日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会を訪れた安東弘樹さん。計8台の輸入車一気乗りは、ジャガーのステーションワゴン「XF スポーツブレイク」から始まった。同社のSUV「F-PACE」を所有する安東さんだが、愛車と比べ、「XF スポーツブレイク」には洗練された部分があると感じたそうだ。

※文と写真はNewsInsight編集部の藤田が担当しました

  • 「XF スポーツブレイク」と安東さん。このクルマのエクステリアで気に入った部分を指差してもらった。愛車「F-PACE」と比べるとリア全体の面積が狭いので、ひとつひとつのパーツが大きく見えるとのこと

購入を検討していたジャガーのステーションワゴン

JAIA試乗会は、参加するクルマ(今回は計69台)から乗ってみたいものを選んで事前に申込み、抽選で当たったクルマに乗るというシステムになっている。つまり、今回の試乗会で乗った8台は、何らかの理由で安東さんが乗ってみたいと考えていたクルマなのだ。

それでは、「XF スポーツブレイク」に乗ってみたいと考えた理由とは何か。ご本人に聞いてみると、「個人的に興味があったのと、これの四輪駆動が出ると聞いたので、それが出たら購入を考えてみようかなと思っていたので」とのことだった。

確かに、「XF スポーツブレイク」には先頃、四輪駆動のモデルが追加となっている。すでにメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」の購入を決めた安東さんだが、この「XF スポーツブレイク」も、購入検討リストに入る寸前だった模様だ。

ここからは、「XF スポーツブレイク」に同乗して聞いた、安東さんのインプレッションをお伝えしたい。

  • 「全長はこちらの方が少し長いと思うんですけど、ほんと、F-PACEを低くした感じのクルマですね。私のクルマと色も同じだし」(安東さん)

安東さん(以下、安):(走り出してすぐ)軽っ! 「F-PACE」に乗りなれているので、だいぶ軽く感じますね。

自分のクルマよりも重心が低いので、走りが安定してますね。その代わり、やっぱり、道が悪いところとかだと、SUVには絶大な安定感がありますよね。縁石とか、「普通のワゴンだとこすってた」って思うことがありますし。一長一短というか。

編集部(以下、編):室内の感じはいかがですか?

安:乗ってみると、すごく開放的というか、明るいですね! パノラマルーフもF-PACEより広く感じます。パノラマルーフの真ん中に開閉用の線がないことも、見た感じに影響しているんでしょうね。ただ、グラス部分が開かないところは、ちょっと残念かなー。解放感と利便性と、どちらを求めるかで評価は変わってきますけど。

編:F-PACEと比べて乗り心地はどうです?

安:こっちの方が安定してはいるんですけど、ただ、サスペンションストロークが、おそらくF-PACEの方が長いので、路面からのコツコツ感というか、凸凹が直接伝わってくるような感じはありますね。“硬い”とまではいいませんけど、その分“スポーティー”ではあります。

単純に乗り心地でいうと、F-PACEの方が“ゆったり”していていいのかもしれませんけど、走りとしての軽さは、断然こっちですね。同じエンジンですけど。こういうところ(※)を走ると、やっぱり重心が低いので、圧倒的に走りやすいですね。

※編集部注:「XF スポーツブレイク」では、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテルから箱根ターンパイクに向かった。「こういうところ」とは、ターンパイクの曲がりくねった山道のこと。

安:あー、トルクがあるなー! ここ(ターンパイク)は何回もF-PACEで走ってますけど、いい比較になります。重量の差もあるし、XF スポーツブレイクはFR(後輪駆動)っていうのも影響していると思いますけど、はるかに軽快ですね。

しかし、こんなに良いエンジンだったかな……。やっぱりこれ、気のせいではなく、エンジンが(愛車のF-PACEと比べて)洗練されてますね。音も静かになっているし、スペックこそ全く変わっていませんけど、全然違いますね。回り方も滑らかだし、振動も少なくなってます。

  • 試乗した「XF スポーツブレイク」(画像)は、安東さんが所有する「F-PACE」よりも後に発売となったモデルだった。新しい分、エンジンを含む各所に改良が加えられているのだろう

編:ジャガーって、サルーンかスポーツカーのイメージが強くて、最近はSUVに力を入れている感じですけど、あえてステーションワゴンを選ぶ方の気持ちとは?

