静岡新聞デジタルのWeb会員限定記事「『まるで東京の満員電車?』…東海道線が6→4両編成に『減車』 なぜ車両は減ったのか JR東海に聞いた」がX(Twitter)で話題になった。掲載を通知するポストは2026年5月時点で42万件以上の表示、1,000件以上の「いいね」、600件以上のリポスト、30件以上のコメントが付いている。静岡新聞デジタルの会員数は2025年3月時点で約20万人だが、表示数は会員数を大きく上回っている。この1年間で会員数は増加しているはずだが、X(Twitter)のポストだけで反応しているユーザーも多いと思われる。

  • <!-- Original start --></picture></span>静岡地区は315系の導入で混雑が増した!?<!-- Original end -->

    静岡地区は315系の導入で混雑が増した!?

記事の内容を要約すると、2026年3月のダイヤ改正で静岡地区の東海道本線を走る一部の普通列車が6両編成から4両編成に減車となったため、東京の満員電車並みに混雑しており、「SNSでも混雑しているという声が後を絶たない」という。記者が実際に確認したところ、東京の山手線並みではなかったものの、4両編成の列車は6両編成の列車と比べて「幾分かの窮屈さ」があったという。JR東海は「適切に設定した」と説明するが、記者の考察として「利用者の減少」と「315系の導入」、SNSでは「新幹線など有料列車への誘導」がささやかれているようだ。ただし、JR東海は「有料列車への誘導」に関して明確に否定している。

減車による混雑率の上昇はたびたび話題になる。最近だと、ハピラインふくい(北陸新幹線の並行在来線を引き継いだ福井県の第三セクター鉄道)の開業後、JR北陸本線時代の4両編成から2両編成に減車したことで混雑した事例があった。こちらは深刻で、乗れなかった人もいたという。臨時に4両編成に戻しているというが、そもそも車両数が足りない。他にも減車した事例として、東武アーバンパークライン(野田線)で従来より1両減らした新型車両の投入と既存車両のリニューアルを進めており、混雑が懸念されている。

実質的に減車した事例として、東急東横線にQシート(有料座席指定サービス)を2両組み込んだところ、10両編成のうち普通車が2両減り、8両となった。後に東急電鉄はQシートを1両のみに減らしたが、これは普通車の混雑によるものか、それともQシートの需要が小さかったからか、現時点で明らかにしていない。東急大井町線のQシートは急行用7両編成のうち1両をQシート化したが、もともと各駅停車が5両編成だったところに急行用の7両編成を設定した後だから、2両増のうち1両をQシート化したとも考えられる。中央線快速に組み込んだ2階建てグリーン車も、既存の10両編成に2両追加した12両編成となっており、普通車は減車していなかった。サービス向上を図りつつ、減車は回避したいという考え方だろう。

静岡地区に話を戻す。国土交通省が公開している「鉄道関係統計データ」のうち、「混雑率データ」の最新版「令和5(2023)年度」を見ると、混雑率はJR東海の「東静岡→静岡(7:33~8:29)」間で75%、「安倍川→静岡(7:31~8:30)」間で88%だった。

着席制の「ホームライナー」を含んでいるから低めの数値になるとはいえ、100%超えの首都圏鉄道ユーザーから見ると羨ましい数字に思える。もっとも、6両編成で75%だった混雑率が、4両編成では112%に上がるから、「東京並みの混雑」と感じる利用者も出てきそうだ。

通勤電車の定員は、座席だけでなく吊り手や手すりにつかまる人も含むため、混雑率の増加は立客の増加につながる。100%を超えると吊り手や手すりをつかめない人も出る。ただし、混雑率は車内の様子で決めるのではなく、一定の区間と時間に運行する車両の定員(供給)に対する乗客数(需要)で決まる。つまり平均値で、乗車位置による混雑の偏りは考慮されない。

静岡新聞デジタルの記事では、313系6両編成から315系4両編成に変更となった列車を観察していたが、実際の減車傾向はどうか。今回、非公式ながら静岡地区の車両運用を記録するサイト「東海道線静岡地区運用情報」を制作している「ハスラートラ」氏(@hustler_tora)の許諾を得た上で、2025年3月ダイヤ改正時点と2026年3月ダイヤ改正時点を比較した。

