日本全国にグループ合わせて100店舗のインターネットカフェ・まんが喫茶「メディアカフェポパイ」を展開している株式会社サンコーでは、社員間のタイムリーな情報共有をどのように加速していくかという課題を抱えていた。店舗は全国各地にあり、電話やメールの通信手段ではどうしても時間がかかっていた。顧客のニーズをつかみ、ライバル店との差別化を図るためにはもっとタイムリーな情報共有や素早い判断が必要だと考えた同社は、店舗に1台ずつスマートフォンを配備し、LINEを活用したコミュニケーションを導入した。すると業務スピードが格段にあがったという。

その概要は以下の動画のようなものだ。


スマートフォンとLINEで業務スピード向上

株式会社サンコー 株式会社カキタ 常務取締役 上石安寿氏

「店舗数が増えてくると、連絡と情報共有の方法が課題になります。現場を管理する店長は店舗に出て接客対応しているため、営業時間中にわざわざ事務所に戻ってPCからメールを確認したり、報告業務をこなす時間が取れず、ついつい後回しになっていました。本社側では、店舗の様子を把握し、店舗のノウハウを他の店舗に共有して相乗効果を上げたいと考えますが、従来の電話とメールの方法ではスピード感が足りません」と語るのは、常務取締役の上石安寿氏だ。

そこで同社は2014年3月、店舗に一台ずつスマートフォンを配置し、店舗共有の端末として利用を開始すると同時に、店舗連絡ツールとして「LINE」アプリも導入した。

店舗でスマートフォンを使うルールを記載した札をつけて店舗に配置(左)、店舗内での業務連絡をLINEで共有(右)

運用をスタートすると、店舗内でまず効果が表れた。店舗には、アルバイト店員が店を任される時間帯がある。そこで、アルバイト店員が対応に困った時に、スマートフォンを活用する。例えば「備品が壊れました。どう対応したらよいでしょうか」とLINEにメッセージを打ち込み、スマートフォンのカメラ機能で撮影した状況写真も貼付する。すると店長から即座に回答メッセージが届く。

「以前は、アルバイトさんから店長への連絡や報告などは、事務所に連絡ノートを設置しメモを貼ったり、電話をかけたりしていましたが、解決までに時間がかかっていました。LINEは、時間を気にせず気軽に報告や相談ができるので、すぐに答えを得られ行動できます」(上石氏)

店舗から本社への連絡もLINEでスピードアップした。例えば見積書もLINEで確認・承認を行う。見積書の紙面をスマートフォンのカメラで撮影し、LINEでマネージャーへ送付する。これなら、どこにいても即座に確認・承認してもらえるので即発注まで進められる。以前は、PCメールでやり取りしていたため、数日を要していた。

株式会社サンコー 株式会社カキタ メディア事業部 西関東ブロック統括ブロックマネージャー 金子創氏

「お客様が店頭にないコミックなどをリクエストできるシステムがあります。そういったリクエストも、LINEで申請を受けて即承認すれば、すぐに店頭に揃えられサービス向上につながります。当然大きな金額であればきちんとした手順を踏んで決裁を通しますが、ある程度の範囲であればスピード重視で判断しています」と語るのは、10店舗を管理するマネージャーの金子創氏だ。

担当する10店舗の様子は、LINEを使って細かく状況を把握していると金子氏はいう。

「『今、どうなっていますか?』と聞けば、すぐに写真付きのメッセージが戻ってきます。離れた場所にいながらそばで仕事をしているようなやり取りが可能になりました。実際に店舗に訪問もしていますが、良い点を見つけたら、すぐにLINEのグループで他店の店長に共有しています。以前は主な連絡ツールは電話でしたので、伝えられる情報は限られており直接様子を見に行くまでは、店舗がどのような状態か把握するのに時間がかかっていました」(金子氏)

電話でのやり取りは、接客中で電話に出られず、何度もかけ直すやり取りも発生していた。LINEならメッセージを送っておけば、相手もタイミングをみて返信できるため報告しやすい環境になった。

店舗同士のコミュニケーションも活発に

店長同士のコミュニケーションも活発になった。各店舗では、季節ごとのイベントに合わせて店舗のレイアウトを変更している。その様子を自発的にLINEグループに投稿しあうようになった。例えば、ワールドカップの時期には、サッカーのコミックを集めて一つの棚を展開するが、そういった店舗の様子をお互いに共有して参考にできる環境ができた。

「LINEに投稿された他の店舗の様子は刺激になります。良いものがあれば自分の店舗でも真似をしたり、自分の店舗でもさらに面白い工夫をしようと店長同士で競い合っています。よいものをみんなに見せて驚かせたいという気持ちが働き、プラスの循環がおこっています」(上石氏)

店舗同士で店内のレイアウトを投稿しあう(左)、店舗の店長からコメントが投稿、店長同士の意識が高まる(右)

スマートフォンの導入は総合的にはコスト削減に

以前は電話でのやり取りがメインだった同社では、通話コストの削減も課題のひとつだった。1店舗あたり5,000~3,000円ほどかかっていた通話料金は、スマートフォンに切り替えたことでほぼ基本料金のみで収まるようになった。

「LINEに投稿しておけば事足りることがほとんどです。また、店舗にはWi-Fi環境を設置していますので、無料のLINE電話も活用しています。スマートフォンの導入コストを考えても切り替えてしまったほうが安い。業務をスピードアップする課題も解決しましたし、導入した効果を実感しています」(上石氏)

LINEの業務活用というと、セキュリティ面が気がかりだが、その点について上石氏はこう語る。

「店舗はお客様が来店される場所なので、機密情報は置いてありません。LINEのやり取りは店舗の業務運営に関わるものなので、特にセキュリティの心配がない情報です。社外秘や、個人情報に関わるようなやり取りは、LINEでは扱いません。情報を切り分けて扱うことで、かつては考えられないほどのスピードで仕事ができるようになりました。最終的にはお客さまへ提供するサービスが向上したと思っています」(上石氏)

インターネットカフェは、時代の移り変わりとともに変化している。開業当初はコミックや雑誌が主流だったが、やがてインターネットの普及とともに、ネット利用の顧客が増えた。そしてここ数年は、スマートフォンの普及により、再びコミックや雑誌、ダーツやカラオケなどアミューズメントを求める顧客が増加している。

「生き残るには、お客様のニーズをタイムリーに取り入れ魅力的な店舗を展開し続ける必要があります。そのような中で、スマートフォンは業務に手放せないツールとなっています」(上石氏)