安:オシャレなんでしょうね、セダンよりも。ちょっとアクティブな生活を送っているイメージというか。ただ、クロスオーバーワゴン(※)みたいなクルマがあるといいなと思いますね。「レガシィ」(スバル)のアウトバックとか、ボルボのクロスカントリーみたいな。

※編集部注:セダンとSUVの“いいとこどり”のようなクルマ。この車種の特徴や歴史については以前、自動車ライターの大音安弘さんに解説して頂いたことがあるので、こちらの記事でご確認いただきたい。

編:日本車にはクロスオーバーワゴンの選択肢が少ないと思いますが、増えて欲しいですか?

安:そうですね、今はレガシィくらいしかないですもんね。昔は日産の「ステージア」にすらあったのに……。ステージア、よかったけどなー! クロスカントリーみたいなクルマで、私も欲しかったですもん。ボルボのクロスカントリーには乗ってたことがあるんですけど、すごく便利でした。

  • ジャガーに乗りながら、日産「ステージア」を懐かしむ安東さん

編:先ほど、FRの走りについてお話になっていましたが、やはり「クルマといえばFR」みたいな感覚って、あるんですか?

安:私には、それはないですね。このクルマも、四輪駆動だったら購入を考えたんですけど。

最近は、東京でもドカ雪が降ったりするじゃないですか。カチカチになった路面で、スタッドレスを履いたFRのクルマが全く動けなくなっている状況を見たりもするので、いざという時のことを考えると、四駆がいいですね。あと、タイヤが4つ付いているので、折角なら(?)4つのタイヤが駆動して欲しいという気持ちが、どこかにあって。サーキットを攻めるような走り方というか、ドライ路面で振り回すんだったらFRの方が楽しいんでしょうけど、僕はやっぱり……。ポルシェも四駆ですしね(※)。

※編集部注:安東さんの愛車「911 カレラ 4S」は四輪駆動、マニュアルトランスミッション(MT)、右ハンドルという仕様だ。

安:FR至上主義みたいな考え方って、なぜ生まれたかというと、昔はFF(前輪駆動)のクルマがよくなかったからですよね。サーキットをFFで走っていると、アンダーステア(カーブの時、外側にふくらんでしまうこと)が出て、まともに曲がらない、みたいな。

以前、「トップ・ギア」という番組で、当時は出たばっかりだったオペルの、確か「アストラ」のスポーツモデルだったと思うんですけど、そのクルマに乗っていつもの飛行場サーキット(?)で攻めようとしたら、面白いほど曲がってなかったですもん。ジェレミー(※)が「アンダーステアー!!」とか、「このステアリングは何のために付いているんだ!!」とか叫んでて。昔のFFって、そういうところが確かにありましたからね。そのクセを知っている人が、FR至上主義みたいになったんだと思うんですが、今はFFや四輪駆動のクルマもよくできているし、ネガティブな要素は限りなく減ってきていますから。

※編集部注:「トップ・ギア」は英国のBBCが放送している自動車番組。ジェレミーとは、以前司会者を務めていたジェレミー・クラークソンのこと。クルマ好きの人に話を聞いていると、しばしば話題にのぼる番組だ。

  • 試乗した「XF スポーツブレイク」はFRだったが、四輪駆動モデルも購入できる

XF スポーツブレイクの試乗では、愛車のF-PACEと比べ、洗練の度合いを増しているエンジンに何度も感嘆の声を上げていた安東さん。次に乗るクルマは、FCAジャパンのアバルト「695C Rivale」とジープ「ラングラー」だ。ひょんなことからマクラーレン「570S Coupe」にも乗ることができたので、その時の様子もあわせてお伝えしたい。