静岡駅を発着する普通列車のうち、下り(浜松方面)は7~8時台に2本の列車で2両減、1本の列車で1両減となっていた。一方で、富士駅7時20分発の静岡行(列車番号131M)は313系3両編成から315系4両編成に変更し、1両増車している。上りは2本の列車で2両減となったが、その他の列車は増減なし。全日にわたっての運行を見ると、下りは合計31両、上りは合計43両の減車となっている。上り・下りともに170本以上の列車があることを考えると、減車の影響が一定程度あるとみられる。ただし、増車した列車もあるから「適正化」したともいえる。

JR東海が公開したデータによると、在来線の利用者数はコロナ禍から回復したものの、コロナ禍前の9割にとどまり、減少傾向にあるという。では、今回のダイヤ改正での「適正化」は正しかったのか。JR東海の公式X(Twitter)アカウント「東海道線(熱海~豊橋)運行情報」(@JRCTokaidoS)で確認すると、3月のダイヤ改正後、混雑による10分以上の遅延は報告されていない。ただし、「ハスラートラ」氏によると、豊橋駅6時21分発・静岡駅8時15分着(列車番号924M)と、豊橋駅6時21分発・静岡駅8時42分着(列車番号「926M」)の上り列車2本は混雑が顕著で、各駅で乗降に時間がかかっているという。公式情報に反映されない10分以内の遅延が常態化している可能性がある。毎日であれば乗客のストレスは大きいだろう。

静岡新聞デジタルの記事でも言及された「東京並みの混雑」という視点で考えると、JR東海の経営的には「適正化」されたといえる。首都圏の通勤電車に関して、国土交通省が「180%以下にせよ」と指針を出したことで、車両や運行本数の増加、乗客の偏りを解消するための種別変更(一部区間の各駅停車化など)などの施策を続けてきた。コロナ禍で利用者が減少した影響もあり、近年の混雑率はおおむね150%以下(一部線区を除く)で推移している。ひょっとしたら、この状況は経営面で問題があるかもしれない。運賃を割り引いた通勤通学輸送のために多額の投資を行ったにもかかわらず、利用者が減り、収益が低下してしまった。

JR東海としては、そこまで首都圏の真似をしたくはないだろう。ただし、適切な混雑率に引き上げたい。それがダイヤ改正後の減車となって現れたが、豊橋発静岡行の上り2本(924M・926M)を中心に乗客の不評の的になってしまった。

静岡地区にはJR東海のライバルとなるような有力な並行鉄道路線がなく、乗客にとって「混んでいるから別の路線にしよう」という選択肢が少ない。そこが首都圏とは違うところだが、だからといって利用者への配慮が不要になるわけではない。

もっとも、JR東海にとって10分以下の遅延常態化が厄介だろう。遅延の影響がどこまで広がるか見えにくいから、遅延の芽は摘み取るべき。315系4両編成に313系2両編成を増結するなどの対応も検討の余地があるかもしれない。

  • <!-- Original start --></picture></span>静岡地区では、313系の元「セントラルライナー」車両をはじめ、クロスシートの車両も増えている<!-- Original end -->

    静岡地区では、313系の元「セントラルライナー」車両をはじめ、クロスシートの車両も増えている

記事では315系の導入で減車になったとあったが、実際には315系の導入に合わせて増車した列車もあるから、単純に315系が原因とは言いにくい。むしろクロスシートの313系をロングシートの315系に置き換えたほうが、混雑による不快感の緩和につながる。

JR東海から211系や213系、311系が引退したことで、将来的に313系が置換えの対象となっていくと思われる。そのときのために、JR東海は静岡地区における朝ラッシュ時の現状をしっかり把握していく必要があるだろう。

静岡県にとってJR東海の存在感は大きい。いや、三大都市圏以外のJR各社すべてに言えることだが、小さな遅延だけでなく、小さな不快感の積み重ねが県民感情につながる。その結果、大きなプロジェクトが進まないなど、思わぬ形で議論に影響する可能性もある。だからこそ、JR各社に地域を担う責任と、その責任を自覚した振る舞いが求められる。