2018年4月24日、仮想通貨交換業を手がける16社は、認定自主規制機関の認定取得を目指す新たな一般社団法人「日本仮想通貨交換業協会」を発足させた。何やら重要そうなニュースだが、そもそも「認定自主規制機関」とはいったいどのような組織なのだろうか。

法律ではカバーしきれない細かいルールを制定する組織

認定自主規制機関とは、金融庁から認定を得ることで設立できる組織だ。業界の健全な発展および利用者の保護を目的に、自主規制や会員規則を定めるほか、ルールに基づく会社運営が行われているかといったチェック、資格試験の実施、営業員の管理、業界動向の集計などを行う。

法律や内閣府令が大枠のルールであることに対して、仮想通貨交換業者を中心に運営される認定自主規制機関では、業界の実情を反映した細かいルールを作成・運営していくイメージだ。

また、業界に新規参入する企業に対して、事務手続きや体制づくりの方法、規定整備についてのアドバイス、業界動向の相談なども実施する。仮想通貨を用いた新たなサービスを検討している場合は、中立的な立場から、ビジネスの実現性について相談できるようになるだろう。

仮想通貨事業者協会(JCBA)と日本ブロックチェーン協会(JBA)

新しい自主規制機関について説明するうえで避けて通れないのが、仮想通貨業界にある既存の2団体。仮想通貨事業者協会(JCBA)と日本ブロックチェーン協会(JBA)だ。

JCBAは仮想通貨ビジネス勉強会を前身として設立された組織。金融機関が仮想通貨を扱うときに必要な法制や税制の解釈に関する研究会としての性質を帯びている。会員には銀行や証券会社といった金融機関が多い。

一方、JBAは、ブロックチェーン技術の普及と標準化を目的として設立された。最新の技術動向や利用方法の紹介などを行っており、分科会に仮想通貨部門が存在する。参加企業は、ベンチャーやシステムインテグレーションなど、ITの関連会社が中心だ。

既存の団体があるのであれば、「JCBAかJBAが自主規制団体を目指せばいいのではないか」と思う人がいるかもしれないが、そううまくはいかなかった。JCBAとJBAは仮想通貨交換業者以外の参加企業も多いうえに、両者の性質や考え方が大きく異なる。そのため「どちらかが認定団体を目指す」でも「2つの業界団体が統合する」でもなく、「新たな組織を設立」して認定自主規制団体「日本仮想通貨交換業協会」を発足させることになったのだ。

仮想通貨における業界団体の未来は?

「日本仮想通貨交換業協会」は、改正資金決済法のもと、仮想通貨事業の適切な運営ルールや会員規則を定めていく。また、業界に関心のある企業や業界動向を問い合わせる窓口としての役割にも期待できるだろう。

ただし、既存の業者団体が役割を終えたかというと、そうではない。JCBAは税制や会計処理の在り方などを研究する組織として、JBAは最新の技術を伝えるだけでなく、新団体に知見を提供する組織として、制度・技術の面でサポートしていくと考えられる。場合によっては、「日本仮想通貨交換業協会」に合流することもあるかもしれない。

仮想通貨は、技術的にも制度的にも、さらなる研究と整備が必要な対象。さまざまな知見を取り入れ、各方面の件識者の支援を得ながら、業界の発展を考えていくことが必要だ。

著者プロフィール

齋藤 亮

齋藤 亮

SBIバーチャル・カレンシーズ 代表取締役副社長

2010年SBIホールディングス入社。SBIグループにて、主に経営企画・事業開発に従事。
2016年SBIバーチャル・カレンシーズ株式会社 代表取締役に就任、日本初の仮想通貨交換業者として登録を果たす。
2017年より仮想通貨事業者協会(JCBA)理事。