日本で英語を勉強する私達には簡単には超えられない壁がある。それはネイティブの話すスピードだ。

本場の英語のスピードといったらそれはもう容赦がない。いくらTOEICのリスニングでいい点を取ろうとも、海外に行くとまったく聞き取れないことが多い。

TOEICのリスニングは実際の英語よりも実はスピードが遅いとも聞く。市販のリスニング教材は日本人が聞き取りやすく作られているものも多い。日本の英語教材で勉強する限り、それらは教材用に手加減してあるので、本場では通用しないのだ。

CNNなどの英語のニュース番組も聞き取りやすい部類なので学習者には定番だが、CNNばかり聞いていてはいけない。いつまでたっても映画やドラマが聞き取れるようにはならないし、普通の人との会話もできるようにはならない。

日本人は単語は知っているほうなので、後はスピードなのだ。本場モノのスピードで訓練しなければ本場の英語が聞けるようになるはずもない。"Comfort zone"から抜け出さなければ。

"かわいいにもほどがある"とYouTubeでブレークしたネットアイドルのベッキー・クルーエルが表紙を飾る『ベッキー・クルーエルde英語耳』

そんな問題意識を持つ私の目に飛び込んできたのが本書『ベッキー・クルーエルde英語耳』(松澤喜好/ブリティッシュ・カウンシル 著/アスキー・メディアワークス)だ。

YouTubeに自分のダンスを載せたところ「かわいいにもほどがある!」と日本でブレイクした英国人アイドル ベッキー・クルーエルと、「英語耳」で有名な松澤先生がタッグを組んだとな?

さらに、スクリプトはあのブリティッシュ・カウンシルが書いているとな! うーむ、さらに信頼が置けてくる。

昨年の12月24日に発売されたこのDVD付きの書籍は、私へのクリスマスプレゼントにも思えた。さっそく買わねば、ということで書店で購入。

この本は「友だちとの会話編」と「仕事での会話編」の2冊が同時発売されていて、どちらも2,499円となっている。ややお高いが、DVD付きだからしょうがないですね。

で、どちらを買ったかというと「友だちとの会話編」。本コラムは「必要以上!?のビジネス英語マスター術」なので「仕事での会話編」を買うべきだったかな? 最近Skype英会話で日常会話をしているので、そっちに興味があるんですよね。

ということで中身の話。DVDには英国人アイドルのベッキー・クルーエルと、米国人アイドルのレベッカ・クルーエルの2人の会話が収録されている。ちなみに2人は姉妹ではなく、クルーエルとは事務所の名前らしい(なんだそれ?)。ベッキーは早口のイギリス英語、レベッカは私には聞き取りやすいアメリカ英語である。

ストーリーはいくつかのパートに分かれている。パーティーで知り合う、電話して映画に誘う、お金を下ろして映画とカフェに行く、友達の部屋に遊びに行く、プライベートな会話をする、といったものだ。

ベッキーと会話するという趣旨の教材なので、私達はレベッカの役をすることになる。DVDの機能で英語字幕/日本語字幕/字幕なしの切り替え、レベッカの音声のあり/なしを切り替えて、徐々に高度な訓練をするようになっている。

これはただの会話が収録されているDVDではない。「英語耳」で松澤先生が各章ごとに訓練のポイントを解説してくれている。

基本はDVDに合わせて50 - 100回音読をしなさい、というものだ。私は今、最初のパートを音読しているところだが、ベッキーのしゃべりは早い。またイギリス英語なのでちょっとした新鮮味を感じる。

後のパートでは、ディクテーションやシャドウイングが課せられており、これをこなすのは結構しんどいような気もする。英語耳を作るのは容易ではないなあ。

全編、基本的にガールズトークなので、英国人アイドルとおしゃべりしたい(した気になりたい)人にはよい訓練になるのではないか。音声だけでなくDVDで映像もあるので、臨場感が沸きますねえ。

注目表現を紹介しておこう。

  • I like loads, but I still really love~ … いろんなのが好きだけど、~が今も好き
  • Are you into manga? … マンガは好き?
  • How about meeting in Shibuya? … じゃ渋谷で待ち合わせはどうかな?

こんな感じの会話が延々と繰り広げられるのだが、特に受け答えにおいて短く答える表現が多く含まれている。たとえば、次のような表現がたくさん出てくる。

  • Sorry? … なんて言ったの?
  • Yeah, I guess so. … そうね
  • Yes, it's good fun. … うん、楽しいよ
  • Yeah, definitely! … もちろん!
  • No way, that's amazing! … まさか? すごいね!

また、Wow、Yeah、Coolがやたらと出てくる。まさに友だちとの会話ならではだ。こういう表現が自然に出てくるように音読を繰り返そう。

詳しくはこのビデオでDVDの内容が紹介されている。

このDVDのスピードに慣れることができた暁には、TOEICのリスニングも余裕を持って臨めると思う。ぜひ継続させていきたい。

今回は女の子どうしの会話だったが、ベッキーのファンは男子が多そうなので、男女の会話のほうが良かったのではないか。異性と会話するというシチュエーションのDVDを外国人と親しくなりたい日本人男子/女子向けにぜひ開発してほしい。

この本、英語教材としての新たな方向性を感じる仕上がりになっている。英語学習は楽しくないと長続きしないものだが、こういう教材を今後も期待したい。

パーティでベッキーと知り合う。自己紹介をしよう

待ち合わせに遅刻して謝るベッキー

ベッキーとショッピング

ベッキーの部屋でプライベートな会話をする

著者紹介

本多義則 (Yoshinori Honda)

日立製作所勤務のIT系研究者。10年前に趣味と実益を兼ねて英語学習を再開以来、アナログからデジタルまであらゆるツールを駆使して英語学習に励んでいる。職場では「英語ができる男」と見られているが、実はそうでもない真の実力との差を埋めるべく、英語学習をやめられなくなっている。休みの日の朝は英語のメルマガ執筆にいそしむのが習慣。取得した英語関連の資格は、英検1級、TOEIC955(瞬間最大風速)、通訳案内士(英語)。座右の銘は「あきらめない限り必ず伸びる」。著書に『伸ばしたい!英語力―あきらめない限り必ず伸びる』Twitterアカウントはこちら