時代劇専門チャンネルを運営する日本映画放送とKDDIによる本格時代劇ショートドラマ『まめで四角でやわらかで』の各プラットフォームでの総再生数が3,500万回を突破した。主演の柳葉敏郎は、江戸の庶民の生活の機微を描いた作品に強く魅力を感じながら演じたという。

そんな今作で初めて挑んだ短尺ゆえの“余白”の面白さ、京都の撮影所で改めて感じた「人が汗をかいて作る」現場の熱、さらにはメイド・イン・ジャパンコンテンツの魅力まで語ってくれた――。

  • 柳葉敏郎 撮影:蔦野裕

    柳葉敏郎 撮影:蔦野裕

あまりの短尺に「どこをチョイスしてやるんだろう?」

――ショートドラマというスタイルは初めてですよね。

「こんな作り方があるんだ」「こんな見せ方があるんだ」と思って、面白いなと感じました。初めての経験だったので、ある意味、挑戦でもあり、冒険でもあり、楽しみでもあり、不安でもありました。

――従来のテレビドラマや映画とは、やはり作り方も違うんですね。

原作自体も1編が短いお話なのですが、それよりもさらに半分ぐらいの内容なので、「どこをチョイスしてやるんだろう?」という楽しさがあります。俳優としては、どうしてもプラスアルファをしたいという思いもある。9割方カットされていますが(笑)、監督の構想にどれだけ忠実にいられるかという一方で、ちょっとその構想をいじってみたいな、という冒険もあるんです。

――様々な場所で作品が楽しまれることについては、どのように受け止めていますか?

感謝しかないですよ。働く場所が増えるんですから(笑)。それに、見てもらえる場所も増えるわけですから、こんなうれしいことはない。僕は芝居をする時は、共感だけではなく、批判もありきだと覚悟してやっていますから、(コメントが投稿されると)そこの楽しみもある。この歳になると、周りが何も言ってくれないことも多いですからね。

実年齢よりは若返ったつもりで

――今回のオファーを受けた決め手は何だったのでしょうか?

脚本が三谷(昌登)さんなんですよ。彼と一緒に仕事ができることもあり、二つ返事でやらせてもらうことになりました。以前、朝ドラ(『ブギウギ』)でご一緒した時(※三谷はキャストとして出演)、彼がいなかったら僕は挫けていたと思います。空気を変えてくれる存在で、僕の中ではとっても大きかった。その感謝があったので、これで少し恩返しできたかなという思いもあります。

――今回は江戸庶民の暮らしを描いた作品ですが、演じてみて魅力を感じた部分はどこでしょうか?

心の豊かさですよね。冬は火鉢しかなくて寒いですが、心が温かくなっていくコミュニケーションがあるというのが、今にない良さ。日本特有の風習であり、文化であり、生活が、きっとご覧いただいた皆さんのところに届いているのかなという気がします。

――全話の中で、特に印象に残るエピソードは何ですか?

毎日楽しかったからなぁ…。「お盆」は、小野(武彦)さんの持つおおらかさとか、優しさに、ひたすらおんぶに抱っこでした。僕がやることは一個もなかったですね。

――小野さんとの共演といえば、『踊る大捜査線』を思い出します。

小野さんとは他にも、親子だったり兄弟だったり、しょっちゅうご一緒してるんですよ。安心感があって、ちょっと遠い親戚みたいな存在ですね。

――キャリアを重ねて、最近は若い主人公を見守るような役が多い印象です。今回はご自身が中心にいる、チャキチャキの江戸っ子役で新鮮さもありましたか?

僕は秋田出身で、多少訛ったりするところがあるけど、実際の江戸弁も、実は訛ってるんですよ。「ひ」が「し」になっちゃうとか。そういうのを現場で、ちょっとだけ主張させてもらったりもしましたね。

――時代劇のカツラをかぶると、少し若返った気持ちにもなりますか?

まあ、実年齢よりは若返ったつもりでやらなきゃいけないと思って演じましたね。「チャキチャキ」と言われると、ちょっとクエスチョンマークが付くんですけど(笑)。気持ちで少しでもポップな人間を演じられればと思ってやっていました。

――反響はいかがですか?

(秋田の)近所の仲間たちが「見た見た」と言いながら、「あそこもうちょっとなあ」とか言ってくれるんですよ(笑)。こっちが「こんなことやったんだけど、カットされちゃったんだよ」と言うと、「それは見たかったな」とかね。

――秋田の暮らしには、東京にはない人情があるんですね。

もちろんです。それがなかったら、田舎暮らしはしていませんから。

――今回の作品にも通じるところがありますね。

江戸時代の人たちは、そんなに外に目を向けていなかったと思うんですよ。小さなエリアの中でどうやって生活していくか。そこにある人と人との心の触れ合いが、この作品の軸になっていると思います。

――YouTubeのコメントでは「“チャンバラがない時代劇”で、庶民の暮らしに焦点を当てている点が新鮮」という声もあります。

まさしくそこが魅力ですよね。約3分しかないので、その奥に「こんなことがあったのかな」「何か微笑ましいことがあったのかな」「ちょっとつらいことがあったのかな」と、余白を想像できる楽しさもあります。