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──主人公の3人のキャラクターは、どのようにして作られたのでしょうか。

まずは等身大のキャラクターであることを大前提に置いています。50歳にもなると、人生につまずいたり、迷ったりする経験を積んでいる人は多いと考えました。例えば、がむしゃらに頑張っていた若い頃があり、失敗をするとこっぴどく叱ってもらえたりしていたと思います。ところが、今は誰も怒ってくれない。昔は失敗も笑って許してもらえていたのが、許してもらえない。

そういう年代に入り、おそらく、若い頃のエンジンがすでにガス欠になって、この後どこを向いて生きていけばいいのか、分からなくなっている方もたくさんいるのではないかと思い、そういう大人たちが、もう一度前を向くために忘れ物を取りに行くというお話にしたかったんですね。ですから、あまり突飛なキャラクターにせず、どこにでもいそうな人であることをまず心がけました。

──ご自身を投影している部分もあるのでしょうか?

ありますね。3人とも、みんな、僕の“一部分”の要素が入っていると思います。実は僕も中学生時代、いわゆるオタク気質のようなところがあり、漫画を描いたりしていたのですが、それは絵が上手いキンポーに受け継がれていますし、チェンに関しては、いろいろなこじらせたこだわりを語っていますが、あれも中学生時代の僕が言っていたようなことです(笑)

中学生時代、僕は漫画家になりたかったんです。そこで手塚治虫先生の「漫画を描きたければ漫画ばかり読んでいちゃダメだ」という言葉に影響を受けて、さまざまな映画やドラマをレンタルビデオ店で借りて見ていました。例えば『傷だらけの天使』や『前略おふくろ様』のような70年代のドラマや、あと生意気にも、アンドレイ・タルコフスキーの映画なんかも見てたなぁ…(笑)

──タルコフスキー! 映像の詩人と呼ばれる、旧ソ連の映画監督ですね。映像美と裏腹に非常に難解かつ、世界的評価も高い監督で、今も語り継がれています。『惑星ソラリス』や『ストーカー』などが代表作ですよね。確かに一時期、タルコフスキー監督は、それを見ていれば映画通を着取れるという便利なアイコンにもなっていました。まさしく、中二病的なところがあったのですね(笑)。言われてみれば、チェンのこじらせとマッチします。

そうですね。ただ、80年代というのは、「オタク」という言葉は、蔑(さげす)む呼び方でした。今のようにポジティブに捉えられておらず、「オタク」と言われることがすごく僕も恐怖でした。なので、オタクには見られたくなかったし、スポーツもやっていたので、体育会系っぽい振りをしていた中学生でもありました。ただ、当時の80年代トレンドなどにはあまり興味を持てなかったですね。

──だから、劇中の80年代の話題がサブカルよりでもあるわけですね。

しかし、80年代の魅力はそのトレンドにもあり、例えば何かヒット作があれば日本全体を巻き込み、皆が共通の話題として取り上げられていた時代だったということも一方では挙げられると思っています。翻って昨今は、インターネットの普及の影響もあるのか、ユーザーの好みが細分化されており、全国的なヒットというものや、その世代共通の話題というものがあまり見られなくなった。80年代を舞台設定にするというのは、そういった共通の話題が皆にあったことから、皆一様に懐かしさを感じてもらえる良さはあると感じています。

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後半はミステリーの謎解きが全面的に

──主人公3人を演じているキャストの皆さんについてはどう思われますか?

まずユンは、ある種勝ち組の人生を歩んでいたのに、つまずいてしまったキャラクター。それを演じてくださる反町さんはまさにスター街道を歩んでこられましたが、年を重ねられてまたさらに素敵な俳優さんになられたと感じています。圧倒的スターであるからこそ、どう挫折した男を演じてくれるか、今後もとても期待を寄せています。

チェンは本当にこじらせたオタク。先ほども言った通り、チェンが言いそうなことは、僕が中学生時代に言ってきたようなことなんですけど(笑)、大森さんという存在そのものが、いい意味でサブカル臭のようなものを全身にまとってくださっている。それがうれしかったですね。

キンポーは、決断しなきゃいけないことを、周りに気を遣ってなかなかやれてこなかった人物。その優しさ、周囲への気遣い…そういったキャラを津田さんがさまざまに提案して演じてくださっていて、お三方とも、旬の俳優さんだけが持っているパワーのようなものもあり、それが作品に魅力を与えてくれていると感じています。

──ちなみに、古沢さんも中学時代のご友人と再会されたら、あのような会話になるのでしょうか?

実際には会えていないんですけれど、もし会えたら、そうなっているんじゃないかな、と想像しながら書いています。

──コメディや人間ドラマとしても楽しく、懐古的な楽しみもあり、さらには担任の先生の失踪、発見された人骨などのミステリーと、多くのエンタメが詰まっている作品です。

特に前半部分は、そういった人間ドラマ部分を大事に描いていき、後半からはミステリーの謎解きが全面的に出てくる予定です。皆さん、見られる方がさまざまな楽しみ方をしてくださるとうれしく思います。

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●古沢良太
2002年に『アシ!』で第2回テレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞し、脚本家デビュー。『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。映画『キサラギ』、『探偵はBARにいる』シリーズ、ドラマ『リーガルハイ』シリーズ、『デート~恋とはどんなものかしら~』、『コンフィデンスマンJP』シリーズ、NHK大河ドラマ『どうする家康』、劇場アニメ『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』などを手がけている。