現在放送中の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の脚本を書き終えた森下佳子氏にインタビュー。本作の執筆において苦労した点や、視聴者の反響に感じたこと、作品に込めた思いなどを聞いた。
“江戸のメディア王”蔦屋重三郎の波乱の生涯を描く物語
江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛けている。放送は全48回で、12月14日に最終回を迎える。
脚本を書き終えた森下氏は「出てくる人数が尋常じゃなくて、それが一番きつかったです。もうキャラのストックがないよって(笑)。そこは監督もそうですし、役者さんにもかなりお助けいただいて、識別可能な個性を持つ人間たちをなんとか並べられたかなという気持ちです」と本作ならではの苦労を吐露。また、「江戸城と市中と二本立てになっているので、スイッチングがうまいこと接続詞がつながらないといけない。そこは48回全部しんどかったです」と話した。
蔦重は出版業を通じて多くの人たちを世に送り出してきた一方、蔦重の周りで多くの人たちが亡くなり、つらいシーンも多く描かれた。
森下氏は「新之助さん(井之脇海)とうつせみ(小野花梨)ととよ坊、あと、冒頭の朝顔姉さん(愛希れいか)の死は私が作りましたが、他の人たちは史実で死んでいくので、どうしようもないというか。プロデューサーは関わっている人がすごく多い職種なので、亡くなる人の数は尋常じゃなかったと思います」と述べ、「歴史は無数の死の塊」だと表現する。
つらいシーンに反響「すごく鬼って言われました(笑)」
視聴者の声も見ているそうで、「すごく鬼って言われました(笑)。怒る先は私ではなく史実じゃないだろうかとずっと思っていました」と吐露しつつ、「叱咤激励が0になったら死にたくなると思うので。もちろん褒めてもらえたらうれしいですけど、見てもらえることがまずだと思うので、ありがたく聞いています。でも、心の中で『殺したのは私じゃない、史実よ』といつもツッコんでいました」と笑った。
新之助とうつせみの死については、幸せを願っていた視聴者から悲しみの声が多く上がったが、どのような思いで森下氏は2人を描いたのだろうか。
「打ちこわしにリーダーがいたのではないかという話が出ていて、リーダーを書きたいと思ったのが先で、すごくひどい言い方をすれば、愛されようが愛されまいが死ぬんです。うつせみととよ坊に関しては、飢饉や天災のひどさを言葉や死体の山で語るのでは私は胸にこないので、ちゃんとその人の人生を語った上で犠牲になってもらおうと。ひどいと言われることがすごく大事なんだろうなと思いました」
SNSではさまざまな考察も飛び交っている本作。森下氏は三浦庄司(原田泰造)の黒幕説に驚いたという。
「途中で三浦黒幕説、三浦スパイ説が出て、私は全く考えてなかったので、視聴者の方たちの考察にすごくびっくりして、逆に『うわ~この手あったんか!』って思いました(笑)。すごく真剣に見てくれていて、人って本当にいろんなことを考えて面白いなと思いました」
蔦重は「笑いを届けた人」 生き方にあっぱれ
そして、改めて蔦重の魅力について、「蔦重はいろんな功績を残した人。黄表紙もそうだし錦絵もそうだし、それを流通網を整えて江戸から地方に広めていったのも彼だと言われているし、そういう意味では笑いを届けた人だったんだろうなと思っていて、それがとても尊いことだったという感じがします」と言及。
「笑いは不謹慎な部分もあるので、どんどん笑うことがしんどい世の中になってきていると思うし、本当は笑っていても、笑っちゃいけないんじゃないかという場面が、生活しているといっぱいあるような気がするんです。そんな時代にあって、財産を召し上げられて仲間が死んでもふざけきった人ってあっぱれやなと。それはそれで1つの生き方だよなと思います」と、本作を通じて届けたい思いを語った。
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