える必要があることを認識しましょう。