「早くRPAを導入して効果を出したい」――。

RPAの導入を検討されている人なら誰もがそう考える。ただし、導入するためには、まずは予算化が必要だ。予算の承認を得るには、当然上司の理解も必要になる。上司の中には「RPA」という新しい技術に投資することに懐疑的な人もいるだろう。

推測だが、導入に懐疑的な上司がいる場合、一般的なRPAの紹介や他社での成功事例、投資金額の説明だけで承認を得るのはなかなか難しい(もちろん上申者の工夫により承認を獲得できるケースもあると思うが)。そこで、説得力を高めるために必要なことは「自分の会社でRPAを導入すれば、このぐらいの効果が期待できる」という具体的なデータだ。

RPAの導入効果データを活用して社内予算を獲得する

RPA導入前に効果を把握できるのか? 疑問に思う人も多いだろう。RPAやAIのように新しい技術の導入を検討する際は、個々の会社向けに検証フェーズを設定することが通例だ。

これを一般的にはPOC(Proof Of Concept、概念実証)と呼んでいる。POCでは一体何をするのか? 進め方はさまざまだが、今回は2つのパターンを紹介しよう。

パートナー会社とともにPOCを進めるパターン

1つめはパートナー会社の技術支援を受けながらPOCを進めるパターンだ。「トレーニング+ロボット開発(数体)+検証・評価」という内容が一般的。ロボットエンジンに関するトレーニングを受け、基礎を理解したところで、自社でRPA化してみたい業務(高い導入効果が期待できる業務)のロボットをパートナー会社の支援を受けながら数体開発する。「ユーザーが開発するのか?」と思うかもしれないが、導入後の簡単なメンテナンスをユーザーで対応することを考えれば、ユーザーが開発スキルを身に着けておく必要性があるのだ。

検証も含めて、予定したロボットが完成したら、従来の手作業と比べ、どの程度効率化できたのかを評価。省力化できた時間とそれに見合った人件費を定量的に把握する。このデータを元に本格導入の資料を作成すれば、現実味のある説明が可能だろう。

このパターンのメリットは、パートナー会社の技術支援を受けられるため、既定のスケジュール通りに評価用ロボットを開発できることだ。もちろん評価用に開発したロボットを本運用で活用することもできる。また、パートナー会社によっては、ロボットを効率的に開発するための部品などを持ち合わせている場合もあるので、このPOCフェーズで入手しておけば、自社開発を進める際にも役に立つだろう。

デメリットはパートナーの支援を受ける分、費用が高くなることだ。高いと言っても数百万円程度の場合が多いようなので、RPA導入後の効果を考えればそれほど高価なものでもない。

ユーザーが主体的にPOCを進めるパターン

もう1つは、パートナー会社の支援を最低限に抑え、ユーザーが主体的にPOCを進めるパターンだ。パートナー会社に依頼する内容は、ロボット開発に関するトレーニングのみ。トレーニングだけ受けて、あとはユーザーが自分たちで開発し、評価する。非常に自律的なPOCだ。

このパターンのメリットは、なんといってもコスト。トレーニングだけなので、数十万円レベルのコストで実現できる。予算取りが非常に厳しい場合でも、受け入れられやすいPOCである。

デメリットは、納期と品質だろう。まず不慣れなユーザーのみで評価用ロボットを開発するため、予定通り開発が進まず、POCの期間が延びる可能性がある。同様に、開発したロボットの品質面にも多少心配が残る。どうしても不安であれば、パートナー会社にあらかじめ技術支援を一定量依頼しておくことも考えられる。トライアルと割り切れば、非常にリーズナブルに実現できるPOCといえる。

POCが終了し、導入効果データを活用して、RPAの本格導入の社内承認が得られれば、次は、いよいよRPAの導入だ。次回は導入時におけるポイントを紹介する。

著者プロフィール

秋葉尊

秋葉 尊

オデッセイ 代表取締役社長

大学卒業後、NECに入社。
20年にわたり中堅企業や大企業に対するソリューション営業やマーケティングを担当。
2003年5月にオデッセイ入社、代表取締役副社長に就任。
2011年4月代表取締役社長に就任、現在に至る。

ATD(Association for Talent Development)タレントマネジメント委員会メンバー、HRテクノロジーコンソーシアム会員、日本RPA協会会員を務める。