STMicroelectronicsの日本法人であるSTマイクロエレクトロニクスは2019年1月16日から18日にかけて東京ビッグサイトにて開催されている、自動運転、クルマの電子化・電動化、コネクティッド・カー、軽量化など、自動車業界における先端テーマの最新技術が一堂に介する展示会「オートモーティブ ワールド 2019」において、自動車を取り巻く「電動化」と「電子化」という2つのトレンドをテーマに、さまざまな半導体デバイスを活用したデモ展示を行っている。

ST初のグローバルシャッター採用イメージセンサ

電子化としては、同社初のグローバルシャッター方式を採用したCMOSイメージセンサを用いた人物の目線や姿勢検出デモなどを見ることができる。

同イメージセンサは、2.3Mピクセル@60fpsで、かつHDR機能も搭載した車室内のセンシング用カメラシステム。近赤外線によるフラッシュをシャッターを切るタイミングだけ発し、人物の視線などを検出する。3.2μmピッチで、ディープトレンチ素子分離(Deep Trench Isolation:DTI)技術を活用することで、隣接する画素とのクロストークノイズを減らすことに成功しており、よりはっきりとした映像表現を実現できるという特徴がある。

  • グローバルシャッター方式のCMOSイメージセンサ

    グローバルシャッター方式のCMOSイメージセンサ

また、HDRを活用したバックグラウンド除去技術により、人物以外の背景を除去することで、処理の負担を軽減することも可能となっているという。現在サンプル出荷中で、2019年第3四半期の量産開始を予定しているという。

  • グローバルシャッター方式のCMOSイメージセンサ

    グローバルシャッター方式のCMOSイメージセンサを用いた人物検出デモの様子。アルゴリズム自体はパートナーのイスラエルのJungoが手がけたという

PowerからCortex-R52へ、車載マイコンコアを変更

また、車載用32ビットマイコン「SPC58 Chorusシリーズ」を用いた車室内のさまざまなエッジ機能をセントラルゲートウェイに接続するという包括的なデモも見ることができる。

  • 車載用32ビットマイコン「SPC58 Chorusシリーズ」
  • 車載用32ビットマイコン「SPC58 Chorusシリーズ」
  • を活用した車内のさまざまなコンポーネントをセントラルゲートウェイに接続したデモの様子。車室内を模した壁面につけられているデモボードすべてが稼動している。手前には各製品ラインごとの評価ボードも展示されている

セントラルゲートウェイには、ハイエンドに位置づけられるChorusのGラインが採用されたボードが活用されているが、同社では現在、そのGラインを上回るHラインのサンプル出荷を開始。同製品を搭載したボードの展示も行われている(量産は2020年を予定)。

  • Gラインの評価ボード

    ChorusのGラインを搭載した評価ボード

Hラインでは、ハードウェアセキュリティ機能であるハードウェアセキュリティモジュール(HSM)として、EVITA(E-safety vehicle intrusion protected applications)が規定するもっとも高いセキュリティレベルEVITA Fullに対応するほか(GラインはEVITA Medium)、インタフェースとしてCAN FDが16ch(Gラインは8ch)、イーサネットの伝送速度も1Gbps(Gラインは100Mbps)、搭載されるフラッシュの容量は最大10MB(Gラインは6MB)と、さまざまな面での機能強化が図られている。

  • ChorusのHラインを搭載した評価ボード

    ChorusのHラインを搭載した評価ボード

また、実物のデモなどはないが、さらにその次の世代の製品についての紹介も行われている。2023年ころの自動車をターゲットとした次世代品は、従来のPowerアーキテクチャから、Arm Cortex-R52コアへと変更がなされ、動作周波数は従来比2倍の400MHzへ、コア数も従来比2倍の6コア(ロックステップは別)へと引き上げられ、コアパフォーマンスも同5倍ほど向上する予定だという。また、プロセスとしても28nm FD-SOIを採用するほか、組み込みフラッシュではなく、組み込みPCM(相変化メモリ)を採用。その容量も16/32MBとしている。車載用途でいきなりPCMを採用するという点について、OEMやティア1がどう受け止めるかはまだ未知数なところもあるが、少なくとも、組み込みメモリとしての社内評価(PCM自体はSTとIntelが合弁で立ち上げたNumonyxが開発をしてきたが、Micron Technologyが同社を買収。その後、Micronと共同で研究を進めてきた)では、懸念となるような点はでてきていないとのことで、今後、OEMやティア1などに対して、そうしたデータを提供していくことで、信頼性などに問題がないことなどを示していきたいとしていた。

EV/HEVのトラクションモーターを制御するSiC MOSFET

一方の電動化としては、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)のトラクション電動モーターを制御するトラクションインバーターをSiC MOSFET32個で実現したリファレンスモデルを用いたタイヤの回転デモが行われている。

すでに量産実績のあるSiC MOSFETをリファレンスとして示したもので、6つのゲートドライバで36個のSiC MOSFETを制御。マイコンも搭載されており、途中で回転速度が変化する様子なども見ることができる。

なお、同社は自社でSiCのエピ成長なども手がけることで、高品質を実現。こうしたEV/HEV向けトラクションインバータのようなSiCでなければ実現できないアプリケーションも多数でてきていることを実感しており、世界でもっともSiC MOSFETの量産を行っているノウハウを生かし、さらなるSiCの市場拡大を目指していきたいとしている。

  • SiC MOSFETトラクションインバータ向けリファレンスボード
  • SiC MOSFETトラクションインバータ向けリファレンスボード
  • SiC MOSFETトラクションインバータ向けリファレンスボード
  • SiC MOSFETトラクションインバータ向けリファレンスボード
  • SiC MOSFETトラクションインバータ向けリファレンスボードを用いたタイヤの回転デモの様子。SiC MOSFET自体は基板の下側にズラッと並べられている。リファレンスボードといっているが、これ自体は提供を行っていないので、もし使ってみたいと思った場合は、要問合せ、とのことである